表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/67

権力の力

 前の話にハチを周りに普通の犬だと話している記述を書き足しました。


 切りが良いので短めですが投稿しました。次の投稿はいつもより早めに出来そうです


 俺に殺人容疑をかけて探索者と冒険者活動を出来ないようにしてきたジッフル男爵家の執事? が接触して来た。

 しかも俺の返事を聞かずに馬車に乗れと言う。面倒くさい事になりそうだ。


 執事が馬車に乗れと言い、腕で示した先には一台の馬車が停めてあり、御者が扉を開いて傍で待機している。

 馬車は馬一頭牽きで牽いているのは四輪の付いた長方形の箱で扉に小さなガラス窓が付けらえている以外は装飾らしいものは無い。所謂、箱型馬車だな。


 探索者一人と犬一匹を迎えに寄越すには随分、豪華だな。何か思惑が有るのか? 単純に財力を誇っているのか、それとも俺を重要視しているとか?

 いや、そういう微気を悟れるのは同じ貴族やそれに関わる職種の人だけだろう、一般的な人には分からない。もっと他に思惑が有るんだろうか? 思いつかないな。

 ここで考えていても仕方がないか。とにかくジッフル男爵に会って何を考えてるか確かめるしかないか。


『ハチ、先に馬車に乗れ』


『? 了解でアリマス』


 念話でハチに乗るように指示してから俺も馬車に乗ろうと歩き始める。

 ハチが馬車に乗った時に御者と執事が顔を顰めたが気付かないふりをして俺も馬車に乗り込む。

 執事も馬車に乗り込んでから御者が馬車の扉を閉めて馬車馬に鞭を入れたのか動き始める。


 さて黙って馬車に乗っているのも暇だし何も知らずにジッフル男爵と会うのはあまり得策ではない。少し執事に聞いてみるか。


「執事さん、ジッフル男爵様は何で俺を呼んだんですか?」


「それは旦那様が話しします事、私からは何も申す事は出来ません」


「何も聞いてないんですか」


「私からは何も申す事はありません」


「そうですか」


 喋る気は無しか、何を考えてるかは分からないが俺と一緒の空間に居るのが嫌だと言う感じだな。

 俺を嫌っているのか、それとも冒険者、探索者自体を嫌っているのかな、粗暴が悪い奴が多いからな。


 それからは窓から見える景色を眺めながら無言で過ごしていく。

 

 窓から見える景色が町の雑踏から大きな屋敷が在る区画へと移っていき、そして周りの屋敷より一際大きな屋敷に辿り着く。


 御者が扉を開き執事が下りるように示して来るのでハチと一緒に馬車を下りる。近くでジッフル男爵家の屋敷を見るとアルナーレ男爵家の屋敷よりも立派な物だと分かる。


「お待ちしておりましたコウセル様、旦那様がお待ちです、お屋敷にどうぞ」


 馬車を下りると馬車に乗っていた執事とは別の執事が迎えてくれた。こちらは背筋などは曲がってはいないが老人だ。


「すみません、ハチを連れて、お屋敷に入ってもよろしいんですか」

 

 ハチを指さしながら老執事に聞く。屋敷にどうぞと案内してくれるがハチを連れて入っていいんだろうか。ハチは普通の犬と言いう事にしている、犬を勝手に居れたと言われて文句を付けられたらたまらない。


「ふむ、そうですね。メイドを一人付けます。庭の方でお世話させてもらっても宜しいですか」


 こっちの老執事は迎えに来た執事より丁寧な物腰だな。年季の違いかな。

 内心はどう思っているかは分からないがプロという感じかする。


「分かりました、それでお願いします」


「かしこまりました。―――手の空いてる者を探して、お世話するように指示しなさい」


「分かりました」


 提案を受けると老執事は案内して来た執事に指示を出す。指示を受けた執事は了承して頷いている。


「ハチ、言う事を聞いて大人しくしていろよ」

『出来るだけで良いから周りの人の様子を確かめといてくれ。変な事をされそうなら人目のない所で霊体かして隠れとけ」


「ワン」

『了解でアリマス』


 普通に喋って言い聞かせるのと同時に念話でハチに指示を出しておく。

 使用人を観察したところで意味は無いかもしれないが知らないよりかはマシだろ。予想外の情報を手に入れられるかも知れない。


「ハチの事をよろしくお願いします」


「はい」


 指示を受けた執事に改めて、お願いしてから老執事の案内で屋敷の中に入っていく。

 屋敷は大きいが内装はアルナーレ男爵家とそう変わらないように感じる。


 メイドに槍を預けてから、老執事に連れられて両開きの扉の前まで来ると老執事が扉をノックして来訪を告げる。


「旦那様、コウセル様をお連れしました」


『入れ』


 扉の向こうから許可が出ると老執事が扉を開いて中に入るようにと促して来るので部屋の中に入る。部屋にはソファーに座っている男性が一人だけいるだけで他には誰も居ない。

 男性は顔は整っている方だと思うが今は機嫌が悪いのか顔を歪めている、体格の方は平均的で金髪を頭の後ろで束ねている。


「遅い! 貴様、何時まで私を待たせるつもりだ」


 ・・・・俺に言っているのか? 何で怒られないといけないんだ。


「初めまして、ジッフル男爵様、コウセルと申します。それでジッフル男爵様、遅いと申されますが本日お屋敷に来るようにお伝え頂いたのは、つい先ほどで御迎えに来ていただいた方と一緒に来たのですが」


「だからなんだ、貴様の都合など知らん。どんな都合が有ろうと私を待たせるな」


 お~、今世で初めて会ったクソ貴族だ。とにかく自分は偉いと思ってる馬鹿だ、思った以上に面倒くさい事になりそうだぞ。

 

「まあ、遅れたのは許してやろう。だが、私が支援していた探索者達を殺したのは許す訳にはいかないな」


「何の事ですか」


「しらばくれるな、貴様は一組の探索者パーティを襲って殺している事は知っているぞ。そのパーティの生き残りがお前が殺したと証言している。

 誤魔化そうとして落ちていた遺品と称して装備品を冒険者ギルドに持って行ったらしいな、そこで自分が持って来た事を口止めしていたそうではないか」


 しまった。生き残りが何かして来ないか警戒して秘密にしてもらったが、今回は悪手になった。

 でも、調べたのは時間がかなり経った後の事だ、すぐに調べているならともかく今なら言い訳ができるはずだ。


「それは生き残りが居ると思い、何かして来るのを警戒したからです、冤罪です。

 それに売るならともかく俺は遺族が居るなら渡す様に冒険者ギルドに頼んだんですよ。

 利益目的なら金になりそうな物は全部売り払いますし、何らかの理由で殺意を抱いていたとすれば、そのまま放置しています。俺が何を目的で遺品を持ち帰った言うのですか」 


「知らんよ目的など、問題は貴様が殺人を犯したという事だけだ」


 ある意味、間違ってはいないか。殺しをやったか、やってないかを話してるんだから理由や目的は二の次だよな。冤罪だけど。


「何度も言いますが俺は探索者パーティを襲ってはいません。その訴えてる探索者の迷宮の出入りしている履歴なんかを調べれば分かるんじゃないですか」


「否定するのは貴様の勝手だが貴様がやった悪逆非道を見過ごすつもりはない、罪が確定するまで各ギルドに利用禁止の指示を出しているギルドを利用して金を稼ぐ事は出来んぞ。それにギルドを通さず働いていると分かれば罪人を雇っていると雇い主にも忠告をしなければな。

 それに検問所にも通さないように言っているシビアから離れる事も出来んぞ、外区は城壁ではなく柵でシビアを囲っているから逃げ出そうと思えば逃げられるだろうが、そうすれば貴様は逃亡罪で罪人になる。まともには生きていく事は出来んだろうな。

 だが、私にも慈悲は有る、罪を認めて私の元でその罪を償おうと言うなら、お前の殺人容疑を取り消してやっても良いぞ、犯罪者の烙印を押されるのは貴様も困るだろう」


 おい、自分が不利そうな事は調べないつもりか。まあ、あんまり突っ込んでも改竄されそうなんで突っ込まないけど。後、取り消すのは見過ごし事にならないのか矛盾してないか。


 ジッフル男爵は俺を手下にしたいから脅しに来ているだよな。金を稼げないようにしてシビアから出られないようにされたら生きていく事は厳しいだろう。最悪は物乞いみたいになる。


 まあ、荒は有る、特に探索者の迷宮での出入りの履歴を調べれば俺が殺しをしていない事が分かるかも知れない。アルナーレ男爵に改竄される前に調べて貰えれば何とかなるかも知れない、話に行ってみるか。

 

「困りませんよ、殺しなんてやってないんですから、その内、容疑も晴れます。もう失礼しても良いですか、これ以上は時間の無駄でしょう」


「まだ罪を認めないか。まあ良いだろう、さっさと出て行くと良い、だが罪を認めるのが遅くなれば遅くなるほど重くなるぞ。

 そうすれば私の元で罪を償う期間は長くなる、自分の為にも早く罪を認める事だな」


 どうせ、何だかんだ言って潰れるまで開放するつもりなんてないだろうな。俺を訴えた探索者も今頃、訴えているんだ、利用されてるいるだけだろうな、ご愁傷さま。


「失礼します」


 ジッフル男爵に挨拶をしてから部屋から出る為、扉の方を向く。

 扉は、すでに老執事が開けてくれていたので出ようと歩こうとすると止めのつもりなのかジッフル男爵が言葉を投げかけてくる。


「アルナーレ男爵に頼っても意味は無いぞ。あの家は我が家より格下だからな。お前は私に許しを請うしかない、さっさと諦めるんだな」


 返事は返さず部屋を出る。老執事も一緒に部屋を出て来て玄関までの案内をしてもらう。


 槍を返してもらい、ハチと合流してからジッフル男爵の屋敷を出る。帰りは馬車での送迎は無しか。

 アルナーレ男爵の屋敷に行くから別に良いんだが、馬車で冒険者ギルドに迎えに来たのって早く屋敷に来させる為だったんだろうか。

 贅沢な使い方をするもんだ。でも俺の為ではなく自分の為みたいだから、おかしくは無いのか?

 

 まあ、いいか。それよりもハチは何か良い情報を得る事は出来たかな。


『ハチ、俺と別れていた間、何かあったか』


『はいでアリマス。ご主人様と別れて直に男の人が出て来て、執事殿に話掛けていたでアリマス』


『男の人ね~、それで何を話してたんだ』


『ご主人様が屋敷に来たんだから解放してくれと言ってたでアリマス。

 執事殿はまだ罪を償っていないだろうから無理だと言って、逃げても良いが、その時は仲間殺しをしたと周りに言うと脅していたでアリマス』


 俺を訴えた探索者はジッフル男爵側か。説得するのは無理かな、仲間殺しを何とかバレないようにしたいみたいだがジッフル男爵にもうバレている。

 ジッフル男爵に喋らないようにするのは無理だろう、余程の権力で押さえつけない限りは。


 しかし、この探索者、仲間殺しをバレたくないのは分かるがここまで来れば、いっそ認めて償った方が良いと思うんだが。

 緊急事態なら酌量の余地が有るはずだ、そこまで重い罪にはならないと思うんだが、それにシビアで暮らし辛いなら他の町に移るという選択もある。

 何を考えていたかは分からないが、無かったことにするよりも何処かで妥協していた方が良いと思うんだがな。


 まあ、それよりも今の俺の状態って詰んでるのか。ジッフル男爵の言う通りだとするとアルナーレ男爵ではどうする事も出来ないみたいだし。訴えてる探索者は説得出来ない感じだ。


 思った以上に今の状態はマズイな。今の状態が改善しないならジッフル男爵は『事故』に遭う事になるが、それは出来るだけ無しにしたい。

 向こうが権力を使って無理やりなんで、いざという時は『事故』に遭う事を祈らない訳ではないが、毎回面倒事が起きる度に『事故』に遭う事を祈るようになるかも知れないからギリギリまで祈りたくはない。

 正攻法とは違うだろうが無理やりな手段以外で何とかしたい。


 今回は積極的にアルナーレ男爵に力を貸そうとも思ってるから、どうにかできる様に努力してみるか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ