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迷宮を逃げ回る・・・・


 転移装置でリディアの迷宮、二十一階層に跳ぶと顔見知りになった兵士達が居る。


 兵士達も俺が転移して来た事に気付き、一人が声を掛けて来る。


「よう、坊主。今日も一人で探索か」


「はい。今日からは下層部を探索しようと思ってますが」


 漸く探索が出来る。周りの事を気にしなかったら、もっと早く探索できたが自由に動けなくなるかも知れないからな。


 アルナーレ男爵家から庇護を受けられるように交渉した後からも色々とアルナーレ男爵と話をする事になった。

 アルナーレ男爵としたは折角結んだ縁を最大限利用しようと思たんだろう。すでにいくつか依頼を受けている。

 冒険者ギルドを通して無いのでギルドポイントが手に入らないのは痛いが、ご機嫌を取っておいても損はないだろう。

 それに、まだ借りてはいないが三十一階層まで潜り、その情報を転移装置でギルドカードに書き込む事が出来れば懐中時計を貸して貰う事が出来る。

 今までは地図を作りながら探索していたが今回は、先ず三十一階層を目指すつもりだ。

 時計が有ればペース配分をきちんとする事が出来るので早い目に借りておきたい。


「おいおい、大丈夫なのか、下層だとCランクのミノタウロスと遭遇する確率は跳ね上がるぞ」


「まだ、遭遇したことないんで何とも言えませんがダメそうなら逃げる事にします」


 心配してくれてるみたいだが問題は無い。

 俺としてはリディアの迷宮で一番金になる魔物だと言う認識でしかない。逆にどんどん来て欲しいぐらいだ。


「どうするかは坊主の勝手だが、死なないように気を付けろよ。今は変な魔物がうろついてるからな」


「変な魔物ですか。何かの進化体ですか」


 迷宮は進化した魔物が出て来る可能性は地上よりも高いが、こうも出て来る数が多いと魔王種や狩場が枯れたとかの影響以外の可能性、何かの誰かの作為的にやっている可能性が出て来るな。

 でも、地上の影響が迷宮に関係するのは探索者の数だけだ考え過ぎか。


「どうなんだろうな、俺達が見たのは小型のコボルトが階段を駆け下りて迷宮の奥に逃げ込む姿だけだ」


「逃げていたんですか?」


「ああ、コボルトが奥に駆け込んで行った後に、すぐに追いかけていたパーティが階段を下りて来たからな。そいつらもコボルトが逃げたから追いかけて来たって言ってたからな」


 確かに変だな、逃げる魔物は珍しい。前世では迷宮を詳しく調べたりしなかったから迷宮に関する知識は殆ど無いが、今まで遭遇した魔物は隠れて襲って来たり、連携して襲って来たりはしたが逃げた魔物はいなかった。

 

「逃げる魔物って、珍しいんですか? 俺は今まで遭遇した事は無いんですが」


「珍しいも何も俺達も初めて見たよ。他の迷宮が知らないがリディアの迷宮じゃ初めてじゃねーかな」


 なら進化した時に知性を得たタイプか? それなら状況判断をして逃げるのも分かるんだが。

 ん~、逃げたコボルトを直接見ないと、これ以上は分からないな。


「そうですか分かりました。変なのが居るという事を頭に入れて探索してきます。

 また変なコボルトについて分かった事があったら教えてもらっても良いですか」


「何か分かったらな」


「ありがとうございます。そうだ、お礼って訳じゃないですけど、これ皆さんで食べてください」


 休憩する時に食べるつもりで買っていたクッキーを兵士に渡す。


 砂糖は前世からそれなりに流通しているが安くはなく、そこそこ高い物で砂糖を使ったお菓子はそれなりに値段がする。

 少し高いので大人の男性が自分で買うとなると、他の酒や煙草の方が優先度が高くなるので、なかなか買わず食べる機会も少ない。だから誰かから貰えるとなると以外と喜ばれる。


「おお、わりーな、ありがたくいただくぜ」


 こうやって、えづ・・・友好な関係を築いておけば仕事中に手に入れた情報なんかを簡単に話してくれる。

 別に毎回、渡さなくても良い、何か面白い話をしてくれた時に渡せば、向こうが期待して面白そうな話があれば向こうから話してくれるだろう。


「いえ、それじゃあ行ってきます」


「おお、気を付けてな」


 兵士に見送られて迷宮に潜って行く。


 地図を作らずに探索して行くので一日で二十三階層まで潜る事ができた。

 下層部ではコボルト(小型)の姿が現さなくなり、コボルト(中型)とオークが中心に遭遇する事が多くなるがミノタウロスは、まだ遭遇していない。


 薄暗い通路を進み、そろそろ休憩して寝る為に迷宮の部屋を探す。体力的には、まだ大丈夫だが腹時計の感じでは、そろそろ夜になるだろう。

 まあ、迷宮を出た時に時間帯が合っている事は今まで一度もないんだが。

 通路を進んで行くと左右に分かれ道に遇う。どちらも進んでいない所なのでどちらでも良いんだが魔術を使い、どっち魔物が居るかを調べる。

 通路を徘徊しているより部屋で待ち構えている事の方が多いので魔物が居る方に進んで行けば部屋に行き付く事が多い。


 魔術を使い調べると左の通路の方から四つの反応が有るが、その内の一つからの反応に違和感を感じる。


 違和感を感じるから兵士が言っていた進化体だろうコボルトか?。

 確かめる為にも左の通路を進む。通路は部屋に続いていて、部屋の中が見える距離になると三匹のオークがコボルト(小型)? を部屋の中で襲っていてコボルト(小型)?が逃げ回っている。

 逃げ回っているコボルト? は普通のコボルトと大分、姿が違う。


 おかしい。地上なら種族の違う魔物は互いに敵または獲物として争い合うが、迷宮内の魔物は争い合う事は無いと聞いている。

 しかし目の前でオーク三匹がコボルト? を追い掛け回している、どうしてだ。

 

 リディアの迷宮は踏破されているのでダンジョンマスターが居ないのでシステム的な物がキチンと機能していないせいか、それとも進化した個体だからシステム的な物から外れているのだろうか。

 ・・・・今、考えても判断は付かない、とりあえずオークは始末してコボルト? の様子を確かめる為に捕縛してみるか。 

 

 方針を決めて行動に移そうと魔術を使おうとすると、コボルト? が突然、俺の方に視線を一瞬だけ向けてから今までにない速度を出し反対側の通路へ逃げて行く。

 その速度にオークも驚いたのか動くのを止めて呆然と見送っていいた。

 

 いや、ちょっと待て。魔術を使おうと少し魔力を動かしただけなのに、あのコボルト? は気付いて逃げ出したのか?


 あまりの事に俺も、その場で少し固まってしまうが、すぐに気を取り戻しコボルト? を追いかける為に部屋の中に入りコボルト? が逃げて行った通路を目指す。


 部屋に入った時点でオーク達が俺に気付くが、魔術で生み出した風の刃で三匹とも腹から横に真っ二つにして仕留めてコボルト? を追いかける為に放置する。

 コボルト? が逃げた通路に入り、魔術で大体の位置を確かめ駆けて距離を縮めて行くが予め魔法の鞄マジックバックから出したいた目印用の光核が尽きた時点で迷う可能性があるので追いかけるのを止めざるを得なくなった。


 オークを仕留めた部屋まで戻り、放置していたオークを解体していき魔核と脂を取り出しながら考える。

 逃げだしたコボルト? は普通でないのは確かだ変なところも多い。

 今まで遭遇した魔物は逃げたりは一度もしなかったし、魔術を使っても、それを察知するような反応は無かった。

 だけど、あのコボルト? は俺と他の探索者から逃げているし、多分だが俺の魔力を察知して逃げている。

 他にも他の魔物に襲われていたり、かなりの速さで逃げたりとおかしい所がある。進化した魔物だからと一言済ませるには違和感が大きい。

 予定を変更して、あのコボルト? を追いかけてみるか。後回しにしていると魔物か他の探索者に退治されかねない。

 とりあえず、あのコボルト? を探すのは休憩してひと眠りしてからだな。


 









 ひと眠りしてから探索を再開する。魔術で探索しながら地図を作り迷宮を進んで行く。

 魔術でコボルト? の反応を探しながら探すがコボルト? だろう反応が有ったり無かったりとまちまちだ。


 向こうも俺が魔術を使って捜している事に気付いていて、魔術の効果範囲ギリギリの距離を保っているみたいだな。

 あのコボルト? も俺に興味はあるみたいだが対面するのが怖いんだろうか、なかなか距離が縮まらない。

 魔術を使いながら何時までも追いかけても距離が縮まらない。何か作戦を立てないと駄目だな。


 一先ず二十三階層の地図を完成させる為、あのコボルトを追いかけるのを止めて二十二階層に続く階段に向かう。

 コボルト? が二十二階層に続く階段を上がった時に分かるように魔核を加工した魔導具を地面に埋めておく。そのまま置いておくと、ただの魔核と勘違いして探索者が持って行きかねないからな。

 加工はしているが魔核その物だ、時間が経てば分解されて消えるだろう、それでも二日、三日では分解される事は無いはずだ。


 それから二十四階層に下りる階段も探し同じように加工した魔核を埋めておく。

 移動している時も魔術で索敵をしながら進んでいるがコボルト? の反応はしているので階層を移動するつもりはなさそうだな。


 二十三階層の地図を完成させたが、さて、どうやってコボルト? を捕まえようか。何処かの行き止まりに追い込めば良いと思うんだが作戦はどうするかな。

 自分で作った地図を見ながら考える。走って追いかけ回すと何時かは追いついて捕まえられるだろうが迷う可能性もある。

 最悪、階段に埋めておいた魔核を目印にすることが出来るのでそれを目指して迷宮を進めば戻れるだろうが時間が掛かる。

 道を塞いで追い込むのも良いんだが他の探索者が混乱する可能性があるし、例のコボルト? の位置が分からないと、どの道を塞いだら良いかが分からない。

 どうするかな、他の探索者の事を考えると追い掛け回す事しか手段は無いんじゃないのか・・・・そういえば、今この階層に探索者は居るのか?

 さんざん例のコボルト? を追いかけていたり、地図を作るのに迷宮を歩き回ったが一度も他の探索者には遭っていない、迷宮は広い空間だから、偶々出会わなかったとも考えられるが、どうなんだろう。

 探索魔術だけだが自重せずに使い色々と調べてみるか。それで探索者が居ないなら道を塞いで例のコボルトを追い込む事にしよう。


 新たに方針を決めれば早速行動を開始する。本来なら特殊な塗料で陣を描きたいが今は無いので塗料無しで地面に陣を描く。

 準備が完了すれば陣に魔力を流しながら詠唱を開始する。段々と陣が輝いていき――


「●●●●●●~●●●・●●●!」


 そして詠唱を唱え終えると一段と陣が輝き、光が爆発する、それと同時に空間を震わす波が迷宮内を駆け巡る。

 今、使った魔術は二十三階層をスキョンして二十三階層の通路の把握と、そこに居る魔物と探索者などを調べる物だ。

 大分、簡略化しているが入って来る多くの情報に頭痛を感じる。もっと精密に調べようとすると頭痛だけでは済まなかっただろうな。

 

 調べ終えた結果は探索者は二十三階層には居らず、迷宮を歩き回ったせいか魔物も少なくなっていた。

 これなら道を塞いでも大丈夫だな、腹時計の感じだけだが、そろそろ夕方ぐらいになる浅めの、この階層に下りて来る探索者も多分いないだろう。

 

 例のコボルトを追い込む時に居る位置により、塞ぐ通路が変わって来るので幾つかの候補を決めて加工した魔核を埋めて行く。

 今回の探索で得た魔核の殆どを使ってしまったのが残念だが仕方がないか。再び、陣を描いた部屋に戻って来て、陣を少し改良してから、もう一度、陣を使い魔術を発動させて例のコボルト? の位置を確かめる。

 魔術で反応したコボルト? の位置は今までより距離が離れている、この魔術を使ったせいで警戒されたか。まあ、少し離れるぐらいでは作戦に支障は無い。

 改良させた陣の効果で埋め込んだ魔核を遠隔で発動させて幾つかの道を土壁を作り塞いでいく。

 後はコボルト? を追いかけて行くだけだ、魔術で作った壁は、もしかすれば破壊されるかもしれないので本来ある迷宮の行き止まりにコボルト? を追い込んでいく事にした。


 魔術で反応を確かめながらコボルト? を追いかけて行くとコボルト? は途中で進んでいた道を引き返したりしている、塞いだ土壁を破壊して進もうとしていないのでその内、追い込む事が出来る。

 そして一方的に距離が縮まりはじめ、追いつめていき、行き止まりまで辿り着くと地面を一心不乱に掘っているコボルト? が居る。

 見つかる前に掘った穴に隠れるなら分かるんだが見つかってからも穴を掘っているのは何故だ。まさか俺に気付いていないのか。


「おい!」


 違和感を調べる為に追い込んだんだ攻撃して仕留める訳にはいかないので、声を掛けて反応を確かめてみると―――


「キャイン! ち、違うでアリマス、小官はコボルトでないでアリマス!」


 驚いて飛び上がり喋って自分がコボルトである事を否定してくる。いや、違うアイツ喋った!

 喋る魔物は珍しいが居ない訳ではないがアイツは違う、よくよく相手を観察すると身体が肉体ではなく物質化した霊体だ、姿もコボルトみたいに凶暴そうではなく何処か可愛げがある。

 視ながら色々と調べながら考えると一つの可能性に行きつく、何で迷宮なんかに居るのか謎だが魔物以外には、これしか思いつかない。


「お前、ひょっとしてクー・シー(犬妖精)か?」


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