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アスリラの先は何処へ

二話連続投稿しています

こちらは一話目になります

 ラカムにエアウルフを預けた後、ついでに狩った青羽を生やしていないケイッコー鳥三羽を残して、買い取って貰い、普通に受けた依頼の報酬を貰ってから探索者ギルドを出る。


 疲れた、本当に疲れた。何で狩りをするだけで、こんなに疲れないといけないんだ。

 肉体的な物は、そんなに感じないが精神的な物が酷い。


 今日は、まだリーゼ達と会う約束をしているが時間はある、子犬の寝床亭で時間になるまで寝よう。


 疲れた身体を引きずりながら子犬の寝床亭に着き、中に入ると受付には昔は子犬の様に可愛らしかったであろう厳つい犬人族のオヤジが迎えてくれた。


「ただいま、大将」


「お帰り。コウセル、食堂に客が来ているぞ」 


「客? ですか」


 誰だ。まさか、もう何処かの貴族の人間が来たのか。


「ほら、前にコウセルを訪ねてきたバンダナの嬢ちゃんだ」


 アスリラか? まだ約束の時間には時間が有るがどうしたんだ。


 食堂を覗くとアスリラがテーブルに座っていて、食堂を覗いていた俺に気付いて手を振ってくる。

 手を振り返して食堂入っていく。


「お帰り、コウセル。青羽は取れた」


 疲れているんだろうかアスリタの顔色が悪いように思う。ケイッコー鳥の青羽を探すのに無茶でもしたんだろうか。

 と言うかアスリラ達もケイッコー鳥の青羽を探していたんだ、早く戻ってきたという事は自分達で青羽を手に入れたのか?

 俺個人としてはかなりマズイ。


「取れたよ。今朝、青羽を生やしてるケイッコー鳥を見つける事が出来たから」


「コウセル! それ本当!」


「お、おお」


 返事をしながら青羽を生やしたケイッコー鳥を魔法の鞄マジックバックから取り出す。


 アスリラの驚く反応を見るにケイッコー鳥の青羽を手に入れてないのか?

 それならアルナーレ男爵家と交渉する事が出来るんで助かる。


「うわー、本当に取って来たんだ」


「おい、何でそこで微妙な顔をするだよ」


 普通に喜ぶなら分かるが、何で釈然としない顔をする。


「えっ、それはリーゼが助かるから良いんだけど、私達もそれなりに森で青羽が生えたケイッコー鳥を探したんだよ。

 それなのにコウセルは三日で取って来るじゃん、心情的には微妙だよ私達の苦労は何だったの、てなるじゃん」


「運が良かった、て言うしかないかな」


 魔術を使って捜しましたとは言えないからな。それでも楽になるだけで確実とは言えないんだけど。


「後は経験の差かな、アスリラさん達は地上で狩りの経験ある?」


「無いけど、基本は迷宮より安全なんでしょ、簡単だと思ったんだけどな~」


「まあ迷宮よりは危険は少ないけど、それが狩りの成果と結びつくかは別だよ。

 多分、やり方が悪かったんじゃないの、迷宮と地上じゃあ、前提が違うから」


 迷宮に居るのは魔物のみで基本は向こうから襲って来たリ待ち構えている、けど地上の森などに棲んでいるケイッコー鳥などの動物は基本、外敵が来ると逃げる。

 地上での狩りを迷宮と同じように考えていると成果はなかなか出す事は出来ないだろう。


「そうだよね、魔物の狼なんかは襲って来るんだけど、偶に見つけた鳥とか兎はすぐに逃げるんだよね」


「やり方が悪そうだね、一回、猟師からでも狩りの仕方習ったら迷宮で探索出来るんだから、やり方さえ覚えればすぐに身に付くでしょ」


「そうかな。でも迷宮よりお金稼げそうにないから多分、習わないと思う」


「アスリラさんが良いなら、それでも良いけど。それでアスリラさんはどうして子犬の寝床亭に居るの俺に用事?」


 雑談もここまでで、そろそろ本題に入ろう。厄介事じゃないと良いんだけどな。


「あ~うん、そのね、今からアルナーレ家のお屋敷まで来てほしいの」


「今から? 明日とかはダメなの」


「うん。そのねケイッコー鳥の青羽を手に入れた事を今日中にアルナーレ男爵に報告しないとリーゼがお見合いする事になるの。

 お見合いすると婚約は確定になるから、どうしても今日じゃないといけないの」


 アルナーレ家の情報を集めたいと思ってたけど、今日アルナーレ家に行かないとリーゼの協力を得られないようになる。

 リーゼの協力を得られずにアルナーレ男爵と交渉するのは、かなり不利だ。情報を集めるのはあきらめるしかなさそうだ。


「それにね、アルナーレ男爵がケイッコー鳥の青羽を持っている人が居れば出来るだけ早く連れて来いって言われてるし」


 連れて来いか・・・・


「それはアルナーレ男爵が呼んでるって事?」


「えっ!うん、そうだと思うけど」


 はっきりしないが、ここで本人でもないアスリラに来ても仕方がないか。

 

 休もうと思ってたが、また動かないといけないな、面倒くさいな横になりてーよ。

 でも、ここで動かないと余計に面倒な事になるからな仕方がないか。


「分かった、今から行くよ」


「ごめんね、コウセル疲れてのに」


「構わないけど。それより俺、この格好で大丈夫、貴族に会う為の服なんて持ってないよ」


 今の俺の姿は森から帰って来て、すぐなので外套に皮鎧姿だ、別に部屋着用に楽な物も有るが貴族に会う為の小奇麗な服は持っていない。

 一応、リーゼに会う時に、どうすれば良いか聞こうと思うっていたんだが。この姿では駄目だと今から服を買いに行くことになる。


「そこは大丈夫、アルナーレ男爵も、そういう所は分かってるから」

 

「そう良かった。それじゃあ、行こうか」


 アスリラを連れだって子犬の寝床亭を出る時に、受付に居る大将に売らずに残していたケイッコー鳥を渡す。


「大将。これ、お土産、晩飯はこれを使って何か作ってくれ」


「おお、ケイッコー鳥か、悪いなコウセル。そうだなシチューにでもするかな」


「良いね。大将さん、私もシチュー食べに来ていい」


「金さえ払ってくれるなら別に良いぜ。コウセル、材料代として三食分の食事代はタダにしておく」


 俺個人は焼く方が好きなんだがシチューも、おいしそうだから、別に良いか。土産にケイッコー鳥を持って来た、だけだから三食分食事代をタダにしてくれるのはありがたい。


 アスリラは、なかなか捕る事が出来ないケイッコー鳥を食べられる機会だと大将に食べに来ても良いかと尋ねている。

 大将も来る客を拒むはずがなく許可している。


「ありがとう。それじゃあ、また出掛ける来るよ」


「おう、気を付けてな」


 大将に見送られて子犬の寝床亭をアスリラと一緒に出て、アルナーレ男爵の屋敷に向かう。


 アルナーレ男爵の屋敷に向かう途中、特に内区に入るとアスリラは、よく人に話しかけられる。まあ全員、男の探索者なんだけど。

 普通に声を掛ける人もいれば、俺との仲を勘繰ったりセクハラまがいの事を言って来たりと様々だが視線が必ず胸や足、腰などに必ず行く。

 スタイルの良い美人だから目が行くのは分からない訳じゃない。


「コウセル、人の身体をジッと見るのはどうかと思うよ」


「・・・・ごめん」


「はぁ、別に慣れてし良いけど。何て言うかコウセルの視線は劣情が薄いよね」


「アスリラさん、悪いのは俺だけど遠回しに馬鹿にしてる。俺も男よ」


 俺だって男だ性欲は有る。唯、それを制御する事が出来るだけだ。

 アスリラの言い方だと何か男を否定されているような感じがする。


「そんなんじゃないよ、コウセルは男の子なのに、あんまりそういう目で見ないでしょ。

 最初に会った時なんて全然、照れたりしないから男の人が好みなのかなって思ったりしたんだよ」


「そんな訳なだろ、気持ち悪い事、言わないでくれ。そういう人が居るのは否定しないけど、俺はそういうのじゃない」


「否定はしないんだ」


「単純な好き嫌いは個人の問題で、それを俺に押し付けて来ない限りは好きにすればいい、て思ってる」


 自分の好みで他人の好みを否定する気はないし、同性愛は俺が日本に居た時は一般的には受け入れられて貰っていなかったと思うが、外国を見れば普通に受け入れられている国もあるし、一種の文化になっている。

 日本でも古い時代だとおかしな事ではなかったという記述もある。まあ、俺は自分の好みと使う魔術の相性上、陰陽のバランスが崩れるので実用的な理由も有り好きにはなれない。


「良かった、良かった。お姉さんはコウセルが変な感性を持っているんじゃないかと心配だったよ」


「何でアスリラさんが心配するの」


「何となくだよ何となく。それに自慢じゃないけど男の人が私をそういう目で、よく見てるんだよ。見ない方が珍しい。

 見慣れているはずのヒールックだって隠してるつもりだけどチラチラ見てるし、酷い人だと顔じゃなくて胸を見ながら話す人もいるんだから。

 しかも話の内容がパーティ勧誘だけど、戦力としてじゃなくて、明らかに別の事を求めてるんだものリーゼ達とパーティを解散した後を考えると頭が痛いは」


 ヒールックって、クラン〈迷宮の狩人〉の〈犬狩り隊〉に居た探索者だよな。

 何やってんだか。男として見たいのは分からない訳じゃないけど、バレない様にもうちょっと上手く見る事は出来ないのか。


 あと勧誘してくる奴らは考えさせる条件を出せないのかよ。


「そうか、リーゼさんは騎士になる為に王都に行くから、いつかはパーティを抜けるだよな」


「そうだよ。と言うかコウセルがケイッコー鳥の青羽を取って来てくれなかったら今日、パーティを解散する事になってたし」


「じゃあ、リーゼさんの代わりに誰か一人を探せばいいんじゃないの。冒険者ギルドなら話せば人を斡旋してくれるかも知れませんよ」


「ああ、リーゼが王都に行く時にはネルも一緒に行く事になってるの、何するかは決めてないみたいだけどネルはリーゼの付き人をしたいらしいの」


 リーゼ達は三人パーティだから二人も抜けたらパーティが消滅確実か。次のパーティを作るなり、何処かのパーティに入るなりしないと探索者を辞めないといけなくなるのか。

 俺みたいにソロで探索するのはリスクの面を考えれば普通は、あり得ないからな。


「次のパーティの目途は有るの」


「無い。誘ってくれるところは、いっぱい有るんだけどね~」


 声を掛けてくるのは邪な事を考えてる奴ばかりなのか。


「前に迷宮で会ったクランの〈迷宮の狩人〉はどうなんですか。話に出て来たヒールックさんもいるんですし、悪くはないんじゃないですか」


「〈迷宮の狩人〉は魔物討伐専門のクランだから私みたいな|スカウト(斥候)は需要が少ないんだよね。

 それにスカウトをクラン内で育てるから空き出来る事は少ないと思うし」


「別にナイフだけでも十分、戦えるだろ魔力操作の訓練は続けてる?」


 リディアの迷宮に出て来る魔物はCランクまでで、亜人型の魔物だ急所を突けば十分倒す事が出来る。


「うん、迷宮に潜ったりしない限りは毎日やってるよ。成果が出て来てるのか身体強化をする時はスムーズにできる様になった気がする」


「訓練を続けて行けば、リディアの迷宮に出て来る魔物なら一人で倒せるようになると思うよ」


「流石にオークやミノタウロスは無理でしょ」


「頭をカチ割ったり、延髄をぶった切れば簡単に倒せるだろ」


「そうかも知れないけど簡単に出来る事じゃないでしょ、コウセルはできるの」


 俺はナイフじゃなくて槍なんだけどな。まあ魔物にもよるけどBランクの魔物でもナイフの一撃で倒す事は出来る。


「ミノタウロスは、まだ遭遇した事はないから分からないけど、オークなら遭遇した事があるし槍の一突きで大体、済ましてるよ」


 今は遭遇した魔物は魔術で倒しているのでに本当の事を話さないけど、今言った内容を行う事はできるし十分、驚く内容になるだろう。


「それホント。そんな事が出来るの〈迷宮の狩人〉の〈牛狩り隊〉の人ぐらいじゃないかな」


 後から詳しく〈迷宮の狩人〉について聞いたがパーティの種類が三つあり、コボルトをだけを狩る基本、新人のみのパーティ〈犬狩り隊〉

 オーク狩りが出来る技量の有ると判断されたクラン中堅〈豚狩り隊〉、最後にミノタウロスを狩る事が出来ると判断されたクラン精鋭パーティを〈牛狩り隊〉と呼ばれている。


 もう少しまともな名前にしないのかと思ったが分かりやすいからと言う理由で変更はされないそうだ。


 ちなみにヒールックは〈豚狩り隊〉のメンバーだが新人教育の為、一時〈犬狩り隊〉にいるらしい。


「〈牛狩り隊〉と言うのが、どれ位すごいのか分からないんだけど、とにかく魔力操作の訓練を続けて行けばリディアの迷宮で出て来る魔物には苦戦するような事にはならなくなるよ」


「それでも強くなってる実感が湧かないから〈迷宮の狩人〉に入るのは微妙だな。そうだ、コウセル、私とパーティ組まない」


 本気で言ってんのか? その気はないけど俺、男だぞ舐められてるのか。


「アスリラさん本気で言ってんの」


「アレ本気にした、冗談だよ、男の人と二人で組むのは抵抗があるからね。でも候補一つではあるね。

 コウセルはどうか分からないけど私としては悪い事なんて殆ど無いから」


 もし本当にアスリラと組むとしてメリットはどうだろう。

 アスリラとしては無くなった戦力を補充出来るから気持ちの問題を無視すれば損する所はない。

 なら俺のメリットは寂しさを紛らわせる事と雑用の手間が有る程度省ける事か、デメリットは俺の秘密をある程度教えないといけない事。

 殆ど負担にしかならないなから、本気で組む事を頼まれても組もうとは思えないな


 それにいつかはシビアどころかカロンスア王国から離れる予定だ、アスリラがシビアを離れたくないと考えるなら組む事は出来ない。


「俺は大抵の事は一人で出来ますから組むとしてもメリットは自分でする雑用が減るぐらいですね。

 それに、もし本当にパーティを組む事になるならシビアを離れる事になりますよ。俺の本職は冒険者ですし、いずれは旅に出るつもりですから」


「そう言えば、コウセルの本職は冒険者だったね。う~ん、リーゼもネルもシビアを離れるんだから、それも有りかも」


 何処まで本気で言ってるんだ、本気でお願いされてもパーティを組むつもりはないんだけどな。


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