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迷宮の状態は


 冒険者ギルドで指導役の探索者バラックを雇い、リディアの迷宮を探索する。


 リディアの迷宮の入口は自然の洞窟っぽく、周りの壁は凹凸の激しい土の壁が続いている。


 魔術の(照明球)を使い、自分の頭上、左右に一つずつと先頭を歩くバラックの頭上の左右と前に浮かべる。


「ランタン使うより明るいな。コウセル、魔力の残量なんかは大丈夫なのか?」


「大丈夫ですよ、まだまだ、余裕はありますし、(照明球)が消える頃には使った魔力分は回復します」


「そうか、分かった。それでこの魔術、何時まで持つんだ?」


「籠める魔力の量にもよりますが、今使っている(照明球)の魔術は一日は持ちますね」


 バラックは少し驚きと感心の表情をする。


「ランタンの魔核代と油代が浮いて便利だな。やっぱりお前は荷物持ちにぴったりだぞ。ハッハッハッ」


 まだ言うか、このおっさんは。からかっているだけなんだろうけど。


 迷宮の入口付近は広かったが進むにつれ狭くなっていき武器を振るうのを考えないといけない位、狭くなり、周りの壁が所々掘り返されている所が目立ち始める。


「バラックさん、壁が掘られてるところが有るけど、これは?」


「ここらでも、質は悪いが鉄鉱石が取れるんだよ、昔はこんな所は掘ったりはしてなかったんだが、今は浅い階層は鉱石も魔物も取り尽くしちまってるからな、どっかに金になる物はないかと掘り返してるんだよ」


 ここならすぐに地上に戻れるから、場所的には良い所なのかな? だがあまり質が悪いと製錬―――金属を取り出す過程で燃料費などの方が高くならないだろうか? 売れたとしても売値はかなり安そうだ。


 それより、この壁って元に戻るのか? 迷宮内だが、まだ異空間には入っていない、迷宮の力はここまで及んでいるんだろうか?


「この壁は元に戻るんですか?」


「ああ、元に戻るぞ。俺は見た事ないが掘り返された土が徐々に戻るらしい。それで何日かすればまた鉄鉱石が取れる訳だ」


 やっぱり、地球の常識が通用しない世界だなモータルセンヌは一度に取れる量を考えれば少ないが迷宮は無限に鉱石を取れる鉱山だ、まあ跡形もなく物が消滅する事もあるからバランスは取れてるのかな?


 それから、バラックの指導を受け、分からない所を質問しながら迷宮を進んで行き、幾つか目の広い空間に出る。


 この広い空間を部屋と呼ばれている。空間の広さにより小部屋、大部屋など様々な呼び方があり、大概は魔物が居るのだが通ってきた部屋には一匹たりとも魔物は居なかった。


 偶に索敵の魔術を放っているが、魔術の方でも魔物の反応は無い、どれだけの人数、探索者が迷宮に入ればこうなるんだか。


「コウセル、少しここで休憩するぞ」


「分かりました」


 バラックは見る限りは疲れてはいないみたいだな、俺も休むほど疲れてはいないが迷宮を進むペースは本職に任せたほうが良いか。


「あんまり、疲れてはいないみたいだな」


「そうですね、冒険者ギルドで依頼を受けて動いている時は、一日中、動きっぱなしですから、これくらいなら大丈夫です」


「それでも初めて迷宮に潜る奴は、暗闇から魔物が出てこないかとビビッて精神的に疲れるもんだがな。いくら魔術で明るくしてるからって、お前みたいに平気な奴はそんなにいないぞ」


 別に暗いところや狭い所は苦手ではないし、魔術で索敵してるから魔物がいないことは分かってるからなビビる事も無い。


「そうですか、自分じゃ分かりませんが」


「まあ、そんなもんか。けど、迷宮じゃ体力が有るうちに部屋で休むようにしておけよ、通路だと武器が振るい辛いし、攻撃を避ける事も難しいからな」


 武器を振るう探索者なら危ないだろうが、俺なら結界で動きを止めた後、魔術で殲滅する事が出来る。


 まあ、他の探索者に見られたときに、怪しまれる事を無視すれば通路で休むのもいいのかも知れない。今後のメリットとデメリットを考えて決める必要があるな。


「分かりました気を付けます」


 言われた事を守るかどうかは置いといて、返事はキチンとする。


 さて、ここで唯、休むのも勿体無いバラックから何か面白い話すや儲け話はないか聞いてみるか。


「バラックさん、何か面白い話はありませんか、儲け話でもいいですよ」


「なんだよ急に」


「俺、知り合いからシビアについて話は聞いた事ありますけど、今最近の話は知らないんで教えてほしいんですよ。それとシビアに来たのはお金を稼ぐ為なんで儲け話があれば知りたいじゃないですか」


「金を稼ぎたいなら迷宮に潜れ。今なら二十階層まではほとんど魔物はいないぞ」


 二十階層? リカーゲザの話だと上層は魔物が枯れていると聞いたが二十階層までが上層になるのか?


「二十階層までですか? 知り合いから上層は魔物が枯れていると聞きましたが、リディアの迷宮は二十階層までが上層になるんですか?」


「いいや、上層は十階層までで十一階層から二十階層までは中層だ」


 すると、何かが遭って中層の魔物が枯れたということか。


「数ヶ月前の事だがな、冒険者ギルドにタドーコア男爵家から依頼が出たんだよ。その時の当主が迷宮に探索に行ってから戻ってきていないから捜して来いってな」


「冒険者ギルドにですか?」


「そうだ、探索者ギルドは依頼とかは受け付けていないからな」


 手数料とか取ればそれなりに稼げそうだと思うんだがな、何でやらないんだ? また経費ケチってのかな。


「でだ、タドーコア男爵家の当主が潜ったのが十一階層からで二十一階層を目指しているっていう情報があったから、依頼を受けた探索者や冒険者は挙って十一階層から二十一階層の探索を始めた訳だ」


 十一階層から迷宮に潜ることが出来るということはリディアの迷宮にも転移装置があるのか。懐かしいな、前世で迷宮に潜ったのは転移装置を設置する為だったな。


 転移装置は旧文明の遺物で幾つかは有ったがモータルセンヌの魔法使い、魔術師では作り出すことは出来ていなかったからな、俺の知識を使って迷宮専用の転移装置を作ったんだよな。


 迷宮は浅い階層ならそんなに魔力は要らないし、深い階層でも異空間だからやり方次第で少ない魔力で転移させることが出来る。


 俺が居なくても作れるようにと設計図も残したから、それを元に作られた物がリディアの迷宮にも設置されているんだろう。少し転移装置を見るのが楽しみだ、どれだけの物か採点してやろう。  


「中層で依頼があったのはわかりましたが魔物が枯れるほど探索者が潜ったんですか? それに冒険者も迷宮に潜ったんですか?」


 依頼を受けた冒険者達がどれだけの能力があるかは知らないが探索者ではなく冒険者として活動していたんだ、慣れない迷宮に潜るというデメリットがあったはずだ。それらを無視してでも受ける価値のある依頼だったのだろうが、どんなメリットが有ったんだ。


「ああ、報酬が破格だったからな、俺もメンバー集めて受けようと思ったぐらいだ。実際、何人かの指導役は仲間集めて依頼を受けてたぜ」


「報酬はどれくらいだったんですか?」


「金貨五百枚だ」

 ―――――金貨五百枚!!


 すごい報酬額だな。冒険者ギルドの依頼ならAランクには届かないがBランク相当の依頼報酬額になるんじゃないだろうか?


「依頼のランクはどうだったんですか報酬額だけで言えばBランクになりますけど」


「Dランクだ、報酬額は考えられないほど破格だが、依頼内容はリディアの迷宮、中層での遺体回収だそれほど難しいことじゃないからな」


 しかし、この依頼本当に遺体を回収が目的なのか? 俺的には家族思いとか、そういう理由なら良いが下手をすれば家が傾くほどの事だ遺体回収の他に何か目的がありそうだな。この話をちょっと続けてみるか。


「タドーコア男爵家は身内に優しい家なんですね、当主とはいえ遺体回収にそれだけ大金を払うんですから」


「いやいや、それがちょっとおかしいんだよ。確かに依頼は遺体の回収だが他に条件が有ってな。遺品も必ず、すべて持って帰って来いていう内容でな持って帰ってこないと報酬は払わないて言うだ」


 本当の目的は当主が身に着けている何かだったのかな。それを教えないのは盗まれるのを警戒したからか。


 そういえば迷宮で発見した遺体から物を取るのって犯罪になるのかな、誰にも言わなければバレそうにないがどうなんだろう。


「バラックさん、話変わりますけど、普通は迷宮内で見つけた遺体に身に着けている物なんかはどうすんですか?」


「それは見つけた奴の物だ、取ったて罪にはならねーけど死んだ奴の知り合いに会うと面倒だから全部売ったほうがいいぞ、遺体は迷宮に喰われるからほっとけばいい」


 そうか取っても罪には問われないのか。けど個人的には取るのは嫌だな、出来れば遺族に遺品を渡してやりたいぐらいだがシビアでは難しそうだな、まあ、その時になれば考えてみるか。


 それにしても、迷宮に喰われるか。迷宮で長時間、死体を放置すると人、魔物に関わらず魔素に分解されて消えていく、それを昔から迷宮に喰われると言う。


 この事は一般的な知識ではなさそうだな、一般的な知識なら分解されると言われそうだから知らないんだろう、知っていても稼ぎには影響はないからな。


 それと死霊系の魔物が多い迷宮では魔素に分解されず死霊系の魔物になることがある。


「そうですか、その時は注意します。それで話をタドーコア男爵家の依頼に戻しますけど、依頼の本当の目的は何だったのか分かったんですか」


「いや、分かってねー。けど、予想じゃあ魔導具の回収じゃないかて言われてる。俺もそう思うしな」


 金貨五百枚を払ってまで回収したい魔導具か。どんな魔導具なんだ。


「どんな魔導具かは分かるんですか」


「ああ、予想だと魔物を呼び出して従魔にする魔導具だ」


 なんかすごいのが出てきたな。それが本当なら俺でもそんな魔導具は作る事は出来ないぞ、召喚だけなら何とかなるが従魔にするとなると難しいな。


「タドーコア男爵家の当主は必ず従魔を連れてる事で有名でな。まあ、連れてる従魔はゲテモノばかりだけどな」


「ゲテモノですか」


「そうだ、気色悪い色のスライムだったり、人面犬なんてのも居たらしいぜ」


 その魔導具はどういう基準で魔物を呼び出しているんだろうか、気になるな。


「迷宮で死んだタドーコアの当主はコボルトを連れていたな。俺の知る限りでは歴代当主全員、ゲテモノを従魔にしているんだがそれに不満を抱いてるんだが、何でかそれを誰もそれを認めようとはしないんだ」


「理由はわからないんですか」


「分からねえ、タドーコア男爵家の当主か次期当主しか知らないんじゃねーか」


 うーむ、気になるな、どうにかしてその魔導具、見ること出来ないかな、でも関わると面倒くさそうだからな機会が有れば狙ってみるくらいでいいか。


 それより、これだけ大きな依頼だったのにリカーゲザは知らなかったのか? 数ヶ月前だ噂でも流れてきそうだと思うんだがな。


「バラックさん、俺がシビアについて話を聞いたのは冒険者ギルドに務めてる人なんですが、そういう話は聞かなかったんですがどうしてでしょう」


「特別深い階層でもない限り、貴族が迷宮で死ぬのは計画が立てられないバカということで不名誉なことなんだよ、だから噂にならないようにしていたな、それに数ヶ月前の情報だぞ調べれば分かるだろうが調べようとしない限りはわからないだろ」


 貴族が迷宮で死ぬと不名誉になるなんていう風習があったのか知らなかったので驚きだ。それに噂にならないように根回しもしていたし情報としてはもう古いから調べようとしない限りは分からないか。


「それと冒険者ギルドは依頼者の守秘義務があるから情報を外に出すなと言われたら出さないようにするだろ、その知り合いは冒険者ギルドに勤めているからこそ、知ることができなかったんじゃないのか」


 守秘義務か、なんか当たり前のことを言われたな、秘密にしろと言われれば喋らないか。だけどある意味盲点だったな勤めているからこそ知ることができなかった情報か。今度、情報を集める様な事が有ればもっと多方向に集めてみるか。


 その後も色々とシビアについてバラックから話を聞くが、おいしい儲け話は無く、どこそこの飯屋美味いとか、どこの酒場の給仕が可愛い、花街のどこの店が良いとか、そんな話ばかりだった。


 娯楽の少ないこの世界では仕方がないのかもしれないがあまりためにはならなかった。


 休憩が終わり探索を再開するが誰にも遭わず、魔物とも遭遇せず掘り返された壁が有る通路を進み指導は終わった。


 上層探索用に魔力が宿らない普通の鉱石が有るかどうかの調べる魔術を作るべきだろうな、このままでは当分、金になるものが取れない日々が続くかもしれない。


 それに地図を書くのにも慣れないと上層は地図が売っているから何とかなるが中層からは地図が売っていないのできつくなるし、地図を見ることにも慣れないと迷ってしまう。


 魔術でゴリ押しではこの先、進むのは難しそうだな。

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