表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/67

相談と挨拶


「リディアの迷宮にですか」


「はい、ファーゴブリンで得た金で何か奢れってせびって来る奴が多いんで、噂が治まるまでリディアの迷宮に潜ろうと思うんです」


 〈鋼の牙〉と臨時パーティを組んで依頼をこなしてから一日休みを入れて、紺狼商店に来ている。


 Eランクになってから丁度、一ヶ月が経ちアンニーにも慣れて来たので、本格的に紺狼商店の専属として働くいくので、今後の方針を話し合っている。


 俺の希望としてはアンニーに居ると金を持っていることが周りに知られているので、アンニーを離れて、リディアの迷宮を中心に発展した町、シビアでの活動を希望している。


「そうですね。誰かとは聞いていませんが新人がベテランのおこぼれに預かって大金を得たという噂は聞きました」


 もう知っているのか、耳が早いというか、噂が広まっているのかどっちんだろう。まあ、商人としては頼りになるのかな。


 で、その噂は俺と〈鋼の牙〉の事みたいだな。ベリジゴブリン(仮)の正式名称がファーゴブリン、獣の毛が生えている進化したゴブリンの名称。今回は狼の毛が生えていたのでファーゴブリン(ウルフタイプ)と呼ばれているゴブリンの死体を冒険者ギルドが高値で買取った。


 そのことを特に隠していないのと、ファーゴブリンの買取を時間帯もあって多くの冒険者が知る事になる。


 その後、シューバの所に依頼とは関係ない素材などを買取って貰ってから、酒場で打つ上げしたんだが、その打ち上げの席で〈鋼の牙〉と知り合いの冒険者達が買取のことを知っているからファーゴブリンの話を聞いてくるので遭遇、戦闘の話をする事になる。


 全て本当の事を話しているが酒の席での話し何で半分以上、誇張された話だと思われ俺が危惧したような事にはならず、そこそこ強い新人程度の認識で済んだが、俺が大金を得た事を多くの人に知られたのが痛かった。


 休みの日に冒険者ギルドで訓練していると、俺が大金を得たと知っている何人かの冒険者が奢ってくれよ絡んでくる。鬱陶しい事この上ない。


 色々と言って誤魔化しているがそのうち恐喝紛いの事をしてくる冒険者が出てきてもおかしくない、全部とは言わないが冒険者はゴロツキのような奴が多いのは事実だ。


 一人二人ぐらいなら叩きのめしてもいいが、あまり何人も叩きのめせば俺の悪い噂が流れるかもしれない、悪事を働いていないのに悪いように言われるのは勘弁したい。


 噂が治まるまでこの手の連中は居なくならないだろう、関わりを持っていればそのうち俺は我慢できず殴り倒してしまうだろうから、アンニーを離れて活動したい事をシューバに言う。


 今は紺狼商店の専属だからシューバの意向に沿った働きをしないといけないから自分勝手には動けない。ここはちょっとめんどくさいな。


「分かりました。では宿場町シビアを拠点にしてリディアの迷宮で活動してください」


 あれ? 都合は良いんだがあっさりと許可が出たな。


「良いんですか? お願いしといてなんですが俺がアンニーに慣れさせたのには何か考えが有ったんじゃないですか?」


「アンニーというより街に慣れて頂きたかったんです。田舎から出て来た人は色々と分からず混乱しますし、そんな人を狙った盗人も居ますからね」


 まあ、納得できない訳ではない。田舎の村と都市では全然違うからな、浮かれたり、戸惑う人も居るだろう、それを狙った盗人も。


 でも、前世でモータルセンヌよりも文明が発達した地球での暮し、モータルセンヌでも昔とはいえプランマ王国の王都暮らしをしていたから浮かれる事はないし、盗人にも遭わなかった。


 慎重なように思うが昔のように田舎の人扱いされないよりはマシなのかな?


「魔導具をお渡しして専属として働いて貰おうと思っていましたから、慣れない内にお渡しして盗まれでもしたら大変ですからね」


「何の魔導具ですか?」


 一体なんだろう、恐らく野営なんかで役に立つ魔導具だと思うが自前の魔術で代用できるから、あんまり期待できないな。


「それは持ってきてからのお楽しみです、コウセルさんも喜んでくれる魔導具だと思っています。今、持ってくるので少しお待ちください」


 シューバは応接室から出ていく、何かすごい自信だな。


 少しの時間待つとシューバが一つの鞄を持って戻ってくる、背中に背負うタイプの物だ。


 これは驚いたシューバの俺への投資はかなりのものじゃないだろうか。分かる、鞄そのものが魔導具だ、そして冒険者が欲しがるものといえば。


「コウセルさんにお貸しするのはこちらの魔法の鞄(マジックバッグ)です」


 やっぱり!魔法の鞄(マジックバッグ)か、これはかなりありがたい。


 魔法の鞄(マジックバッグ)は籠める力により様々な効果を発揮するが、冒険者に持たせるなら空間拡張の力を籠めた物だろう。


 自分で作る事が出来るがそれなりの物を作ろうと思うと材料代がかなり掛かる、今は順調に稼いでいるとはいえ材料代には届かないだろう。


 それの完成品となれば値段もさらに高くなる、それを貸し出すだけとはいえ購入するとは、俺にかけられている期待は大きい。


 さて、後はこの魔法の鞄(マジックバッグ)がどれくらい物か、詳しい能力を聞かないとな。


「この魔法の鞄(マジックバッグ)は空間拡張と重量軽減が施されています、容量は大体二百リットルぐらいです、重量軽減は重さを五分の一まで軽減する事が出来ます」


 おお、重量軽減が施されているのはありがたい。重量軽減が無ければ下手をすれば常に身体強化を使って移動することになり、いざという時に魔力が無いというふうになるかもしれないからな。


「今までは普通に持てる分だけでしたが、これがあれば長く探索や狩りが出来、素材なんかを多く持ち帰ることが出来ますよ」


「おお! ありがとう御座います、大切に使わさせて頂きます」


 これがあれば堂々と素材なんかを持ち帰ることが出来る。


「ただ、お貸しするだけなんで壊したり盗まれたりしたら弁償して頂きますよ」


「はい、分かっています」


 その後は魔法の鞄(マジックバッグ)を受け取り、魔法の鞄(マジックバッグ)の貸し出しについての細かい条件、シビアでの迷宮産の素材の引渡し方法などを決め、明日、紺狼商店の店員と一緒にシビアに行く事が決り話し合いは終了した。


 応接室から出て紺狼商店の売り場へ戻ると、俺が応接室から出てきたことに気付いたホーエルが話しかけてくる。


「コウセル君、お父さんとの話は終わったの」


「はい」


「何の話をしてたの?」


 別に秘密という訳ではないし、ホーエルなら話しても言いか。


「これから紺狼商店専属の冒険者として働く事になりますから、今後の方針と俺の希望について話をしていました」


「コウセル君の希望?」


「はい、アンニーは今、魔物は居ませんし薬草なんかも多くの冒険者が採取の依頼なんかを受けて達成させずらいですから、アンニーを離れてリディアの迷宮に挑戦したいと話したんです。シューバさんから承諾をいただけてよかったです」


 まあ、どんな状態でも依頼を達成できるけどな。


「えっ、コウセル君、アンニーを離れるの」


 ホーエルにすごく寂しそうな顔をされた、犬耳・・・じゃなくて狼耳も若干たれている。


 う~ん、俺が悪いわけじゃないだが罪悪感がハンパない。後、ニーエルさん隠れて笑わないで下さい。


「まあ、一時的ですよ。アンニー周辺の状況が元に戻れば、俺も戻ってきますよ」


「そう、早く戻て来れるようになると良いね」


 これは早く戻って来てくれと言ってるのか、自惚れじゃないなら俺に好意を寄せてくれてるんだよな、俺こんな好意を寄せられる事したか。


 思いつく限りでは外に狩りに行った時に荷物にならない程度に花を持ってきてあげている事ぐらいなんだが、それでここまでなるか?


 前世でサティアに花を贈ったりしてたから花言葉はそこそこ知っているから、過激な花言葉の花は贈ってないと思うんだけど、花言葉って一つの花に対して複数あるからな。


 普通のいい意味の花言葉だったりしても他の花言葉の内容が過激になったり、怖い意味だったりするからな、過激な花言葉の花を知らずに送ったのかな。


 好意を向けられる理由を考えながらホーエルと話をして、シューバに止められるまで話続けた。


 ホーエルはアンニーを離れて会えない分を話そうとしていたみたいに思う。う~ん、俺はいずれアンニーを離れて旅をするから好意を寄せられても答える事は出来ないんだけどな。


 











 紺狼商店を後にしてから、冒険者ギルドに足を運ぶ。


 当分、アンニーを離れる為、その事をリカーゲザに伝えるためだ。リカーゲザには色々と世話になっているからな。


 忙しい時間帯が過ぎたせいか冒険者ギルドの中は職員以外は人が殆ど居ない。


 カウンターでリカーゲザを呼んでもらうように頼み依頼掲示板を見て暇を潰す。


 それから少ししてリカーゲザがカウンターに着たのか呼び出される。


「こんにちはコウセルさん、お呼びですか」


「こんにちはリカーゲザさん、今日はお伝えしたい事がありまして」


「何でしょう?」


 リカーゲザにアンニーを離れてシビアを拠点としてリディアの迷宮に挑戦することを伝える。


「なるほど、リディアの迷宮ですか。お金を持っているからと絡んでくる人から避けるなら良いかもしれませんね」


「分かりますか」


「ええ、昨日、訓練場で絡まれたのは知ってますから。―――迷宮を探索するには探索者ギルドに登録しないといけないのは知っていますか?」


「いえ、でも登録はあるだろうとは思ってました」


 前世でも登録は必要だったからな、そこは変わっていないだろうと思っていたが、やっぱりそうか。


「そうですか。―――詳しく知らないなら、少し探索者ギルドについて説明しましょう」


 探索者ギルドは迷宮と迷宮から持ち出された資源を管理する事が目的で、その他はあまり仕事が無い。


 登録をするときは冒険者ギルドと同じ様にするが一応、冒険者ギルドと提携しているから冒険者ギルドのギルドカードを提示すれば簡単な手続きで済む、細かい情報は冒険者ギルドにあるので問題が起これば資料を渡す事になっているらしい。


 ここで'一応'というのは探索者ギルドは国営だからだ、昔は冒険者ギルドも国営で一緒の組織だったらしいが、今は民営に変ってしまったから提携という形になっている。


 危なかった、普通に登録していれば俺の魔力量がバレる所だった、前世でプランマ王国は迷宮産の素材のみ管理していたから、そのままだと思ってたが変わっているんだな。


 奢って貰う為に絡んでくる奴を避ける為にシビアに行くのに、パーティの勧誘や抱え込みがあるかも知れないならシビアに行った意味が無くなるとこだった。


 その後も探索者ギルドの事やシビアについてリカーゲザが知っている事を教えて貰い、話は終わった。


 リカーゲザと話が終わり冒険者ギルドを出る。本当なら訓練をしていきたいんだが絡まれるのはめんどくさい、アンニーを離れるから叩きのめしても良い様に思うがわざわざ恨みを買う必要は無いからな。


 絡んでくる奴は理不尽に恨んでくるからな本当にめんどくさい。


 その日、一日は屋台通りで買い食いしながら、露店市で冷かしながら過ごしていく。


 掘り出し物を見つける事は出来なかったが、そこそこは面白かった。


 早めに宿に戻り、夕食を食って寝る。


 リディアの迷宮を探索するから迷宮内で過ごす事が多くなりベットで寝られるのも少なくなるだろう、この贅沢を今のうちに堪能しておこう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ