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進化しても所詮ゴブリン


 〈鋼の牙〉と臨時パーティを組み、森へ薬草探しの依頼を受ける事になった。


 今回は前の野外研修のように俺の魔術が使う事を制限されないから一番嵩張る水が少量なので早く目的地の森に着き森で薬草探しを始める。


 薬草探しがメインなので隊列は一列で、俺は先頭から二番目で進行方向を決めてからは薬草探しに精を出す。


 周りの警戒は〈鋼の牙〉に任せている。


 森の中を見ると〈鋼の牙〉のように、とりあえず薬草ぽい草を引っこ抜いて持ち帰ったのか掘り返されている所が幾つも見当たる。


 それでも分かっていないせいか所々に採られていない薬草が有るので適度に残し採取していく。


 その日は魔物と遭う事がなく終わった。


 依頼達成の薬草は確保したので〈鋼の牙〉は安心した顔をしている。


「本当に助かったよ、コウセル君が手伝って依頼を達成できる事が出来るよ」


 夜営の準備を終えて夕食を食べている時にケラソンが礼をしてきて、それを切っ掛けに〈鋼の牙〉全員から礼を言われた。


「別に構いませんよ、報酬も頂いてますし、何より貸し一つですから」


 ニヤリと笑って見せると全員、嫌そうな顔をする。


「お前その借りで何させるつもりだ?」


 特別嫌そうな顔をしているハフアードが聞いてくる。キレた事を根に持っていると思われているのかな?


「別に何も無いですよ、まあ、何か有った時は助けてください」


「デカイ厄介ごとは起すなよ、こんな小さな借りで命は掛けたくないからな」


 ハフアードはすごく嫌そうに言うが、何か有ったら命がけで助けてくれそうな言い方だな。


 何だこれ、ツンデレか?だけどハフアードは男でイケメンじゃない、しかもタダのおっさんだ、誰得になるんだろう、少なくとも俺は得してない。


「俺も厄介事を起したくないですから気を付けますよ」


 注意すると言って、この会話を終わらせる。男のツンデレを見ていても楽しくない。


 それと聞きたい事も有るので、話題を変えるついでに聞いてみるか。


「そういえば〈鋼の牙〉の皆さんは迷宮には潜らないんですか? 近場に魔物が居ないなら迷宮に潜ってみてもいいんじゃないですか?幸いリディアの迷宮が近くに在るじゃないですか」


「リディアの迷宮は今、近場の狩場と変らないような状態らしいぞ」


 俺が言った様に近場の狩場に魔物が居なくなったので迷宮で稼ごうと早い段階で迷宮に向かった冒険者達が居て、一時しのぎで力もないので浅い階層で魔物狩りや鉱石を掘っているらしい。


 そして段々と人数が増えて今では浅い階層は魔物もリディア鉱石などを掘りつくしてしまい地上の近場の狩場と大差ないような状態に成っていて、今行っても稼ぐ事は難しい状態だそうだ。


 深い階層に行けば魔物も鉱石も在るが、それなら狩場の奥地に行くのと変らないので深い階層に行く人はほとんど居ない。


 リディアの迷宮がそんな状態なので探索者として本格的に活動しない人は、リディアの迷宮に行く事はないらしい。


 迷宮探索の道具も揃え様と思えば金が多く掛かり、旅の装備で代用出来ないわけではないが効率が悪いのであまり勧められないらしい。


 シューバは俺を探索者として迷宮に潜らせようとしていたな。魔物が居ないなら深い階層に一気に潜れる理由になるから俺的には良かったが、何処もギランの悪い影響が出ているな。


 そういえばギランのせいで損ばかりしていたが役に立ったのは、これが初めてだな。ぶっ飛ばす機会がある時は加減をしてやるか・・・・・・・いや、加減せずに普通にぶっ飛ばそう迷惑の方が圧倒的に多いからな。











 夜が明けて二日目、森の奥地に行き魔物を探す事になって、森の奥地を目指す。


 魔生の森など魔物が住み着いている場所は奥地に行くほど魔素が濃くなる。普通は魔素が濃い場所ほどランクの高い魔物が住み着いているが、この森は奥地に行っても然程魔素の濃度が上がるわけでないのでEランクの魔物のゴブリンやレッドアイウルフの群れが大きくなるだけなので今のパーティの脅威にはならないと判断した。


 帰りもあるので、奥地に進む距離を決めて進む。


 魔素の濃度が高いせいなのか偶に魔力が宿っている薬草があるので採取する〈鋼の牙〉はあまり奥に進めないので渋い顔をするが価値を話すと納得してくれて、奥に進みたいから魔力の宿った薬草のみを取るようにお願いされた。


 森の奥地に進むと十匹のゴブリンの群れと、ゴブリンの血の臭いを嗅ぎ付けたのか、やって来たレッドアイウルフ五匹を狩り、魔核と毛皮を取るため解体し終わってから魔物の死体を埋めた所から離れて休憩する。


「今日は大猟だな」


「今まで稼ぎの上位になりますね」


「どうだ、コウセル、また一緒に依頼を受けないか」


 ハフアードとケラソンは今回の狩りの成果が良いので機嫌が良く話し合って、ファイドも今日の成果に機嫌が良く、また狩りに一緒に行こうと誘って来る。


「機会があれば良いですよ」


 どうなるかは分からないが機会があれば、また一緒に依頼を受けても良い、この森程度なら危険は少ないだろうし人数が多い方が稼ぎも良い。


「魔核とウルフの毛皮をギルドで買取って貰えば、それなりに額になるな」


「そうだ、買取につい!――――」


 魔物素材の買取に紺狼商店にして欲しいと話そうとした時に、張っていた結界魔術に反応があった。


 〈鋼の牙〉が怪訝な顔をして来るが、今は無視して魔術を放ち索敵すると六匹の魔物の反応がする、そのうちの一匹の魔力量が他より高い、単純に魔力量で考えればDランク。


 別に脅威ではないがこの森では現われる筈のないランクの魔物だ。


「おい、どうしたんだコウセル、何かあったのか?」


 俺の様子がおかしいのでファイドが、どうしたか聞いてくる。他のパーティメンバーは武器を持って警戒している。


 木々が邪魔で姿は見えないが、魔術で調べた反応からしてこっちに近づいてるはすだ。


「木の枝が折れる音がしたんです、何かが近づいて来てるかもしれません」


 実際、音はしていないが魔術で調べましたとは言えないからな。


「コウセル、どっちの方向だ」


「ゴブリンを解体した場所の方からです」


 ゴブリン達を解体した所に居るのは別に不思議じゃない、レッドアイウルフは血の臭いを嗅ぎ付けて来たんだ。


 だが、こっちに近づいて来るのは何でだ?


 臭いは(消臭)の魔術を使っているから無いはずだ、他にどうやって俺達を見つけ出す。


 人なら僅かな足跡で辿ってくることが出来るが・・・・・・もしかして、足跡を辿るほど知恵の付いた魔物なのか?


 もし、そうだとしたら変異種か超越種になる厄介だな。


 反応のあった魔物は、かなり近づいてきた。


 全員でゴブリン達を解体した方向を警戒していると足音が聞こえてくる。


 これでレッドアイウルフの可能性は消えた、レッドアイウルフなら出来るだけ音を殺して近づいてくるはずだが、足音を殺そうとしていない。


 残る可能性はゴブリンになる。


 警戒を続けていると木々の間から、冒険者から奪ったのか武具を装備したゴブリンが姿を現す。


「剣を持ってるからソードゴブリンか、さっさと片付けるか」


「ハフアードさん、待ってください。複数の足音がします、まだ魔物がいます」


 反応は六匹、まだ五匹居る、そのうち一匹は変異種か超越種だ。


 姿を見せたソードゴブリンが雄叫びを上げて突撃しようとしたが、別の魔物の雄叫びで突撃するのを止める。


 本能の赴くままのゴブリンを統率している、思った以上に厄介な魔物だな。


 他の残り五匹も姿を現す、五匹とも冒険者から奪っただろう武具を装備している。


 そして、狼の毛のようなものを生やしたゴブリンが一匹いる。恐らくコイツがリーダーだろう。


「ちょっとやばいか、数は少ないが六匹全部、武具を装備してやがる。そんで一匹変なのがが交じってるな」


 こっちは全員で五人、向こうは全部で六匹、数だけ見ればこっちが不利だ。


 リーダー格の狼の毛のようなものを生やしたゴブリン―――ベリジゴブリン(仮の名称)はそれを理解しているのか、こちらを見て嗤っている。

 ―――――格下になめられた・・・・ぶっ殺す!!


 相手は魔物だ、命を奪っても感謝されても恨まれる事はない。


「コウセル、どうする? 俺達は武具を装備しているゴブリンだと二匹も相手にするとデケェ怪我をするから、できるだけ避けてぇ。お前は二匹相手に出来るか」


「大丈夫です、俺が毛の生えたゴブリンと、もう一匹を相手にします」


「自棄になって言ってないだろうな」


「自棄になんて成ってませんよ、こんな時の為の魔導槍を持ってるんですから」


 実際は使わなくても大丈夫だが、槍に溜めた魔力を使いそれっぽく見せる。


「よし、分かった。ハフ、ウォス、ケラ、コウセルが二匹相手にしてる間に、1匹づつゴブリンをぶっ殺すぞ!」


「「「おお!」」」


 〈鋼の牙〉の掛声につられたのか、ゴブリン達も雄叫びを上げる。


 そしてベリジゴブリ(仮)が雄叫びを上げようと口を開けた瞬間、俺から突撃する。


 身体強化を使い、槍にも魔力を込めて、螺旋を描くように魔力で槍を覆うい、突撃には魔力放出で加速を加える。全力ではないが用いる技術を最大限に使い、貫通を目的とした一撃を放つ。


 ベリジゴブリン(仮)の前に居た、武装ゴブリンの鉄の胸当てを貫通して、武装ゴブリンを一突きで仕留めるが突撃の勢いは弛めないまま、ベリジゴブリン(仮)も槍で突き刺す。


 ベリジゴブリン(仮)を突き刺しても突撃の勢いは止まらず、木に阻まれてようやく止まった。


 螺旋を描く魔力により貫通力を強めるだけでない身体の内部を掻き回すので、しぶとい魔物でも一突きで殺す事が出来る。


 ゴブリン二匹の体から槍を引き抜く。一応、絶命しているか確認をする。ベリジゴブリン(仮)は何が起こったのか理解できていないのか嗤って死んでいる。


 何かスッキリしないが仕方が無いか。〈鋼の牙〉の援護に向かうか。


 ベリジゴブリン(仮)達は今回の最大の脅威だったが、一番、戦闘時間が短く、あっさりと戦闘は終えてしまった。


 戦闘が終わった後、〈鋼の牙〉に、あんなに強かったのかと少し引かれ、槍の御蔭だと強弁したが、それでもあまり納得してくれないので少し傷ついた。


 武装ゴブリンは全部、解体して魔核を取り出したが、ベリジゴブリン(仮)は冒険者ギルドに報告もしないといけないので解体せず死体をアンニーに持って帰らないと行けなくなった。


 ゴブリンから魔核を取り出し終わってから、鋳潰して再利用できる鉄の武器は臭いので水で洗い(消臭)の魔術を使う。


 ベリジゴブリン(仮)の死体や鉄製の武具があるので荷物が多くなり、これ以上、森で探索出来ないので探索を止めてアンニーに帰る事になった。


 アンニーへの帰り道〈鋼の牙〉は帰りの道中、かなり浮かれている。


 狩りの成果が多かったというのもあるが、何よりベリジゴブリン(仮)みたいな進化した魔物は珍しく強い魔物なので、魔物研究をする為に冒険者ギルドが死体を高値で買取ってくれるらしい。


 珍しく強いということは、倒した事が知られるとかなり目立つんじゃないかと心配したが、俺が危惧したような事にはならないみたいだ。


 というのも進化した魔物とはいえ、所詮ゴブリンなので強さは高が知れいるので遭遇した事が運が良いという意味で目立つらしいが、倒したからと言って強いということにはならないらしい。


 それとゴブリンは何処にでもいるし、進化した個体は他の魔物よりも出現率が大きいらしく、進化したゴブリンを狙う、ゴブリンハンターという連中もいるらしい。色んな冒険者がいるもんだと感心したが普通にランクを上げようとは思わないんだろうか。


 まあ、俺の危惧する事がないので良かったが、一応アンニーを離れて身を隠そうかな。シューバに相談してリディアの迷宮に行くかな。


 シューバも昔、リディア鉱石を採って来て欲しいとか、昔言っていたよな。


 今度、会うときに相談でもしてみるか。


 いつの間にかハフアードがツンデレになっていた、というかツンデレとはあんな物なのでしょう? ツンデレの定義が良く分からない。

 ツンデレの表現が間違っていない事を祈ります。

 後ツンデレは、もう死語なんでしょうかね?

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