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野外研修、一日目

タイトル(強かな獣人商人)の一部を改稿

コウセルのシューバとの取引の利点について明確に書いていなかったので追記しました。



 集合場所の部屋には三つの魔力を感じるから三人、人が居るだろう。さて俺と同じ新人冒険者か、それとも指導役のベテラン冒険者かどっちかな。


 三人だから新人冒険者だと思うが、指導役の冒険者なら少しマズイかも知れない。仕事とはいえ指導して貰うのに後から来るのは、あまり印象が良くないよな。


 部屋の扉をノックして来訪を報せる。


「はい、どうぞ」


 聞こえてきた声は女性みたいだな。一人は女性なのかな。


 返事を貰ったので扉を開けて中に入る。


 部屋の中に居たのは、女性が一人と男性が二人。三人とも俺より少し年上ぐらいかな。


 男性の一人は金髪で布鎧を中心に少し黒いので、多分鉄製の胸当てと篭手を装備して、武器は恐れく近くに立ててある大きな鉄の剣、分類すれば大剣になるだろう剣だろう。


 もう片方の男性は水色の髪を肩で切り揃えいて皮製の防具で固め、金属で補強した木のラウンドシールドと片手で使う事を想定した剣が装備だろう。


 最後に女性は緑の髪のポニーテールで布製の防具を中心に皮の胸当てで弓矢が武器みたいだな、もう少し皮製の防具で固めた方が良いように思うが今日初めて会ったばかりなので何も言わないでおく。


 ちなみに俺の装備は皮製の防具で固め、今は脱いでいるが外套を羽織っている、武器はザーインから貰った槍を改造して長さを変えられる魔術槍と太ももに三本投槍を付けている。その内、一本はノキ村に居た頃に作った魔道具だ。


「なんだ、指導役の冒険者じゃないのか緊張して損した」


「エフ、彼に失礼でしょ、先に挨拶しなさい!」


「そうだよ、ニスの言うとおりだよ、緊張してるのは分かるけど先に挨拶が先だろ」


「いやだってよ~」


 俺に挨拶せずに指導役の冒険者じゃない事に愚痴をこぼした金髪の男に残りの二人が説教を始める。


 別に構わないんだが、俺を無視して説教をしている事も失礼になるんじゃないだろうか。


 わざとらしく咳払いをして三人の注目を集める。金髪の男は説教のせいか疲れた顔をしているが、残りの二人は気まずそうな顔をしている。


「始めまして、名前はコウセルです」


 少し慌てながら説教をしていた二人が挨拶を返してくる。


「始めまして、私はニスリサ。よろしくねコウセル君」


「始めまして、僕はクーレッタ。よろしく」


 二スリサとクーレッタが挨拶を返して最後に金髪に男が胸を張りながら挨拶をしてくる。


「俺はエフカフ、パーティ、ギガンスラッシュのリーダーで、いずれ剛閃の名を継ぐ男だ、よろしくな」


 夢見る若者て感じだな、魔力量のランクはCぐらいだから剛閃の名を継ぐのは難しそうだな。


 エフカフはキチンと挨拶しない事を二人に、また説教されている。何時もこんな感じなんだろうか愉快なパーティだ。


「じゃあ、エフカフさんはギランのライバルなんですね」


 しかし、このままでは俺は指導役の冒険者が来るまで暇になるので話をする為に二代目剛閃を自称しているギランをネタにして説教を受けているエフカフに話しかける。


 エフカフはギランの名前が出ると、嫌悪感に顔を顰める。


「あんなの唯の魔力馬鹿だろ、剛閃の名は安くねえ」


「ごめんねコウセル君、エフはギランさんの事、嫌ってるの」


「ギランさんは、狩場を荒らすから僕もあまり好きじゃないですね」


 何だあいつ暴れまわって、周りに嫌われてるのか?


「ギランは嫌われてるんですか。黄色い声を掛けてる人も居ましたけど」


 見た事あるのは冒険者ギルドの職員の女性一人だけだけど。名前なんだったけ、忘れたけど、まあ良いか。


「彼を煽てて利用しようとする人やおこぼれに預かろうとする人は結構多いよ、でも、殆どがEランクの冒険者でDランクの冒険者の人たちや冒険者ギルドの幹部の人には評価が悪いて聞くよ」


 魔力量が多いから素質は有るのに残念な奴だ、その内、誰かに首輪を着けられる事になるだろうな。


「あんな奴の事より、他の話をしようぜ。コウセルだったよな、お前、一人みたいだけどパーティ決まってんのか? それともまだ決まってないのか」


 それから指導役の冒険者が来るまでエフカフ達と雑談や情報交換をしていると四つの固まって動いている魔力を感じた。


 どうやら指導役の冒険者が着たみたいだな。


 他の三人も今までとは違う大きく複数の足音が聞こえたみたいで、恐らく指導役の冒険者が来たと思ったのか話を止めて扉に注目する。


 足音が扉の前で止み、扉をノック無しで開けて、男の冒険者が四人入ってくる。


 四人ともそれぞれ違いは有るが、布鎧に僅かに魔力を帯びた金属、恐らくリディア鋼で作られた胸甲等を装備して、武器は全員、剣だ。


 第一印象は変なパーティだ。絶対バランス考えてないだろ。


「よし、全員揃っているみたいだな」


 先頭に立っていた男が俺達四人を見て声を出す。


「俺達はお前らを指導する事になったパーティ、鋼の牙だ。俺はリーダーのファイドだ、よろしくな」


 何というか粗野な人だな、別に見下している感じはしないが必要最低限の礼儀ができてない。


「一応、本人確認するぞ、パーティ、ギガンスラッシュ居るか」


「はい」


 リーダーのエフカフが代表して返事をしている。


「よし、三人いるみたいだな。次にコウセル」


「はい」


 呼ばれたので返事をすると鋼の牙、全員が俺を見る。何というか珍しい生き物を見たというような視線を感じる。


「あ~、貰った資料にも書いてあるがコウセル、お前、魔術が使えるらしいな」


「はい」


「旅や遠征するのには約に立つのはあるみたいだが、野外研修中は使うなよ。他の三人の為にならねーし、お前も一般的なのを学んどけ」


「分かりました」


 まあ、妥当な判断だよな、俺が一緒に居るのは野外研修の間だけだからな、俺が居ない事を想定して野外研修をやらないと意味が無いよな。


 俺も魔力を節約もしくは使えないときの為に一般的な方法も学んどいて損は無いだろう。


「それじゃあ、まず野外研修の内容を確認していくぞ」


 ファイドから野外研修の内容のお浚いから始まり、持って行く荷物を点検して、必要の無いもの有る物を分けていく。


 この時、俺の槍をファイドが魔導槍かと訊ねていたので、一応、肯定しておいた。


 魔法の武器の分類は三種類に分けられる。


 一つは俺が持つ魔術槍等の魔術武器、武器に魔術を施した物を言う。


 二つめはファイドが言っていた魔導武器、武器に何か素材を取り付けた物、俺の槍は石突きに水晶を取り付けられているので、ファイドは魔導槍と思ったんだろう。

 

 最後三つめは魔法武器、これは魔力が宿った素材を用いて武器を鍛えた時に力を宿した物をいう、だから魔鋼鉄で鍛えた武器に筋力が上がるなどの特殊な力が宿っていれば魔法武器と呼ばれるが、魔力が宿っているだけでは唯の武器という事になる。


 魔剣、聖剣等の魔~や聖~と呼ばれるものは三種類どれにも当て嵌まり、嵌まっていない。というのも明確な定義が無く、とにかく強力な武器をそう呼ぶようになっている。


 俺の槍は魔術武器でもあるし魔導武器でもあるので、どっちの呼び方をしても間違いじゃないから嘘は吐いていない。

 

 特殊な武器を持っていることをエフカフとクーレッタが羨ましそうな視線を感じるが無視して荷物の点検を済ましていく。


 エフカフ達も俺も足りないものは無かったが、エフカフ達は荷物が多すぎると言われ、俺は魔術で代用できるかもしれないが少なすぎるんじゃないかと注意を受けた。


 それでも一応、合格を貰い、野外研修に出発する。


 野外研修の詳しい内容は近くの魔生の森に入り魔物の捜索方法と魔物との戦い方、魔物の解体と処理の仕方、野営と見張りのやり方を教わってからギルドに戻り報告して終わりだ。


 アンニーの城壁の門を抜けて、外へ出る。アンニーの外は大きな街道と畑が広がり太陽に照らされている、いい天気だ狩り日和になるな。


 雑談を交わしながらも冒険者ギルドが指定した森へ歩いていく。


 時間にして鐘が三つ鳴るくらい、三時間ぐらいだろうか何事も無く目的地の森に辿り着く。


「よし、これから森の中に入るわけだが、二列になって森を進んでいくぞ。列の片方はお前達新人だけだ、ある程度時間が経ったら交代するように指示を出す、分かったな」


 隊列は固定しないのか。こういうのは役割を決めて隊列を固定するもんだと思っていたが違うのかな。


 まあ、多分、全員に経験させるためかな。〈鋼の牙〉なんか全員戦士だから交代しながらやっているんだろうな。


「この森にはゴブリンとウルフ位しかいねえけど、お前ら平原でゴブリンぐらいしか狩ったことないだろうから知らないと思うが、森だと平原以上に危ないから、移動している時は、よく注意しろよ。あと人を見つけたら油断するなよ盗賊の可能性も有るからな。薬草を見つけた場合は、採っても良いぞ、採った薬草は採った奴の物だいいな」


 雑談の時に聞いたが、Fランク時代に近場で魔物を狩るの当たり前みたいだな、まあ、そうじゃないと金属のインゴットの持ち運び等の仕事なんてできないか。


 冒険者ギルドのFランク(見習い)に対する措置が意味がないように思うが、クーレッタいわく、あくまで僅かでも身体強化を使えるようになる為に外に出て近場で魔物を狩るらしい。


 冒険者ギルドで依頼を受けていないと都市に入る時に入市税を取れれるしギルドポイントと依頼報酬を得られないしから、金を稼ごうとがんばる人は少ないらしい、そんなものを気にせずに稼げる人は簡単にEランクになれるのでさっさとEランクになるそうだ。

 

 エフカフ達と話し合って隊列の順番を決める、先頭と殿は特に神経を使うので隊列の二番三番目の真ん中にいる人と交代して行く事にした。


 〈鋼の牙〉と新人に分かれて隊列を作り、森の中へ入って行く。


 森の中を進んで行く、時折、人と魔物を識別できる魔術を放ち索敵するが、人は感知するが、あまり魔物は感知せず、俺達の進路上にはまったく居なかった。


 結局、その日は森を進み薬草採るだけで終わってしまった。


 日が落ちてきたので夜営の準備をして、各自用意した食事をしながら話し合いをする。


「新人共、明日の行動について話すぞ。明日は魔物を探すのを中心に歩くペースも上げるから薬草があっても採るのは禁止だ。まあ、そう言ってもコウセルとニスリサだったか、お前ら二人しか取ってなかったが明日は勘弁してくれ」


 俺と二スリサが採っていたのは雑草と判別がつきずらい薬草で、俺はノキ村に居た時もリムス神父に薬草の事を習っていたので見分けが付くが知らない人は、なかなか判別できない。


 ニスリサは薬草収集の依頼もこなせるようになる為に薬草について学んでいたらしいが、実際に薬草を見たのは初めてなんだろう間違えて雑草も採っていたので後で教えてやろう。


 パーティメンバーの男二人は剣の訓練ばかりしていたらしく薬草については簡単な物しか知らないそうだ。


 俺は手を上げて意見をある事を示すとファイドの許可を貰ってから発言する。


「魔物を探す為に歩く速度を上げるのは分かりますが、今回の野外研修は必ず魔物を見つけないといけないんですか?」


「殆ど必要ないとは思うんだが、魔物との戦い方を教える事も野外研修の課題なんだよ、だから今回、魔物と戦えず終わると野外研修は失敗もう一回、今のメンバーで森に入らないといけないんだ。偽り防止の為に魔物の体の一部、ゴブリンなら耳でウルフなら赤い目だ」


 確かにもう一度となればめんどくさいし、俺達の稼ぎにも影響が出てくる。


「分かりますた、ありがとう御座います。それで明日の魔物探しは森の奥に行くだけなんですか?」


「何か方法が有るなら、その方法を試してみるが、お前ら、なんか魔物を探す方法て有るか?」


 ファイドが俺とエフカフ達に何か方法はないかと尋ねてくるがエフカフ達は無いと否定するだけだ。


 俺は魔術で索敵できる。ここまで来る途中も秘かに使っていた。


 魔術を使えば、すぐに魔物を見つける事はできるが、どうやって魔術の事を秘密すかな。索敵できる魔術は覚えてない事にしているから公では使えないからな。


 単純に勘と言っておけば良いかな、変だとは思われるが魔術だと証明する事もできないだろう。


 まあ、却下されるかもしれないがその時は、その時か。


「あの~、いいですか」


「コウセル、何か方法でも有るのか。もしかして魔物を探せる魔術とかあるのか」


 全員期待に満ちた視線を向けてくる。この後、落胆するのが分かるから言いづらいな。


「俺、故郷の村に居たときから狩りをしていて獲物が居そうな所って勘ですけど意外と分かるんですよ。今日も途中で魔物がいそうだなて、思った方向が色々あったんです、だから明日は俺が進む進路を決めて良いですか?」


「ふざけんなよクソガキ! てめーが分かるなら俺達も分かるに決まってんだろうが!」


 俺が言い終わると〈鋼の牙〉のメンバー一人が怒り怒声を上げる。


 おお、呆れられるとは思っていたが、マジギレされるのは想定外だ、どうする。


「落ち着け、ハフ。どうすっかな」


 ファイドは〈鋼の牙〉のメンバーを宥めながら考え込み、エフカフ達は魔術で魔物が探せない事に残念がっている。


 怒っていたハフと呼ばれた男性が落ち着付いてから、ファイドが俺に確認を取ってくる。


「お前の勘はどれ位で当たるんだ?大体でいい教えてくれ」


「大体七、六割位でしょうか、勘を感じはじめてからは成果はともかく収獲ゼロだった事は無いですよ」


 〈鋼の牙〉は怪訝そうだが、エフカフ達は期待に満ちた目で再び俺を見ている。


 ファイドが暫く唸りながら考え、唸るのを止めて俺の目を見てきたので逸らさず見つめ返す。


「うし、分かった。明日の進行方向はコウセルお前が決めろ」


「おい、ファイド。このガキに任せるつもりか」


 ファイドは進行方向を俺に一任したが、先の怒っていた男が異議を唱えてくる。


「俺達が今日一日、進行方向を決めていたが魔物を見つける事が出来なかったんだ仕方が無いだろ、高確率で勘が当たる奴に任せたほうが良いだろ」


「そいつが嘘を言ってるかも知れないだろう」


「そうだとしても別に良いだろ。結局、方法は勘で俺達と変わらないし、ハフは画期的な方法が有るなら、その方法を取るぜ」


 この感じはあんまり信じて貰えてないな、まあ、信じろと言う方が難しいか。


 男は反論できなくなり渋々ながら俺が進行方向を決める事を認めた。


「それじゃ、コウセル、明日はお前が進行方向を決めるわけだから隊列の先頭は常にお前だ良いな」


「はい」


「基本、進行方向は任せるが森のかなり深い所に入りそうなら止めるからな、魔物が居そうでも俺達が止めた場合は従え、分かったな」


「分かりました」


「よし、それじゃ明日の事はこれで終わりだ」


 何とか、進行方向を決める事が出来るようになったな、未だに怒っていた男は不機嫌のままだが、魔物が見つかれば機嫌も直るかな?


 食事が終わり、後は寝るだけなんだが、見張りを立てないといけない。


 一人なら魔術で結界を張るから熟睡は出来ないが仮眠を朝まで取れるが、それを教える訳にはいかないので一定時間は寝ずに起きて見張りをしないといけない、めんどくさい事だ。


「ギランスラッシュは三人で順番を決めろ、コウセルはソロで動くんだろ、お前は寝ずに見張りしろ」


 ファイド、今、何と言った。眠らずに見張りをしろと言ったのか。


「あの~、ファイドさん?」


「仕方が無いだろお前はソロで動くんだ、今後の為の野外研修だぞ。明日は眠いかも知れないが頑張れ」


 寝ぼけていたら明日、碌に考えられないだろう。俺が勘で魔物を見つけられる事、ファイドも全然信じてないな。


 エフカフ達も同情的な視線を感じる。


 仕方がないか。朝まで眠く暇そうだ。

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