野外研修まで
すみません遅くなりました。
さて、冒険者ギルドで登録を済まし、晴れてFランク(見習い)冒険者になれた訳だが、Eランクに上がる為にFランクの依頼をさっさと五件こなさないといけないが何の依頼を受ければいいんだろう?
分からんから、分かる人に聞いてみるか。
「リカーゲザさん、早速何か依頼を受けようと思うんですが、何か良い依頼ってあります」
「そうですね、Fランクの依頼は登録された方の体力が有るかどうかの確認と鍛える事が目的ですから報酬の方は違いは殆ど有りません」
報酬の事じゃないんだが普通は、そう思うか。
「ですから、得意な事を言って頂ければ、それを活かせる依頼を上げさせて頂きますが、できれば全部バラバラの内容にしていただくと、冒険者ギルドとすればありがたいんです」
「それはどうしてですか?」
「そうですね、例えば金属製錬所のインゴットを運ぶ仕事だけなら筋力がある事が分かりますが体力が有るか分かれません、逆に手紙の配達だけなら走り続ける体力があるのが分かりますが筋力が有るか分かりません」
まあ、そうだな、筋力と体力じゃあ、全然違うからな。
「冒険者ギルドとしては筋力や体力があることも証明して欲しいんです」
「なら、Eランクの昇格試験の受験資格の条件を変えればいいんじゃないですか」
「一時期そうしていたらしいんですが、達成できなくて冒険者を辞めてしまう方が多かったので、今の条件に成ったそうです」
昔の条件を達成できないなら冒険者に成るのを諦めた方が良いように思うが俺も身体強化が使えないと達成するのに時間が掛かりそうだ。
身体強化が使えないと昔の条件は難しいか。俺のように最初から身体強化を使える人はごく僅かだろうし。
まあ、冒険者ギルドが納得しているなら良いか、別に俺には関係ないし。
さて、自分で選ぶのもめんどくさいし、俺がソロで活動しても大丈夫という事を証明する為にも依頼をリカーゲザに選んで貰うか。
「分かるました、ありがとう御座います。それで依頼なんですがリカーゲザさんに選んで貰っていいですか」
「それは構いませんがいいですか?」
「構いません、ソロで活動するんです能力が平均以上あるところを見せますよ」
リカーゲザは困った顔をしながら、魔導パソコンを操作して紙に俺に受けさせる依頼を書き出していく。
「能力を示してくれるのは嬉しいんですが、それでもパーティを組んでくれた方がありがたいんですが。―――それでは依頼の方ですが、まず一つめアンニー製錬所のインゴット運びです、この依頼書をアンニー製錬所の方に渡して指示に従ってください」
インゴットの持ち運びか、身体強化が使えないと出来なさそうなのを初っ端から振って来たな。期限は無いが当然、達成されるまで報酬も無しか。
「いきなり、しんどそうなのを振ってきますね」
「止めておきますか?」
「いえ、大丈夫です。それで他の依頼は何ですか」
「Fランクの方は依頼を一つしか受けられませんから、他は今の依頼を達成した後にお知らせします」
他の依頼の内容は明かさなか。まあ良いか、よっぽど特殊じゃない限り失敗しないだろう。
それからリカーゲザにアンニー製錬所の場所を聞き冒険者ギルドから出る。
冒険者ギルドから出ると太陽の位置を確認する。夕方と言うには早いが今から仕事をするには遅すぎる時間だな。
今日はアンニーを見回って、仕事は明日からにするか。
それから依頼をこなし五日間があっと言う間に過ぎていった。
俺がこなした依頼はアンニー製錬所のインゴットの持ち運び、手紙の配達、引越しの手伝い、食堂兼酒場の雑用、冒険者ギルドの素材解体の手伝い。
どれも一日で済ましたので五日間で終わったが、どの依頼も、それなりに苦労した。
まず、インゴットの持ち運びだが、インゴットに対して俺の体重が軽いせいか身体強化を使い持ち上げても、身体がふらつき持ち運びに苦労して、手紙の配達は都市内の地理がまだ分かっていないので、何度も道に迷い、人に道を聞きながら配達をした。
引越しの手伝いは、重い物を持ち運ぶのがメインでインゴットの持ち運びと同じだと思っていたが、狭い通路を通り、家具を設置していくので、家具を壁にぶつけて傷がつけないように、しないといけないので神経を使い疲れた。
食堂兼酒場の雑用、この依頼は一日仕事をすれば必ず報酬がもらえるが、達成しているどうかは店主が判断するので一切、手が抜けない。食料、酒樽の持ち運び、大量の薪割り、テーブルに突っ伏した酔っ払いを移動させるなど休憩無しで仕事をする嵌めになり、酒・汗臭い酔っ払いを移動させる時は(消臭)の魔術を使わないと臭いで悶絶していただろう。
そして最後に冒険者ギルド素材解体の手伝いなのだが、野犬や熊などをノキ村に居たときから解体していたので解体するのも、手伝うのも問題ないのだか、一体何処から俺が解体が出来ると分かったんだ。
リカーゲザは俺が解体を出来るとわかっていたみたいで、解体が出来る出来ないの確認も取らず、依頼を受けるか受けないかのみ聞いてきた。解体できる事を何故知っているかリカーゲザに聞いてみると、ギルドマスターにザーインから手紙が届いていたらしい。
ザーインが居た当時はサブマスターをやっていた人が、前ギルドマスターが引退するとギルドマスターに就任して今現在指揮を振るっている。
ザーインの手紙には俺の簡単なプロフィールが書いてあり、面倒を見てやって欲しいと書いてあったらしい。
過保護な気もするが命の危険が常に関わってくる仕事なので仕方が無いのかな、ギルドマスターに魔力量がバレたのは少し痛いが何かあれば味方になってくれみたいなので良しとする。パーティやクランを勧めて来なければ良いのだが。
リカーゲザも昔、ザーインに命を助けられた事があり―――ザーイン本人は助けた事を知らないらしい―――それを知っているギルドマスターがリカーゲザに教えたそうだ本人ではないが、恩返しで困っている事が有れば力になってくれると約束してくれた。
そして冒険者ギルドで素材解体の手伝いの依頼を達成して、ようやく野外研修を受けられるようになった。
野外研修は引率の四人のDランクパーティと三人新人パーティ、そして俺の合計八人で一泊二日で行なわれる。
最後の依頼を終えてから2日ほど日が空くので野外研修の準備と休日にする事にした。
しかし、野外研修の準備と言っても俺の場合は大半は魔術で道具の代用ができ、ノキ村からアンニーまで徒歩できたので、その時の道具を使えばいいので食糧と水を用意するだけで終わってしまったので冒険者ギルドで槍の訓練に精を出し、休日も軽く訓練してから野外研修の日を迎える。
早朝、日が出始め、その日、最初の鐘――-一の鐘が響く頃、俺は冒険者ギルドの前で他の冒険者達にもみくちゃにされていた。
一の鐘が鳴ると同時に冒険者ギルドの営業が開始され、朝一番で依頼を受けようとする冒険者で冒険者ギルド前は冒険者で溢れかえっていたせいだ。
俺は何時も三の鐘が鳴る頃に何時も冒険者ギルドを訪れていた為、ここまで酷い事になっている事を知らなかった。
二の鐘が鳴るまでに冒険者ギルドの一部屋に集合なので、指導官役の冒険者達より早く着いておくために冒険者ギルドが営業を開始と同時に集合場所の一部屋に行っておこうと思っていたが少し間違えたかもしれない。
もみくちゃにされながらも、カウンターで手続きを済まし集合場所の部屋で一息つく。待っている間、持って行く道具の確認をすると暇になり仮眠でもしようかな思ったところで部屋の扉からノックが聞こえる。
「はい」
指導役の冒険者か俺と同じ指導を受ける新人冒険者かな?
「失礼します」
しかし、扉から部屋に入ってきたのはリカーゲザだった。
「おはよう御座います、コウセルさん」
「おはよう御座います、リカーゲザさん」
椅子から立ちあいさつを交わす。
こんな朝早くからどうしたんだろうか。この部屋に訪れるという事は指導役の冒険者か新人冒険者、後は俺の誰かに用事が有るんだろうが、今は俺しか部屋に居ない。
「コウセルさん、朝早くから申し訳ないんですが、ギルドマスターがお呼びです、ギルドマスターの執務室までお越し頂けませんか」
「別に構いませんが、俺、何かしましたか」
「いえ、コウセルさんが何かしたというわけではありません。コウセルさんの父親のザーインさんからの手紙をギルドマスターが貰っているのは話しましたよね」
「はい」
「面倒を見てやって欲しいと書いて有ったので、一度、直接会って話がしたいようです」
俺がどんな奴か見てみたいという事か。暇だし面会してみるか、断ると色々マズそうだし。
「話をするのは良いんですが、今日から野外研修があるから長い時間は止めて下さいよ」
「ギルドマスターも、それは知っていますので大丈夫でしょう」
確約してくれないところに少し不安を感じる。
リカーゲザに案内されて三階に在る、ギルドマスターの部屋に案内される。
リカーゲザが扉をノックして来訪を報せる。
「リカーゲザです、コウセルさんをお連れしました」
「入れ」
中から聞こえてきた声は渋く低い声だ。何というか重みがある。
リカーゲザが扉を開けてくれた中に入るように促してくる。
「失礼します」
促されるままギルドマスターの執務室に入る。
執務室の中には執務机に座り、書類仕事をしている老人が居る。
髪は白くなり、顔も皺だらけなんだが、服の上からでも分かる鍛えられた肉体と恐ろしく鋭い目つき、子供が見たら泣き出すんじゃないだろうかと思う。
鋭い視線はザーインで慣れているが、迫力は此方が上だな体格もあまり変らない気がする。今持っているのがペンなのが、かなり違和感を感じる。
剣を持ち、魔物と戦っている方が似やっていると思う。
「呼び立ててすまないが、座って待っててくれ、もう少しで仕事にキリが付く」
勧められるままにソファーに座る。リカーゲザは他に仕事が有るからと執務室から出て行き仕事に戻っていき、一人で待つ事になる。
普通なら何か飲み物でも出すんじゃないかなと思いながら、唯、座って待つて居ると書類仕事に切りが付いたのかギルドマスターが机から立ち上がり、近づいてくる。
「待たせて済まんな、ワシがアンニー冒険者ギルドのギルドマスターをしているノナスだ、よろしく」
「コウセルと言います。此方こそ、よろしくお願いします」
ノナスが握手の為に手を出してくるので、それに応えて手を握るとすごい力で握ってきたので身体強化を使い何とか対抗した。身体強化を使わないと握り潰されていたんじゃないかと疑いたくなるほどの力だった。
「うむ、身体強化を使わなければ対抗できないのは貧弱と言いたい所だが、その歳にしては鍛えている方だな。それに身体強化がかなり上手いな、そこまで素早く使える奴は早々居ないだろう」
「父に鍛えられましたから」
まったく会って早々、試されたちょっと酷いんじゃないか。
「そうか、ザーインは良い親をしているみたいだな。さて、直接、顔を合わせたいと思っただけで特に話したい事があるわけじゃないんだが、そうだなお前、何で冒険者になるんだ、ザーインの様に英雄にでもなりたいのか?」
話がないなら、いきなり呼び出さなくても良かったんじゃないのか。まあ、口に出さないけど。
「いいえ、俺の場合は冒険者に成るのはあくまで金を稼ぐ手段です。俺は世界中を見て周りたいんです、冒険者なら冒険者ギルドに行けば簡単に仕事が得られますし、ランクが高ければ信用もされます。旅をする上で色々と都合がよさそうなのでなるんです」
「うむ、旅か。Eランクになればすぐに旅に出るのか?」
「二年間ぐらいはアンニーを拠点にして経験を積もうと思っています」
シューバと契約もしてあるが、それは教えなくてもいいだろう。
「そうか。お前は職業を魔術師を書いたあったそうだが戦いで使える魔術はあるのか?」
探りを入れているのか、ただ好奇心なのか分からないがどちらでもいいか、(投石)は知られても問題ないからな、リカーゲザにも知らせている。
「(投石)という魔術だけですね、後は旅をするのに役に立つ魔術だけです」
「戦いとなれば頼りないのではないか」
「そうですね。けど、父から教わった槍も有りますから大丈夫ですよ」
「手紙にも書いてあったが、魔力を使わずにザーインに勝ったらしいな」
「一度だけですけど」
「ザーインに一度だけでも勝てれば十分だ。お前の槍の技量は、そこら辺の冒険者なら簡単に勝つことの出来る」
そうだろうな、技量だけなら前世のプランマ王国の精鋭の騎士に匹敵する。そこら辺にいる冒険者なら歯が立たないだろうな。
「お前なら、ザーインの様に道に迷う事もないだろう、しっかりと経験を積むといい。話は終わりだ来て貰ってすまなかったな、野外研修を頑張るといい」
ノナスは終わりを告げてから、執務机に戻り書類仕事を再開する。
終わりを告げたんだから、部屋から出って行って良いんだよな。俺もソファーから立ち上がり、挨拶してから部屋から出る。
何というか、ずいぶんあっさりと済んだな。本当に、ただ顔を会わせるだけだったな、まあ、思い入れのある冒険者の息子とは言え本人じゃないなら、こんなものか。
来た道を辿り、集合場所になっている部屋まで戻ると部屋の中から人の魔力が三つ感じる。
指導役の冒険者か俺と同じ指導を受ける新人冒険者かどっちかな?
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