閑話 父、我が子を思う 1
ザーイン視点です。
これはコウセルが生まれてからノキ村を出て行くまでの話です、本編に変な所もこれで解決するはずです、これで解決しないなら、すみません私の執筆能力の低さが原因です。
長くなってしまい二話構成になっています。
早く本編書けよと思う方もいるかも知れませんがどうかお許しください。
では、どうぞ。
私の名はザーイン、ノキ村の住人だ。
若い頃に村での平凡な暮らしに我慢できず、都会に飛び出した、夢見る若者のひとりだった。
魔力量が少なく私は冒険者として成功することが出来ないと、周りから、馬鹿にされ、それを認められず我武者羅に依頼をこなしていった。
今思えば、周りの人は馬鹿にする人もいただろうが、本当に私のことを心配してくれた人もいたんだろう。ギルドのサブマスターが良い例だ。
そのサブマスターに諭され冒険者を辞め、故郷に帰ることにした。
故郷に帰ると、両親からは手紙を出さない事と、先に戻って来た人から聞いたんだろう、無茶に事をしている事を怒られたが快く迎えてくれた。
故郷に帰ってからは、両親の手伝いをしながら生活し、マリスと結婚して、子供を儲ける前に両親とは死別してしまったが、その後に娘シェッタを儲け、少し問題も有ったが、穏やかで幸せな生活を送っていたが、もう一人子供が生まれてから少し騒がしい生活になる。
コウセルと名付けた、男の子の赤ん坊は、とにかく元気で動き回る、一箇所に留まる事を知らない子だ、目を少しでも離すと何処か別の場所にいる。
ハイハイが出来るようになった頃など、家の外に出ようとしていてハラハラしたものだ、幸いキチンと戸締りをしており外に出るような事はなかった。
それから動き回るのも心配だったが、それよりも疲れて動けなくなると魔力を放出し始めた事が心配だった。
初めて気付いたのは夕食を食べ終わり、食休みをしていると大きな魔力を感じた。感じた場所を見るとコウセルから大量の魔力が流れ出ていた。
心配してコウセルの元へ駆け寄ろうと椅子から腰を上げようとしてが、マリスが何事もなくコウセルを抱き上げ、コウセルも大量の魔力を流しているが何も無いみたいにマリスの腕の中に居るのを見て動きを止める。
何とも無いのかと心配で、ゆっくりと近づく。
大量の魔力が流れているが何も無い、やがてコウセルから魔力の流れるのが止まり、コウセルは眠る。
その日から、コウセルを観察すると、動き回り疲れて横になってから、魔力を体の中で循環し始め、暫くすると魔力を流し始める、そうして、たぶん魔力が無くなったんだろうコウセルは眠りに就く。
魔力操作と魔力放出するのはおかしいが、おかしな所はそれだけで後は何も無い、それどころか他の子供よりも早く立てる様になり歩くことが出来るようになる。
膨大な魔力を持っている者は無意識に魔力を流してしまう事等があると聞くがコウセルもそうなんだろうか?
かなり早いが魔法石で魔力量を測る事にした。魔力量を測る為、魔法石をコウセルに握らせると大きく光り輝く、ランクがどの辺りになるか分からないが私より多く、膨大な量がある事が分かる。
恐らく魔力操作や魔力放出をするのは多くの魔力を持っているからだろう。
そう結論付けて、コウセルの様子を頻繁に見たり、魔力放出をしている為、異変が無いか家の周りを朝晩必ず見回ることが日課になった。
コウセルが大きくなり、話せるようになるとシェッタはよくコウセルを連れて遊びに行くようになる。
遊んでいる所を見掛けた事があるが、コウセルは殆どおもちゃにされているみたいで、恥ずかしく不満そうだった。
そして、七歳になってすぐの頃だろうかコウセルがマリスに文字を教えてくれとお願いし始めた。
コウセルはよく本を読んでくれとお願いしてくる事が有るが、仕事が有るのでなかなか読んでやる事が出来ない、シェッタも文字を読む事が出来るが、まだまだ拙いのでコウセルにお願いされても嫌がって断る。
マリスがコウセルに文字を教え始め、二、三日でマリスが教えられる事が無くなってしまったらしい。
それからコウセルは私に文字を教えて欲しいとお願いしてきたので教える事にする。私が教える事にしたが仕事があるので何日かは、間が空くことになった。
コウセルは間が空いている間、自分で教材用に本を読み勉強していた。そして私が教える日には教材用に本の内容を全て学び終えていて、教える事はなくなっていた。
今より幼い頃から聞き分けがよく頭の良い子だった、コウセルは天才という奴なんだろう、疑問に思う所はあるが納得出来ない訳ではない。
さて、文字を読み書きは、あくまで手段だコウセルは別にやりたい事が有る筈だ、本を一人で読むだけならいいが、そんな事を思いながらコウセルに聞いてみる。
「お父さん、僕ね魔法の適正が無かったから、魔術を覚えたいんだ」
魔術か――――魔法の適正の無い子は、どうしても魔法を使いたいと諦めきれず魔術を習おうと思う。
幸いノキ村の教会に居るリムス神父様がいくつか扱えるはずだ、リムス神父様にお願いするか。
コウセルにリムス神父様から魔術と身体強化を習うように言い、授業料代わりに野菜を持って行かせた。今後も定期的に渡さないとな。
そういえばコウセルに無意識に魔力を操作、放出している事を教えたら、驚き、顔が引きつっているみたいだった。もしかして自分の意思で操作と放出を行っていたのか。
・・・・・・流石にそれはないか、ただ驚いていただけだろう。
とりあえず、コウセルがキチンと文字の読み書きが出来るようになった祝いに肉でもご馳走してやろう。
もちろん、狩りをするのは秘密でだ、あの子は賢く変に遠慮するところがあるからな秘密にしておかないと・・・・・畑に獲物が出たという事にしておくか。
その日の夕食でシェッタが狩りに出掛けたのか聞いてきた時にコウセルは負担を掛けたんじゃないかと心配そうな顔をしていた、否定すると安心していた。
そうだ、子供は変に遠慮せずに親に甘えればいいんだ。
食事をしている途中でコウセルにリムス神父様からキチンと教わってきたか聞くとマリスとシェッタがコウセルが私から文字を習うのを逃げ出したと勘違いして、からかっている、少し灸を据えてやらないとな。
その後、コウセルが自分たちより文字の読み書きが出来るようになった事に驚き、私が時間が出来れば勉強を見てやる事を約束すると、目に見えてうろたえている、変に人をからかおうとするからだ。
改めてコウセルから何をしたかを聞くと、魔力量がBランク有る事と魔力の感覚を完全に掴み、身体強化を覚えて、才能があるとまで褒められたみたいだ。身体強化はすぐに覚えられると思っていたが、本当に一日で覚えてくるとは驚きだ。
驚いた後に戦士として活躍できるかも知れないと言うとコウセルは魔術師に成りたいと言った。
シェッタが英雄譚に出て来る様な魔術師かと聞きコウセルは嬉々と頷いたが、私はすぐに否定した。
魔導王が生きている時代か衰退するまでの時代なら、魔術師として大成する事はあったかも知れないが、今では衰退してしまい残っている術式は中級までしかないと聞いた。
それをコウセルに教えると、コウセルは考え込んでしまった。きっとショックだったんだろう。
それからコウセルには歴史の勉強もするように言いつけた。改めてリムス神父様の所に訪ねて勉強を見てもらうのをお願いしないといけないな。
翌日、家族で畑に行きコウセルに鍬を持たせた。マリスは心配しているがコウセルに鍬を振らせて心配ないことを示させた。
コウセルは鍬を持ち上げる時に少しバランスを崩していたが問題なく振り、マリスをなんとか納得させた、しかし、本当にコウセルは身体強化を使えるようになっていた、しかも魔力の流れに、ぎこちない所がない、本当に才能があるんだと確信する出来事だった。
昼の鐘が鳴り昼食を取る時間になると手を止め畑仕事の進み具合を見る。体が小さいせいかコウセルは私よりも仕事の進みは遅いが、それでも年齢を考えれば早いスピードだろう。
コウセルは優秀な子だ、頭が良く、魔力も多く持っているから強くなっていくだろう、多少、親馬鹿が混じっているのは否定しないがそれはどうでもいい。
もしコウセルが道を誤った場合、力が大きい分、周りに掛ける迷惑も大きな物になるだろう、最悪殺される事も有るかもしれない。
今日中にもリムス神父様のところに尋ねた方が良いかもしれない。
今のコウセルは素直で良い子だ、マリスにからかわれているのを分かっていながら怒らず、素直に甘えたりしているが、今後もそうだとは限らない。
昼から仕事を再開して、早々に仕事を終えてからリムス神父様の所へ向かう事にする。
マリスとシェッタは畑仕事を終えて家に戻り、畑にコウセル一人だけにしたが大丈夫だろうと思いリムス神父様の所に向かう。
教会に到着し中に入って行く。
「こんにちは、リムス神父様いらっしゃいますか」
「ハイ、少しお待ちください」
教会の中で挨拶するとすぐに返事が来る。暫くするとリムス神父様が奥から出てくる。
「こんにちは、ザーインさん、今日はどうしたんですか?」
「こんにちは、リムス神父様。実はコウセルの事で相談があります」
「コウセル君ですか」
リムス神父様が何か悩むような顔をしている、昨日何か有ったのか。
「それで相談とは?」
「はい、親の私が言うのもなんですが、コウセルは優秀です。たぶんですが村を出て行くでしょう、この村はコウセルには小さすぎる。けど、村の外にはコウセルより才能の有る子や強い人は大勢いる。コウセルが村の外も村と同じと考えたり、自分は選ばれた存在なんだと勘違いして村の外に出れば問題を起すでしょう。コウセルは魔力量が多い分、起す問題も大きくなるかもしれません、その際の処分は最悪死刑になってもおかしくありません。だからそうならない様にコウセルに村の外の常識等を教えてやって欲しいんです」
「ええ、構いませんよ」
良かった、私は地方都市アンニーに居た事は有るが、自分の事だけで周りが見えていなかった、コウセルに教えてやれることが殆ど無い。
「それでザーインさん私からも、お話したい事があります。コウセル君なんですが身体強化が使える事は知っていますか」
「はい、私が習うように言いましたから、教わった事も聞いていますし。今日早速、使わせましたし」
「そうですか。実はコウセル君に身体強化を教える時に私は応用の部分強化を何も言わず、するように指示しました」
どうして、そんな事を身体強化が出来ないのに応用に部分強化を教えても意味がないのではないか。
「コウセル君は完璧な部分強化を成功させました。魔力操作があまりにも上手いので出来るのではないかと思いましたが、本当に出来た時は驚きました」
「本当ですか?」
「はい、ザーインさん、コウセル君は親の贔屓を抜きにしても優秀な子です。コウセル君が道を誤らないように私も出来る限り、お手伝いをさせて貰います」
「リムス神父様、ありがとう御座います」
その後、授業料を後日に持っていくこと約束して家に帰った。リムス神父様は授業料を要らないと言っていたコウセルの為に時間を使って貰うので受け取って欲しいと押し切った。
懸念がはれて気分良く家に帰ると、マリスから鋭い平手打ちをもらい、すごい形相で物凄く怒られてしまった。マリスから説教されている間、自分の顔が引きつっているのが分かる。
説教が終わると夕食を遅くなった事を責める子供二人の視線も痛かった。コウセルは優秀だが子供なんだ面倒を見てやらないといけないな。
それからコウセルはリムス神父様のところで勉強をしながら畑仕事を手伝って貰う日々が続いた。
ある時、コウセルが顔を痣だらけにして帰ってきた事が有り、理由を聞くといじめられている子を助けるために喧嘩したと言った、マリスは喧嘩をするなと怒った。
私はいじめられている子を助けたのだから褒めてやりたかったが、どんな理由があろうと喧嘩をした事を褒めるわけにはいかないので怒らず、身体強化を使わないように注意するだけにした。
コウセルが喧嘩で身体強化をしていれば大事になっていた。それを理解して使わなかったんだろう。コウセルは誤った道を歩んでいない事に安心した。
喧嘩した相手ジャイタの父親ジャイボには、後日注意しないといけないな、子供は我が侭を言うもんだがジャイタは酷い、躾けをキチンとして欲しいものだ。
その後、助けた子―――サブロと友達になり、偶に遊んでいる所を見かけるようになった。コウセルは優秀だからなのか変に大人びたところが有り、友達が居なかったので少し心配していたが、これで安心した。
それから五年が経ち、コウセルが十二歳になると、コウセルから十五歳、成人してからノキ村を出て冒険者に成りたいと話してきた。
私はそんなに驚かず何か武器を扱えるようになる事を条件に許可を出した、シェッタもあまり驚かず嗜好品を送って来て欲しいとお願いするぐらいだが、マリスは驚き大反対した。
冒険者は危険な仕事だからマリスは心配なんだろうが、コウセルは許可がもらえないと、きっとノキ村を飛び出していくだろう、私がそうだったからわかる。
何とか説得して条件付きで許可を出したが、その条件がコウセルが私に戦い勝つ事だ言い出したときは苦笑いしか出来なかった。
今はともかく、十五歳に成る事には何の武器かは分からないが、ある程度のな腕前になっていて魔力により力押しで負けてしまうだろう。
冒険者になる事を条件付きで許可をもらってからコウセルは、自分が使う武器に槍を選び。早朝、私と槍の訓練をして、畑仕事がなかったり早く終えた日は、山や森に入る許可を出していたので私や村の猟師から習った狩りの方法で、ノキ村を出た後の活動資金を稼ぐために一人で狩りに出掛けるようになる。
それから暫くするとリムス神父様から、コウセルの勉強の進み具合などを聞くと問題なく進み、魔術に関しては使える三つの魔術を覚えてしまい、教え終わっているらしい。
なら、次に進ましてみるか。
そう考えてノコモ村長が持っている魔導書を借りる事にした。あいつには貸しが有るからな私の頼みは断れない。
魔導書を持って家に帰ると、コウセルは目ざとく魔導書に気が付いたみたいだ、質問をしてくる。
ノコモ村長から強請って借りてきたと説明すると呆れられ、注意された。
しかし、普通に借りようとすればノコモ村長はコウセルを婿に寄越せと言って来るだろう、コウセルはノキ村の中では飛び抜けて優秀な子になっているからな、ビッテの婿として申し分ないし、ノキ村の事を考えれば当然だろう。
だが、私はコウセルの自由を縛るつもりは無いからな、ノコモ村長には諦めて貰う。