第一章:リストカット
太陽がコンクリートを焼く季節。青い、青すぎる空が、そこにあった。
少女が一人、屋上にでて扉の隣に腰を下ろした。ちょうどいい具合に日陰になっていた。はめていた左手のリストバンドを外すと、無数の切傷のようなものが剥き出しになっている。
所々腫れている箇所もあり、なんとも痛々しい。
それを見て、少女はうっすらと微笑んだ。
まるで、安心するかのように…。
彼女は自傷癖がある。所謂リストカットだ。始まったのは4年前の話。
理由は・・・本人ですら忘れている小さなこと。でもその当時は、重大な事だった。
かつて、彼女は死にたいと思っていた。
このまま消えてしまいたい・・・と。
そうすれば、どれだけ楽か。そうすれば、どれだけ救われるか。
どれだけ、心が解放されるか。彼女は考えるだけで、幸福になれた。
同時に心が締め付けられた。
それでもやはり死に切れず、彼女は高校に入った。
初めは良かった。友達も出来て、リストカットの存在なんか忘れていた。
そして現在、彼女の心は再び壊れそうになっていた。
他人にとっては小さなこと。でも彼女にとっては、重大な事だ。
何かを傷つけないと心が保てないくらいに、心が軋んでいた。
彼女は、腕の傷は心の傷だと思っている。心の反映なのだと・・・。
傷をただボーッと見ていた彼女は突然、ポケットから剃刀を取り出して左手首に突きたてた。そして、思いっきり引く。
繰り返すこと数回。
スゥーッ
赤い液体が腕から流れ出る。
「ふぅ・・・」
彼女は微笑みながら、息を吐く。
消毒もせず、傷の上からリストバンドをはめ屋上を出ようとした。
「えっ!?」
立ち上がった彼女の目の前には、眩しいくらいの白い服を着た男の子が立っていた。
「貴女は、死にたいの?生きたいの?」
そして、表情のない言葉で尋ねた。




