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『 彼女が好きな日 』

作者: 熊亀

「あーあ、本当ダメよね。ダメ、ダメダメ。ダメ過ぎる。これもダメ」


黒こげクッキー。

生焼けクッキー。

満足そうに口に運んでは、笑顔でダメダメダメダメ。


「うわ、粉っぽい」


今日は彼女が一年で一番楽しみにしている日。


包丁を両手で持ったり、何でもかんでも真っ黒に焼き尽くしてしまったりする彼女が、一年に一度料理当番の僕に復讐出来る日。


彼女が何故お菓子だけ上手に作れるのか……それは我が家最大の謎で。


「まったく、毎年毎年本当進歩しないんだから。お菓子はね、いつもみたいに目分量じゃダメなの。しっかりと分量を」


「はいはい、来年はもっと頑張りますよ」


君に会う前はショコラティエだったんだよ。

毎年毎年心の中で呟いて、得意げな彼女の笑顔に満たされるんです。

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