幼王の、仰せのままに。
勢いで執筆したものをのせたのでいろいろと誤字脱字はあるわダメだわな点だらけだと思います。
私は一度死んだが蘇った。いや、蘇ったという表現は相応しくないかもしれない。
私は蘇ることを許された、或は蘇らせてくれた、という表現が相応しい。
そう、私は一度死んでもう一度生まれたのだ。いや生まれたんじゃない、肉体はそのままといってしまえばそのままだ。
まあ、簡単に説明すれば、といっても簡単に説明できる内容なんかではないのだけれど、私は隣国との戦争で殉職した。隣国とは同盟を結んでいたのにも関わらず攻め込まれた、まあこういうことなんて幾度となく繰り返されてきたことだ。
それに、王国の騎士として死ねたのなら本望だった。だが、私は死んだ後、我が国の第三皇子に拾われたらしい。その時第三皇子といえば、我等が王と娼婦の間に生まれた賤しい第三皇子というレッテルをはられていたほどに、蔑まれていた。
それが原因でぐれてしまい、引きこもっているということも周知の事実であった。
そんな第三皇子の得意とするものは二つほどあった、まず水というよりは水蒸気という、または霧魔法だ。そしてもう一つ、第三皇子が何より得意とするのが人形造りだったとのことだ。
家族に嫌われている第三皇子。
国民に嗤われている第三皇子。
友達が一人もいない第三皇子。
王に忘れられた、第三皇子。
そんな皇子の娯楽が人形造りだったという。
自分のみに忠実に動き、自分を体をはって守ってくれる、そんな存在が人形だったらしい。そして第三皇子は、その人形をつくる素材がなくて困っていたらしい。
今までは木だとかのそこらへんにあるようなもので人形造りをしていたらしいが、それに飽きてしまった皇子は考えた、よりリアルな人形を造るためにはどうすればいいか、より丈夫でそして知能をもった人形を造るのにはどうすればいいか。
そして第三皇子は気づいた、人間を素体とした人形を造ろうではないか。
そうして人間を素体とした人形を造ることを決めた第三皇子だったが、生きた人間を人形にするのは難しいと判断したためまずは死体から造ろうと考えたらしい。
そして第三皇子は何故か王以上の情報網をおもちであり、隣国との戦争が勃発することも我が国が敗北することも見透かしていたらしい。まあ、それもそうか。
敗北させたのは、第三皇子本人なのだから。
そう、第三皇子は死体探しに丁度いい現場、戦争に出向いたのだ。
何故戦争などに出向いて生きていられたかと聞けば、霧魔法を使えば視界をふさげるからな、と得意げに言われてしまっては私は何も言えずにいた。
そしてその時、私の死体を見つけ自らの部屋に持ち帰り人形へと変貌させたらしい。戦争は一日などで終わるものではないので、皇子が閉じこもって私を造りだす間も続いていた、というか私が人形としてうまれた瞬間は戦争真っ只中だった。
そうして私は賤しい第三皇子につくられた、人形だ。
死ぬことはない、人形だから。
衰えることもない、人形だから。
私はその時皇子に騎士として忠誠を誓い、皇子の不死身の騎士となった。
従者ともいえよう、騎士ともいえよう、執事ともいえよう。
下僕ともいえよう。
人形ともいえよう。
捨駒とも、いえよう。
不死身の騎士として皇子を守るのが私の役目。
皇子に逆らうなんてことは許されないし逆らう気なんかなかった。
皇子からの命令が下ればそれを遂行するのみだった。
だから、王を殺したのだ。第三皇子の実の父親の王をこの手で剣で、刺殺したのだ、私は王を殺せ、という命令に忠実に従い遂行した。
例え今まで仕えていた主人でも、例え私を拾ってくれた王だとしても。
だって、そういってしまえば、第三皇子も、同じなのだから。
そうして私は第三皇子を、王と崇めた。
ただ、王様と呼ぶには12歳と、まだ幼い王のことを、私は幼王と、そう呼んだ。
幼王の飼い猫の獣人も、確かそう呼んでいた。
王、ローシャの首をとれ、と言われた時から私たちの中では皇子が王になる、と確信していたためその時から幼王と呼んでいた。
そう命令されたとき二人揃って
「幼王の、仰せのままに」
そう言ったのを鮮明に覚えている。
また、こう言ったことも覚えていた。
「ああ、幼王よ。悲しき時は目じりが熱くなり涙を流すものですがどうにもその感覚がないのです。そして悲しい、とも思えないのが事実なのですよ、私は一体どうしちまったんでしょう」
「ああ、安心しろ。お前に涙なんてくだらないオプションはつけてないし、喜怒哀楽だとかいう感情はぬいておいたから、殺すのも苦ではなかったろう?
それに、人間であった時の記憶が色褪せるようにしておいたから、大丈夫さ」
おお、幼王はお優しい、そう言ってそこでその会話は終わったのだ。
また、幼王とそう呼んでいたのも事実だが、私は坊ちゃんとも、呼ぶことがあった。
理由はそこまで重要なものではなく、幼王の雰囲気が貴族の坊ちゃんを漂わせていたからだった。おふざけ半分で坊ちゃんと呼んだ。坊ちゃんはやめろというものの本気でやめさせようとはせずにいたので私もいいだろうと思いそう呼んでいた。
そして、私はいつも思うことがある。
人形をこよなく愛し、娯楽とし製造する坊ちゃん自身、実は人形なのではないのだろうか、と。
人形を愛するあまりに自身の体も改造しているのではないか、と感じていたのだ。
何故なら坊ちゃんの手があまりにも冷たかったからだ。ただ、それだけだったのだ。
私の手も人形なので、それなりに冷たいが、坊ちゃんの手も負けず劣らずで冷たいものだった。
そんな坊ちゃんも一年重ねるごとに少年から青年に変わっていった。
12歳だった外見に中身は16歳に。私の姿は衰えることはなく。
私からみたらまだ幼い王は、いつものように玉座に座り玉座の右側に私を左側に飼い猫をおく。そうして二人で、幼王の両手の甲に軽い口づけをする。
その時だった、幼王が口を開いたのだ。
何だ何だと幼王の顔を見つめる私と飼い猫。
そして、幼王はこう、いった。
「そろそろ、飽きてきたんだ。そうだな、これは、命令だ。僕を殺せ」
驚き、目を見開く私たちなど目もくれずに。
「もう一度いう、僕を殺せ」
そういったのだ、驚きながらも私は見開いた目を一度閉じいつも通りにお約束の、あの言葉を一言いう。
「幼王の仰せのままに」
玉座に座っていた幼王の右手の手の甲に軽く口づけしていた唇をはなし、スクリと立ち上がる。
腰に掛けていた剣を抜いて幼王に向けて、振り上げよう、と、した。
でも、振り上げて、そこから体がまったく動かない。いや、まるでこれは私が動きたくないといっているように動けないんじゃなくて動かないのだ。
だって、手が震えている。カタカタと膝も震えている。声をだして動けない、という意を伝えようとした、声もまた震えている。
私は、命令にただ忠実に動く人形だと自分のことをそう思っていた。
今までは。
でも私は思ってた以上に幼王に依存しており、認めていて、逆らってでも、
殺したくない一緒にいたい、存在だったらしい。
自然と口が緩んでいくのがわかった、へにゃへにゃと。
透明な、血液が目じりから流れて行っているのもわかった。私はきっと、頼りない顔をしているのだろうな、とも。
そして私はそんな頼りない顔のまま、呆気にとられたような顔の幼王につげる。
「私は、あなたを、殺すことができない」
声は震えていて。
「命令を、遂行できなく、また見苦しい姿をお見せしたことを、騎士として謝罪もうしあげます」
騎士として、なんて言っているくせに震える声はなさけなく。人形のくせに人間らしさがにじみ出ていて。
キッと、幼王ににらまれた気がした。
「誰が、お前をつくったと思ってる」
「もちろん、幼王でございます」
わかってるじゃないか、と幼王はそういって再び口を開いた。
「……不愉快だ、自害しろ。僕の命令を忠実に遂行できない、出来損ないはいらない」
まあ、それが妥当な、考えなのだろう。
私は拒絶するわけでもなく、いやだというわけでもなく、いつも通りのあの言葉をまたいうのだった、。
「幼王の、仰せのままに」
そうして自らの剣に自らの体を貫かせれば人形らしくない呻き声が自然と漏れ、ビキビキという体に皹がはいったのがわかった。そうして皹がはいり、私の体に穴があき、体の中心部にうめこまれている核、つまり人間でいう心臓に動力に剣の先が触れ唯一の生身の部分にぐさりと抉りこまれゴポリという音が聞こえドクドクと流れ落ちる生温かさを感じさせる液体。それと同時に口から垂れ流れてきた血液。
その姿を見て顔を歪めさせる幼王。
やっぱり、幼王が人形だなんて考えはハズレだ、そんなに人間らしい表情ができるだなんて私は知らなかった。
幼王の目じりからは透明な血液が流れ出ている。嗚呼、幼王怪我をしたのですか。
私はもうその透明な血液の名すらも忘れてしまったただの人形です。貴方を守ることはできないでしょう。
最早人形とすら機能しておりません。ああ、幼王よ、愚かな騎士をお許しください。
貴方に一生使えると、決意したはずなのにもう無理そうなのです。
ああ、幼王よ、私の目じりからこぼれる、コレはなんなのですか。
そうそう、幼王よ、名を教えてはくれませんか。
サルバトールというのですか、美しい名ではないですか。
そうそう、私の名を教えてはくれませんか。幼王がつけてくれたのですか?
ローシャ、ですか?
私には勿体ないほど良い名ではございませんか。ああ、幼王よ何故そんなに透明な血液が流れ出ているのです?お怪我でもなされましたか?でも外傷は見当たりません。
何故私を腕に抱いて顔をゆがめているのです?おさなおうよ。
おさなおうよ。
ああ。
もしも、もしもわたしがせんそうにでないで、あなたがしょうふとのこではなかったのであれば、もうすこしだけしあわせなおわりかたをむかえられたのでしょうか。
だけど、これでもわたしはしあわせだったとむねをはっていえるきがするんです。
でも、ひとつききたいことがあるんだけども、すこしいいですか。
あなたは、しあわせでしたか。
偉大なる王、サルバトールよ。
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