ずっと一緒
「やっぱりこっちの帽子のほうがいいよ。」
そう言って雄太は赤色のキャップを手に取った。
「そうかな?俺って、明るい色似合わなくない?」
将也はその帽子をかぶって、鏡を見ながら言った。
雄太と将也は同じクラスになったのがきっかけで仲良くなり、暇さえあればこうやって二人でどこかへ出かけることが多かった。
その日は、二人とも部活がなかったため学校帰りに買い物に出かけていた。
「似合うと思うけどなぁ。」
雄太は鏡を覗き込みながら言った。
その悩んでいるような顔が妙に可愛くて、将也は観念したように言った。
「雄太が言うんなら・・・買う!」
「えっ、マジで?いやだったらいいのに。」
「いや。こういうの一個持っといたほうがいいだろ?」
そう言って将也はレジに向かった。
買い物が終わったあと、帰りの電車賃しかなくなった二人は公園に行った。
空はもう真っ暗で、時刻は八時をまわっていた。
「はぁーなんか疲れたなぁ。」
雄太はブランコに腰掛けながら言った。
「うん。疲れた。」
将也は周りの柵に腰掛けた。
「俺さ、お前に相談があるんだ。」
雄太は話し始めた。
「何?」
「同じクラスに村上いるじゃん?」
「あぁ、村上陽子?」
「うん。実はそいつに告白されちゃってさ。」
「えっ・・・」
「俺今まで誰とも付き合ったことなくて、どうしたらいいかわかんないんだよなぁ。」
雄太は頬を赤らめながら言った。
「・・・雄太は村上が好きなの?」
「俺?俺は・・・別に。てか、不細工じゃなければいいや。」
「ひどいなぁ。お前。」
「もし村上と付き合うなら、キスとかうまくなきゃ嫌われちゃうなぁ。俺、一度もないから練習しなきゃな。」
「じゃぁ、俺としてみる?」
最初はふざけてるんだと思った。
うつむいている将也に近づき、手をヒラヒラさせながら言った。
「将也?まーさーや。将也くーん?」
将也はいきなり雄太の手をとり、強引にキスをした。
将也の舌が雄太の中に入っていく。
雄太から小さな息が漏れた。
「はっ・・・」
雄太は一生懸命将也を離そうとするが力が強く、ビクともしなかった。
雄太は思いっきり将也の唇を噛んだ。
「イタっ。」
将也の口から血が流れた。その姿を見て焦った雄太はワイシャツの袖で血を拭いた。
「ごめん。痛かったよな。ごめんな?」
将也は笑った。その姿にムッとした雄太は怒った口調で言った。
「何がおかしいんだよ。」
将也はくすくすと笑いながら言う。
「男にキスされたんだぞ?それがどういう意味だかわかってんの?」
「・・・将也は俺が好きってこと?」
雄太は将也の目をジッと見ながら聞いた。
「そう。俺、ホモなんだよ。」
「えっ・・・俺とお前はただの友達じゃないの?」
「少なくとも俺はお前が好きだから近づいたんだよ。」
落ち着いた様子の将也がどこか大人びて見えた。
「ごめん。何言ってんだろな、俺。」
「・・・いいよ。」
「えっ?」
雄太は笑いながら言った。
「実はカマかけてたんだ。お前いつもはっきりしないからさぁ。」
「・・・じゃぁ、村上の話は?」
「嘘に決まってんじゃん。」
将也は唖然としていた。
「ごめんな。」
雄太はニコッとして将也を見た。
そんな雄太が可愛くて、将也は雄太をギュッと抱きしめた。
「なっ、もう一回キスしよう?」
雄太は抱きしめながら言った。
「うん。」
そう言って二人は優しく甘いキスをした。
そして、おでこをくっつけ雄太がつぶやいた。
「ずっと一緒にいような。」
将也は微笑みながら答えた。
「うん。ずっとな。」