プロローグ
「俺はイルハのヒーローになる!」
「うん!私もサジのヒーローになる!」
とても懐かしい夢を見た、まだ自分が夢を追いかけて来た頃幼馴染のイルハと交わした約束。
ヒーローになると、子供の頃には誰もが夢見たことを自分も追いかけていた。
もう諦めてしまった夢だ。
200年前勇者が魔王を倒してからこの世界は変わった。
魔王軍と人間は和解し、異界からの技術で急速に世界が発展した。誰かを守る為の技術はスポーツになり魔法は科学となった。世界各地を繋いで人々を運んできた馬や荷車は魔力を燃料とした車に変わった。空には魔導機関を搭載して魔力がこの世に存在する限り飛び続ける空島も浮かんでいる。
魔王を敬愛していた魔族等の区別もこの400年の間で認識が変わりどちらも"人"と呼んでいる。
自分も昔は魔族と呼ばれていたものらしい、それは長命種であるエルフだ。といってもエルフは魔王のことを敵対していたため魔族と呼べるのかも怪しい。この手の話は自分の祖母にあたる300歳超えとはまるで思えない美少女のシルフから小さい頃から散々聞かされている。
自分自身も25歳だが体の容姿は17歳の頃から全く変わらない。久々に会う友達とも、お前は若くていいよなぁと毎回言われてしまう。イルハも同じエルフで今となってはイマジナリーバトル略して「イマバト」の有名選手となって最近は会っていない。会っていないと呼ぶより自分が避けている。17歳の頃イマバトで手と足に大きな怪我を負ってしまったからである。不慮な事故である。対戦相手が大きな反則である攻撃魔法をイルハに行使してしまいそれをイルハから庇って受けた結果こうなってしまった。それに負い目を感じてしまったイルハがとても見ていて居た堪れなく近くに居られないため今はシルフと一緒に魔王軍との戦闘跡地にでる戦闘ゴーレムを退治し各地を回っている。
手と足は以前よりある程度は動かせるようになった。
「しっかしここはゴーレムが少ないよなぁ?シルフ」
「呼び捨てにするんじゃないこんのバカ孫!」
「殴るのはずりぃよこのババア!」
「ババアとはなんだこの通りピチピチな15歳だぞ」
「それは容姿の話だろうが!」
この体から自分の母が生まれてきたとは思えない…
「想像していたら気分が悪くなってきた」
「なんじゃ?」
「いえ何も」
「っていうか本当にここにゴーレムでんのか?」
「でると聞いたからここに来てるんじゃろ?」
「そりゃそうだけどさ〜見かけたゴーレムは農業用ゴーレムだけだぜ?」
「不満は依頼主にいうんだな!あと、この車の中であまり気分が悪くなってきたとか言うな!吐いたら許さないからな!」
「ロリババア…」
「何だって?」
「いや少し昼寝する」
それから車を走らせて大分時間が経っただろうか。車外から嫌な気配を感じるようになった。
「…ババア」
「何じゃ?」
「嫌な気配がする」
「ほう、さすが私の孫、アレの気配に気づけるとはね」
「あれなんなんだよ、馬鹿デケェ」
「あれは攻城ゴーレム、昔お前によく読んだろ魔王軍の話、その都市を攻撃する用の巨大ゴーレム」
「普段私達が相手にしてきた雑兵ゴーレムとは格が違うぞ」
「え、あれを今から俺達が退治するの?」
「今回は退治じゃないわよ、完全な破壊がこの依頼達成の条件」
まじかぁ、あんなデカいやつと戦うのかよ
「ちなみに失敗したら私達が普段生活してる都市に侵入して破壊の限りを尽くすことになるわよ」
「……責任重くない?」
「仕方ないじゃないこの依頼を達成しないと普段の依頼をみんな受けられないのよ」
「前の装甲車も後ろの輸送車も同じ依頼を受けてんのよ?しかもトドメを刺した人は報酬が倍よ…倍!」
「でもゴーレムは完全破壊はできないじゃなかったのか?」
「あれはデカいじゃろ?だから制御用の魔導機関もデカいから回路を破壊しやすいの。雑兵ゴーレムは小型だから破壊できたらラッキー程度。だから"退治"なのよ!」
「ま、セオリー通りやりますよ」
手と足に怪我を負ってから剣等を振るう事が出来なくなった。でも自分はエルフ、魔力が高かった。今は攻撃魔法を使う人はとても少ないが僅かながら使っているものもいる。ロリババアことシルフも攻撃魔法使いだ。これでも先の戦争で戦った経験があるらしい。自分はシルフから魔法を教わった。基本の5属性を覚えればいくらでも応用が利く。特にゴーレムは水と雷に弱い。
自分は走行中の車の上に立ち集中し手先に魔力を込めた。球体型になった魔力が手の中に収まりそれをゴーレムに向けて射出する。
「当たり!」
魔法は当たったが全然ピンピンしてるしかもこっちに興味を示していない。スケールが違うよスケールが、こんなものと戦って生き残ってるシルフ化け物やん。
「バカ孫!車の運転を交代しろ!私がゴーレムを破壊する!」
「他の奴にお金取られたくないだけだろうがこのババア!」
「ババアとはなんだ!お前にアイツは倒せん!」
「ったく…ちゃんと金分けろよ!」
シルフの魔法ってすごく怖いんだよな。なんというかねっとりしてる。
「久々に全力を出せそうだな!」
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