変わりだす時
第3話 変わり始めた日々
今日も地獄みたいな日が始まる。
本当に、なんで人は心の中で誰かの不幸を願ってるんだ。
そんなに人が嫌いなら、誰とも関わらなければいいだろ。
……まあ、無理か。
そんなことを考えていた時、ふと時雨のことを思い出した。
あいつは、違う。
誰かと関わりたいのに、うまくできないだけだ。
昨日、俺が話しかけた時も――
「ありがとう」
あの声は、心地よかった。
もう俺には他人への期待なんて残ってないと思っていたのに。
……まだ、残ってたのかもな。
もし世界中の人が、時雨みたいに人と関わることを望んでいたら。
もっとマシな世界になっていたのかもしれない。
そこまで考えて、俺はふと思う。
……ああ、そうか。
俺、あいつのこと結構気に入ってるのかもな。
だったら。
俺が一緒にいてやるか。
あいつのことを分かってやれるのは――
心が読める俺しかいない。
……なんてな。
本当は、俺があいつともっと話したいだけだ。
この地獄みたいな日々の中で、やっとやりたいことができた。
これからの毎日、少しはマシになるかもしれないな。
教室に入ると、いつも通りの光景が広がっていた。
「時雨さんおはよう」
「今日もかわいいね」
「ああ、うん、ありがとう」
――なんでうまく人と話せないんだろう。
……やっぱり、いつも通りか。
俺は時雨の前に立つ。
「おはよう、時雨」
少しだけ間を置いて、時雨が答える。
「……うん。おはよう、時也君」
――もっと話さないと。
また、あいつは自分を責めている。
……今日は、このまま終わらせない。
「なあ、今日の放課後って予定あるか?」
少し踏み込んでみる。
「……え?」
時雨が驚いた顔をする。
「ちょっと、一緒に出かけてみないか」
俺は続けた。
「時雨と話してみたいんだよ」
――本当は行きたいのに、なんで断っちゃうんだろう。
「……いや、放課後は忙しいの」
やっぱり断るか。
でも――
「別にいいだろ?」
俺は引かなかった。
「ちょっとだけでいい。話してみたいんだ」
時雨は驚いたまま、しばらく黙っていた。
そして。
「……わかった。いいよ」
小さく頷いた。
その心の中は――
――本当に、いいの?
――嬉しい。
……やっぱりな。
素直で、かわいいところもあるじゃねえか。
俺の心の声が聞かれていないことに、少しだけ安心する。
気づけば、少し笑っていたらしい。
……まあ、周りにどう思われてもいいか。
今はそれよりも。
放課後のことだけを考えていればいい。
この退屈な日常が、少しだけ動き出した気がした。




