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【完結】地上でいちばん可愛い正月旅行 〜天使と悪魔も福来たる、温泉・TOKYO・バタフライ〜  作者: 久茉莉himari


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9/11

【9】青海苔の奇跡、そして東京に落ちた一筋の雷。〜リンゴ飴の懺悔〜

イレイナは新年の慈善パーティーの最中、化粧室で携帯用の水晶玉を見つめ、静かに呟いた。


「さあ、私が用意した屋台で楽しむアンジュ……撮影開始よ!」


旅館の奥には、落差五メートルの滝。

その滝壺の周囲には、屋台がずらりと並んでいた。

焼ける鉄板の音、ソースの香り、ゆらめく提灯の明かり――

神聖な滝の音と、人間界の喧騒がひとつになり、幻想的な空気を生み出している。


「流石、イレイナね! 昨日の今日でお祭りじゃん♪」

ロクシーが目を輝かせる。

ルチアーノもワイングラスを掲げながら、「正に……! ジャパニーズ屋台!」と微笑んだ。

二人の視線が交わり、同時にニヤリと笑う。


滝の飛沫が光を受け、金粉のように舞った。

アンジュはその美しさに見惚れ、思わず立ち止まる。


その瞬間、

アンジュの青い瞳が、滝の光を映したのか――

ほんの一瞬だけ、星のように淡く煌めいた。


ルシアンは息を呑む。

“恩寵の欠片”に似た輝き……だが、アンジュ本人は気付いていない。


その横顔を――ルシアンが見惚れていた。

神々しさと幼さを併せ持つその微笑みは、彼にとって何よりも尊い。


だが次の瞬間、アンジュの視線は屋台へと向かっていた。


「ルシアン! 見ろ! あれは月ではないか!?

日本人はお正月にお月様を食べるのか!?」


真顔で問うアンジュに、ルシアンが慌てて答える。 「い、いえ……! あれは“たこ焼き”にございます!」


「ふーん……」 アンジュは丸いたこ焼きをじっと見つめる。


その時、陰からロクシーが声を張り上げた。

「ルシアン! 脚本!」


彼女がそっと手渡す、熱々のたこ焼きの皿。

ルシアンはハッと口を結び、たこ焼きを受け取った。


アンジュはその様子を見つめている。

青く輝く瞳は――たこ焼きに釘付けだ。


そしてルシアンが至極真面目に告げる。


「外はカリカリ、中はジューシーでございます。  火傷の危険がありますので、私がフーフーを……!」


「ほう! やってみてくれ♪」


その一言で、ルシアンの決意が固まる。

全力のフーフー。


瞬間、青海苔と鰹節が滝の風に舞い――アンジュの頬を直撃した。


「も、申し訳ありませんアンジュさま!」

ルシアンが慌てて、ふわモコのパーカーの袖でアンジュの顔を拭う。


アンジュは一瞬きょとんとしたが、すぐにぷっと吹き出した。


「ルシアン……お前……!」


滝の音が遠のく。

そして、アンジュが肩を震わせ、笑い出した。


「お前も鼻のてっぺんに青海苔とやらが付いておるぞ!」


細く白い指先が、そっとルシアンの鼻に触れる。


粉雪がひらひらと舞い落ち、二人の間を静かに包み込んだ。


「アンジュさま! 風邪を引いてしまいます!

 パーカーをお被り下さい!」


そう言ってルシアンが慌ててふわモコのフードを被せると、

そこには金色の刺繍で天使の羽根が輝いていた。


見惚れるルシアン――。

だが、アンジュがふいに微笑み、彼のフードを引き寄せる。


「お前も被れ!」


背伸びして被せられたフードの上には、金糸で縫われたユニコーンの紋章。

粉雪の下、二つの金色が静かに寄り添った。





それからも、四人は屋台を存分に堪能した。


だが――ロクシーの脚本通り、アンジュとルシアンは二人きりにしてある。


ロクシーはイカの丸焼きに齧りつきながら、生ビールのジョッキを傾けた。


「いやー……ルシアンなら全力でフーフーすると思ったけど……予想通りね!」


ルチアーノもニヤリと笑う。


「流石、ロクシー先生であります!

しかも……フードのてっぺんに刺繍がくるようにデザインされているとは……!

このルチアーノ、感服いたしました!」


「まあさあ……」ロクシーはグビグビと生ビールを飲みながら肩をすくめた。


「アンジュちゃんの天使の羽根は良いよ?

でも……いくらイケメンでも、おっさんのパステルブルーのフードにユニコーンの金刺繍で盛り上がるとは……アンジュちゃんってピュアだよね。

私なら無理! 絶対笑う!」


「恋とは……ややっ! 摩訶不思議なものなり〜!」


ルチアーノが何故か歌舞伎役者のように見得を切る。

その瞬間、ロクシーの手から飛んだ串焼きの串が――

ルチアーノのフードを見事に貫通した。





存分に屋台を楽しんで部屋に戻ると、まずは冷えた身体を温めようということになり――

当然のごとく、ロクシーがアンジュを連れて部屋付き露天風呂に入った。


ルチアーノは、リビングに新たに設えられた和室の炬燵でぬくぬくしている。


一方のルシアンは、部屋の隅にポツンと突っ立っていた。


「おい、ルシアン! 熱燗でも飲んで、風呂まで時間潰ししようぜ!」

ルチアーノが声をかけても、反応がない。


やがてルチアーノは炬燵に首まで潜り込み、

「ハイハイハイ❤️ 元旦の屋台の想い出に浸ってるのね……ラブ❤️」

と呟きながらお猪口を傾けた――その瞬間、目の前にルシアンが瞬間移動して来た。


「うわぁーっ!! 情緒不安定か、お前は!」


驚くルチアーノの前で、ルシアンは胸元に手をやり、絞り出すように語り出す。


「アンジュさまが……あんず飴を八個も食されて……。

お止めしたら、戦隊ヒーローの模様の綿菓子を五個もお買いになって……!

何とか奪い取ったものの、リンゴ飴を食べられてしまって……!

そうしたら『もう、お腹いっぱいだ。ルシアン食べてみろ』と仰られて……!

私は……アンジュさまの食べかけのリンゴ飴を完食してしまった……!

いま、神に懺悔の祈りを捧げているのだ……!」


沈黙。


そしてルチアーノは、真顔で言った。


「……馬鹿なの?」





それから、ロクシーとアンジュと入れ替わりに、ルシアンとルチアーノが部屋付き露天風呂へ向かった。


ルチアーノはほろ酔いで、湯に潜って一人息止めチャレンジを始めるなど、完全に自由行動である。


小川のせせらぎ。

檜の注ぎ口から継ぎ足される湯の音。


ルシアンは、湯の表面を伝うその音の大きさに耳を澄ませながら、夕焼けに照らされる竹林を見た。


――その時だった。


遠く東京の空に、ひと筋の光。

小さい。だが、確かに雷が落ちたのが見えた。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

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