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【完結】地上でいちばん可愛い正月旅行 〜天使と悪魔も福来たる、温泉・TOKYO・バタフライ〜  作者: 久茉莉himari


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11/11

【11】東京タワーの下、バタフライで恋を泳ぐ天使。〜白銀の笑顔は、きみからの祝福〜

それから四人は、場所を銀座へと移し、思い思いに買い物を楽しんだ。


ロクシーはイレイナから預かったブラックカードを手に、IT関連ショップを次々と巡り歩き、最新機器の前から離れようとしない。

ルチアーノは香水専門店で、一本一本のボトルを真剣な眼差しで吟味していた。


一方、アンジュとルシアンは特に欲しい物もなく、ただ並んで歩くだけ。

それでも――その時間は、奇跡のように穏やかで、楽しかった。


そんな中、アンジュが小さな雑貨店の前で「あっ!」と声を上げる。

ショーケースの中に、蹄鉄の形をしたホースシューリングが並んでいたのだ。


「ルシアン! まるで昨日のユニコーンを思い出すな!」


アンジュの言葉に、ルシアンは一瞬息を呑んだ。

何か言えば、涙が零れてしまいそうで――ただ、静かにその場に立ち尽くす。


アンジュは目を輝かせながら店主に尋ねる。

「この指輪、嵌めてみても良いか?」


「どうぞ。」

店主が微笑んで頷くと、アンジュは真剣な眼差しで、小さなリングを一つひとつ選び始めた。


夕陽が店内を照らし、ガラス越しに差し込むオレンジ色の光が、アンジュの金髪をやわらかく染め上げる。

その横顔はあどけなく、そして神聖なほど美しかった。


ルシアンはそっと棚に手を伸ばし、一つの指輪を取った。

それは少しくすんだ銀の指輪――だが、磨けばきっと輝く。


ごくごく微かな――肉眼では見分けられぬほどの金の糸が、

銀の地金の奥で眠っていた。

天界の工房で生まれた品に稀に混ざる“恩寵の残滓”。

もちろん、アンジュは気付かない。

そして、ルシアン本人でさえも。


「……アンジュさま。」


「どうした?」


「この指輪がお似合いかと。」


そう言ってルシアンは跪き、白く細いアンジュの中指に静かに嵌める。

「失礼いたします。」


アンジュは満足げに笑い、

「うむ! ご苦労!」と、いつものように無邪気に言った。


アンジュにとっては、部下がした何気ない行為。

しかしルシアンにとっては――その笑顔を見られるだけで、至上の喜びだった。





それから四人はホテルへとチェックインした。

部屋は東京の夜景を一望できるスイートルーム。

窓の外には、赤く光り輝く塔――東京タワーがそびえていた。


ロクシーは両手いっぱいの紙袋をベッドサイドに並べ、満足げにベッドへ倒れ込む。


「はぁ〜……幸せ! イレイナのカードで買った買った〜♪」


そう言って笑ったその時――

突然、窓際に立っていたアンジュが目を細め、叫んだ。


「眩しい!」


――その瞬間だった。


夜の街が、ふっと“静まった”。

風の音さえ消え、東京タワーの灯りが一瞬だけ揺らぐ。

まるで世界が息を潜めたかのように。


ロクシーがギョッとして上体を起こす。


だが、アンジュはそのまま部屋を飛び出して行った。





数分後、ロビーに集まったロクシー・ルチアーノ・ルシアン。


「ルシアン、あんた“光”を見た?」

ロクシーが真剣な表情で問う。


「見ていない。」

ルシアンの冷徹なまでに静かな声。


ルチアーノが焦ったように身を乗り出す。

「えっ!? 大天使のルシアンでも見えない光を、アンジュちゃんが見たって!? 何かあったんじゃないのか!?」


ロクシーの瞳が鋭く光る。

「ルシアン。あんた、大天使の恩寵でアンジュちゃんの居場所を追える?」


ルシアンが一瞬目を閉じ、祈るように集中した。

そして、低く答える。


「アンジュさまは……東京タワーという建造物に向かって走っていらっしゃる。

だが、それが目的地かは分からない。」


ロクシーが即座に立ち上がる。

「それだけ分かれば十分! リムジン出して!」


その声がロビーに響き渡った。





リムジンが走り出して五秒も経たないうちに、

赤い鉄塔の真下――東京タワーへと到着した。


空気の層がひとつ、静かに切り替わる。

冷たい冬の夜気の中で、

淡い金の“光の粒”がひとすじだけ落ちていた。


光はゆるやかに形を成し、

ひとりの男が、まるで“最初からそこに在った”かのように立っていた。


夜風が吹き抜ける中、アンジュはひとりの男と向き合っていた。

背の高い、逞しい体。長い金髪が風に揺れ、金色の瞳がやわらかく光を放っている。


ルチアーノがその姿を見た瞬間、リムジンの床に崩れ落ちた。

「……ルチアーノ!? どうしたのよ!」

ロクシーが慌てて声をかける。


だが彼は、頭を抱えたまま震えている。


「お、俺様は……終わった……!」


「はぁ!? 何言ってんのよ!」


ロクシーは苛立ち混じりに舌打ちして車を飛び降りた。

真冬の風が吹き抜け、視界に映ったその男の顔を見た瞬間――言葉を失う。


金髪。金の瞳。

そして、神々しさと包容力を併せ持つ、完璧な微笑み。


ロクシーは慌てて車に戻り、パソコンを開いて爆速でキーボードを叩き始めた。

「あんな超絶イケメンがアンジュちゃんと東京タワーで待ち合わせ!? どこのどいつよっ!?」


その騒ぎの中、ルシアンがふらりと車を降りる。

――見間違うはずがない。


あの男は――大天使ミカエルさま。


地上に降りるはずのない、天界の戦士。

それが今、東京タワーの光の下にいる。


「ミカエル兄上! サプライズ好きとは知らなかったぞ!」


拗ねたように言うアンジュに、ミカエルは微笑んだ。

その笑みは冬の夜を照らす光そのもの。


「やあ、ガブリエル……いや、今は“アンジュ”と呼ぶべきかな。

まだ私を“兄上”と呼んでくれるのかい?

ハッピーニューイヤー。……寒いだろう。」


そう言って、ミカエルはふわりと金色のマフラーをアンジュの首に掛けた。


「あったか〜い❤️ 流石、ミカエル兄上!」


アンジュの指には、先ほどルシアンが贈った銀の指輪が鈍く光っている。

その姿を見つめながら、ルシアンは息を呑んだ。


――なんと、お似合いなのか。

双璧をなす大天使。

私など……。


その瞬間、アンジュが首を傾げた。

「今、ドボンって音がしなかったか?」


ミカエルが微笑みながら応える。

「牛だろ?」


……いや、それは違う。

その音は――

ルシアンが東京タワー近くを流れる『古川』に"自分で"落ちた音。


冷たい川面に広がる波紋。

ルシアンは胸に手を当て、まるで自らの心を冷やすように、完璧なフォームでバタフライを泳いでいた。






そして、ミカエルは数分もしないうちに、天界へと消え去った。


リムジンに気付いたアンジュが、ロクシーとルチアーノのもとへ駆け寄ってくる。


「アンジュちゃん! あいつ誰よ!?」

ロクシーが叫ぶ。


アンジュはきょとんとして答えた。

「兄上だ! サプライズに来てくれたらしい!」


「お、お兄さん……!? でも公式には……」

そこで、ハッとロクシーが口を閉ざす。


――これは、公式には言えない関係の“兄”という存在!

女子友として口出ししちゃダメなやつ……!!――


「な〜んだ、そっか! あんまりイケメンだからビックリしちゃって♪」


ルチアーノが涙目でアンジュを見上げた。

「あ、兄上……!? でも、あれは……!!」


今度はルチアーノがハッと口を閉ざす。


――これは……アンジュちゃんの守護天使が大天使ミカエルなのかもしれん!!

イレイナが何も言ってこないのがその証……!!

イレイナですら、守護天使ミカエルには何もできんのだ……ッ!!――


「そ、そっか〜! ちょっと宗教画でよく似た人を知っててビックリしちゃって♪」


そして三人は顔を見合わせる。


「ルシアンはどこ?」





翌朝。早朝。


ルシアンは古川では飽き足らず、荒川に移動し、バタフライで泳ぎ続けていた。

もうすぐ東京湾――。


そこに、白い豪華なボートが近付いてくる。


アンジュが船から身を乗り出した。

「アンジュさま!?」


立ち泳ぎしているルシアンに、アンジュがにっこり笑う。


「気が済んだか? ルシアンよ! お前の気持ちも分かるぞ!」


「わ、私の気持ち……!? ……で、ございますか!?」


「そうだ!

お前は日本を知り尽くしたくて、江戸時代から続く荒川から東京湾へと泳いで学びたかったのだろう?」


海風に金色の髪を揺らしながら、アンジュはルシアンの贈った指輪を指に光らせていた。


「……大天使ミカエルさまは……?」


「ミカエルなら、もう帰った!

サプライズというものを学んだらしい!

戦士の休息というやつだな!」


ルシアンが――ぶくぶくと沈んでいった。


ルチアーノとロクシーが同時に叫ぶ。


「おい! ルシアン! 早く上がって来い!」


「つか、なんでまた潜るのよ!?」





そして、その日は四人でスキーに行った。


ロクシーは華麗にスノーボードで滑り降り、

ルチアーノはヨタヨタと上級者コースを横切り、ブーイングを浴びた。


アンジュは――

「ルシアン! なぜこの板はこんなにも滑るのだ!?」


「アンジュさま! こちらをご覧にならないで下さい!

前を見て、階段を踏みしめるように!!」


地上1メートルの上で、スキー板と格闘している。


アンジュが頬を真っ赤にして踏ん張り、次の瞬間――

滑り落ちるのをルシアンが支えた。


舞い上がる粉雪。


アンジュが笑う。


その瞬間、世界がふっと静まった気がした。

雪が光を弾いて、二人のまわりだけ別の景色のように白く輝く。


ルシアンの視線がアンジュに吸い寄せられ――

アンジュもまた、まっすぐルシアンを見返した。


ほんの一秒の見つめ合い。

けれど、その一秒は永遠のようにやさしかった。


――そしてルシアンも。

白銀の中、アンジュと二人、笑い合った。


〜fin〜

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

これにて完結です!

最後まで読んで頂きありがとうございましたm(_ _)m

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