表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地上でいちばん可愛い正月旅行 〜天使と悪魔も福来たる、温泉・TOKYO・バタフライ〜  作者: 久茉莉himari


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/5

【1】日本視察、理にかなっております。〜天使と悪魔のお正月ミッション〜

クリスマスが終わり、世界は平常に戻った。

――はずだった。


大天使ガブリエルに下された、神の新たな使命。

それは「日本の正月を理解せよ」。


恩寵を消されて地上に降りたガブリエルと、

護衛として同行する大天使ルシアン。

そこへ、ある目的を持った悪魔と人間が合流し――

一行は、日本でお正月旅行をすることになる。


温泉、TOKYO、年越し蕎麦に露天風呂。

ふわモコの部屋着で笑って騒ぐ、

天使と悪魔と人間たち。


これは、世界を救う物語ではない。

恋を知らない大天使が、

“知らなくてよかったはずの感情”に触れてしまう、

少し可笑しくて、少し切ないお正月の始まり。

クリスマスが過ぎ、静寂に包まれた天界。

その中心で、大天使ガブリエルは今日も聖務に勤しんでいた。


「うーん! 絶好調! 流石は私、大天使ガブリエル♪」


満足げに書類を閉じた瞬間、

眩い光に包み込まれ、次の瞬間――

ガブリエルは神の玉座の前に跪いていた。


神は、無窮の光の中から穏やかに仰る。


「日本の正月を理解せよ。彼の地は神道なり。

その為、そなたの恩寵は消す。」


「御意。」


ガブリエルは大天使として、即座に恭順の意を示した。

だが――その心の中では、静かに悲鳴を上げていた。


なぜ!? なぜ日本!?

“正月を理解する”!?

恩寵を封じる必要性ッ!!

何をどうすればいいのーーー!?


しかし、大天使として神に問い返すなど論外。

ガブリエルは完璧な姿勢を崩さぬまま、心の中で混乱を押し殺す。


神の御言葉は、さらに続いた。


「だが、恩寵を消したそなたを地上に降ろすのは忍びない。

大天使ルシアンよ。ガブリエルの警護の為に、お前の恩寵は残す。

ルシアン、良き働きをせよ。」


ガブリエルが顔を上げると、

そこにはいつの間にか跪いているルシアンの姿があった。


その瞳は、いつも通り理知的で――そして、どこか誇らしげに輝いている。


「ハイ! お任せ下さい! 理にかなっております!」


神の光が一層まばゆく輝いた。


ガブリエルは――目に見えぬほどの速さで、

ほんの一瞬、心の中で叫んだ。


ど・こ・がーーーッ!?





それから一秒後――。

ガブリエルは否応なしに、ハリウッドの自らの器“アンジュ”の分身と同化していた。


眩い光が収まると、目の前に現れたのはロクシー。

彼女はテーブルいっぱいにネイルの瓶をずらりと並べ、楽しげに声を弾ませていた。


「新年はどれにしよっか〜! あ! 色違いのお揃いとか良いよね♪

私、ネイル塗るの得意なの!」


アンジュが、ため息混じりに答える。


「実は仕事の関係で、正月は日本で過ごさねばならなくなったのだ……」


「日本!?」

ロクシーの目が一瞬で輝く。


「うわ、良いじゃん❤️ 女子二人旅しようよ❤️」


「本当か!? ロクシー、頼む!」


「うん、旅行の計画は私に任せて!」


アンジュが心底安心したように微笑む。

――ロクシーの瞳が、さりげなく“ドル”の記号に輝いていることにも気づかぬまま。


ロクシーは、「旅行の手筈が整ったら連絡するね」と言い残して自宅に戻った。


その足で――イレイナ専用回線のスマホを取り出し、素早く発信する。


電話口から、イレイナの不機嫌そうな声が響いた。


「何よ? 新年の慈善パーティーのはしごの準備で忙しいんだけど!」


ロクシーは怯まない。むしろ、狙い澄ましたような笑みを浮かべていた。


「イレイナ……日本の観光事業に乗り出すって言ってたじゃん?

アンジュちゃんがお正月を日本で過ごすんだって。」


一瞬の沈黙。

そして次の瞬間、受話器の向こうでイレイナが叫んだ。


「アンジュの日本旅行!?

それよ、それなのよ!!

広告代理店への最大のスポンサー獲得チャンスじゃないの!!

良いわ! 私が企画を立てる! 旅行代金も私が支払う!

ロクシー、あんたは分析係としてアンジュと同行して!

契約金は――10万ドル! どう!?」


ロクシーの口角がゆっくりと上がる。


「ハイハイ、契約成立〜!」


通話を切ると同時に、彼女は満面の笑みで呟いた。


「イレイナって……意外とチョロいんだよね……」


そして――

新たなる“神のふんわり使命”により、

天と地をまたにかけた“日本お正月ミッション”が、静かに幕を開けた。





ヴェネツィアの夜。

ルシアンは“器”の人間のクローゼットの前に立っていた。


今までは所詮“器の服”であり、柄on柄のスーツに違和感など感じたことは一度もない。

だが――ガブリエルとの日本旅行が決まったその瞬間、胸の奥が微かに疼いた。


アンジュさまに相応しい“装い”をしたい。

そう思ったのは、大天使となって数百年、初めてのことだった。


慎重に選び抜いたのは、グレンチェックの三つ揃えスーツに濃いグレーのコート。

そして茶色のマフラーを首に巻いたその時――


「ルシアン……!! カッコいい!!」


甲高い歓声が背後から響いた。

ルチアーノが、目をキラキラさせて立っていた。


「いつもの柄on柄の狂気のセンスも大好きだが……!!

 お前、ヤバいぞ!?」


――ヤバい? 意味が分からない。

だが、悪い響きではない。


無言のまま見返すルシアンに、ルチアーノは顔を真っ赤にして喋り出す。


「水晶玉でイレイナの歓喜の叫びを聞いてしまったぞ!

 地獄に響き渡るほどの大音量でな!

 何と――アンジュちゃんの日本旅行だと!? お前も行くんだろ!?」


ルシアンは静かに答える。

「ああ。アンジュさまの警護をする」


「だよな!」

ルチアーノが力強く頷く。


「だがな、お前は大天使! 日本の知識は不完全じゃないか!?

俺様はジャパン通だぞ! 伊豆の温泉には毎シーズン行ってるんだ!

一緒に行ってやろうか!?」


ルシアンはわずかに間をおき、真顔で言った。


「なるほど。理にかなってるな」


その一言に、ルチアーノは感極まって拳を突き上げた。

全身でガッツポーズを決めながら、満面の笑みを浮かべる。


「決まりだな! 俺様の完璧なガイドで――

TOKYOラブストリー☆初恋成就、開幕だ!!」


悪魔の王の恋愛脳は、すでに日本の空を覆い尽くす勢いだった。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆

Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪


〈ルシアンとガブリエルをもっと知りたいあなたに…〉


【完結】大天使と“ズッ友”になりたい地獄の王。 〜柄物スーツに一目惚れしてから、すべてが始まった件〜


https://ncode.syosetu.com/n5195lb/


【完結】大天使ガブリエル、地上に爆誕!〜神の命がふんわりすぎて、祈ろうとしたら迷子になりました〜


https://ncode.syosetu.com/n2322lc/


【完結】大天使たち、日本昔話に異世界転生する。〜初恋成就作戦を決行するポンコツ地獄の王に振り回されています〜


https://ncode.syosetu.com/n7024ld/


【完結】大天使ルシアン、最強捜査官になる〜神の沈黙と愛の証明〜


https://ncode.syosetu.com/n5966lg/


【完結】大天使と最強捜査官のクリスマス戦線 〜セレニスに集う者たち、愛か使命か〜


https://ncode.syosetu.com/n9868lk/


【完結】大天使と最強捜査官のクリスマス戦線〜聖夜の余白の物語〜


https://ncode.syosetu.com/n9097lm/


を読んで頂けるともっと楽しめます(^^)


こちら単体でも大丈夫です☆



\外伝の元ネタはこちら✨/


『最強捜査官』本編 → https://ncode.syosetu.com/n2892lb/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ