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第5話 氷の壁

 僕が一瞬はぐれてしまった反省を生かして、調査隊は一塊になって移動していた。ほぼ目の前が見えない中、それでも進み続けた。


 幸いなことに、しばらくはぐれることはなかった。


 そうして、ある程度進んだころ、希望が見えた。


「雪が……弱くなってきた?」


 あれほど猛威を奮っていた雪が、ようやく尽きたかのように収まってきた。


「やっぱり、村の外に行けば行くほど寒くなくなる……?」


 その疑問は、進むほど確信に変わっていった。雪は完全に収まり、雲一つさえも見当たらなかった。


 皆が歓喜に震える中、ふと、何かが見えた。


 ──キラリと光を反射させる『それ』は、まるで希望が具現化したかのように美しく、透明で、純粋なそれは……。




────大きすぎる、氷の壁だった。




「……なん、だ、これ……」


 ふと、誰かの声が漏れた。そして、皆同じ気持ちだった。


 あまりも大きな氷の壁は、首を真上に向けてもその先が見えないほど高く、その異様さを誇っていた。


 希望だったはずの、綺麗な光が、氷の壁という、絶望になった瞬間だった。


 遠くからでもわかるその大きさは、壊す、登るという発想をことごとく打ち砕き、理想を現実で上塗りした。


「っ、皆、もうちょっと壁に近づくぞ。なにかわかるかもしれない」


 そのかけ声で、止まっていた足が動き出す。先ほどとは違って、だんだんと、遅くなっているように見えた。


 壁周辺だけは雪が降っていなかったのか、大地は白に染まっていない。壁周辺だけに雪が降らないのを見て、やはり異常だと感じる。


 振り返ると、線が引かれたように雪が積もっている場所と積もっていない場所がわかれている。通常の自然現象ではありえない話だ。心の中で少しは考えた、異常気象という考えが否定され、他の思考を余儀なくされる。


 たしかに、天候を操るようなものすごい効果を持った道具があるというのは聞いたことがある。だが、たとえそんな道具だとして、あれほど大きな壁を作れるという話は聞いたことがないし、夏を冬にすることなど、できるはずもない。なんなら、冬よりも寒いというのに。


 そして、急に皆が止まったのに気づき、僕も急いで足を止める。




────目の前に、調査隊の全員が映っていた。


 透明な氷は、そのまま鏡の役割を果たして、調査隊の皆を映し出している。もちろん、僕の姿も。


 思わずその美しさに見惚れるが、これが絶望の壁だという考えがその思いを停止させた。


 その時だった。


「あっ……」


 誰かの帽子が風で吹き飛ばされ、壁へと向かう。


 そして、その帽子が壁に触れた瞬間──。






────壁は、それを拒絶した。



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― 新着の感想 ―
最後のところで改行を何行か挟むことで主人公達の絶望感というか衝撃の大きさが上手く表現されていて良い
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