第2話 絶望の始点
──早朝、夏なのに肌寒いと感じながら、目を開けて、僕は気づいた。
「寒い……いや、寒すぎる」
ふと窓を見ると、白い粉が降っていた。
「ぇ……?」
余りの衝撃に、脳の認識が追いつかなかった。それは、間違いなく『雪』だった。
「夏なのに、なんで…!?」
夏というのならば、本来暑い時期のはずだ。だというのに、感じる肌寒さが到底夏ではないと証明していた。
そして、地面に降り積もる雪。震える手が、雪を捉えた目が、それを処理する脳。それらすべてが、これは『異常』だと叫んでいた。
「そうだ、皆は……」
村の皆のことが気になって、家を出ようとドアを開けた。その瞬間、冷気が一気に吹き込んできた。
「さ、寒すぎる……! 氷に触れてるみたいだ」
その冷たさは、空気すべてが氷のように冷たく、息を吸えば肺が痛くなり、体の芯まで冷たくなるのがわかる。
ドアの一歩先には、純白の雪が積もっていた。雪を踏みしめ、足裏に伝わる冷たさを感じながら、皆の家があるほうへと歩いていく。
少し歩いていくと、皆が集まっているのが見えた。
「おーい、みんなー!」
僕の呼びかけに気づき、皆がこちらを見る。
「おお、おはよぅ」
その言葉を発したのは、体が大きく、筋肉質の男性だ。言葉の最後が少し変なのは、皆もう慣れている。
「それで、これはどういうこと?」
「俺たちもさっぱりでなぁ。原因を探しているところだぁ」
原因がわからない以上、それを解決する方法もわからない。とにかく、調べるしかないようだ。
「村の外も寒いのか調べたいんだ。万が一この寒さがずっと続くなら、村の外に出ることも考えないといけないし……」
「俺たちも同じ考えだぁ。だから、今出発の準備をしているところだぁ」
それなら話は早い。準備が整い次第、すぐに出発したいところだ。
「……お前も来るのかぁ?」
男は眼を鋭くして、僕に問いかける。
「もちろん」
村が異常に覆われているんだ。なにもしないわけにはいかない。だから、その眼の圧力にも耐えることができた。
ところで、その男は無意味に人を脅かすような人ではない。なにか、理由があったはずだ。
「……なにか、あるの?」
男はそっと視線を北の方角へ向けて言った。
「なにか、嫌な予感がするんだぁ。とてつもないなにかが、あるようなぁ……」
それが、絶望の、始点となった。




