一話 仲直りのテディベア
「お母さんなんて知らない!!」
そう言って家を飛び出したのは何時だっただろうか、段々と空が紅く染まっていき、今にも涙が溢れそうな目をしながらクマのぬいぐるみを抱えて歩く少女が1人
幼い少女「奈々」はお気に入りの兎のぬいぐるみがあった、だが、その余りにボロボロな姿を哀れんだ母親が手作りのクマのぬいぐるみと入れ替え、元のぬいぐるみを捨ててしまったのだ。
「お母さんのバカ…らびちゃんを捨てちゃうなんて…
この子なんて要らない。
お母さんがらびちゃんを捨てた見たいに、
私もこの子捨てるもん!」
「この子なんて要らない!!!」
その時だった、スゥーっと風が通り抜ける感覚に顔を上げれば…そこは知らない街だった、
「わぁ…あにめの世界みたい…」
幼いせいか知らぬ土地の恐怖心より好奇心が勝ったようで、周りの見渡し歩いて行く。
「このお店、きれぃ…」
ディスプレイに並ぶ少し独特な品々、
骨董品、雑貨が丁寧に陳列しているすぐ横の扉を
恐る恐る開く…
〈あら!可愛いお客さんだこと!魔女の店に急に押し入ってくるって事は…食べちゃってもいいのよね?〉
「ひえっ…た、食べないで…!」
まるで森のように色んなもの積み上がり、洞窟のようになった部屋の奥から不気味な声がする、
バサバサバサ!
〈ヒヒッ冗談ダヨ!オイデ!ココニ来タッテ事は…
主ニ用ガアルンダロウ?〉
何と出てきたのは流暢に人語を話すカラフルなオウム
〈サア、オイデ!〉
「う、うん…」
戸惑いながらもついていく
『あら、チャティ。お客さん?』
大きな魔女ハット、沢山のジャラジャラとした装飾のついたローブ、緩く編まれたミルクティー色の髪、
そしておよそ小学3年生ほどの身長。
『小さなお客様、一体何が要らないの?』
「あっ、えっと…こ、これ、」
ぬいぐるみを控えめに差し出す奈々
『うん…上等な思いが詰まってる、
本当にいいんだね
これ、私が捨てちゃっても』
「っ…いい!いいもん!お母さんなんて…!」
『…ん、しっかり見ててね』
魔女は近くにあった大きなポットの様なものにぬいぐるみを入れた
カランコロン
ポットの出口からまるで飴玉の様なものがおちる
『はい、思いの抽出完了。持ってみる?』
手渡しされたぬいぐるみを持つと、何だか先ほどまであった温かさが完全になくなってしまった気がした。
ポロ ポロ
涙が落ちる、何故か、何となく悲しいのだ
『ねえ、もしかしなくてもこれって、キミのだよね』
手渡されたのは、捨てられたはずの兎のぬいぐるみ。
『本当はこれ、売り物なんだけど、キミのなら返すよ。』
『思いも、二つのぬいぐるみも、返してあげる。』
「……ありがとう、ごめんなさい。」
『それはお母さんに行ってあげて、あとこちらこそごめんね。抽出した思いは、戻せないの。』
「っ…本当にありがとうございます!」
そう言った頃には、私は家の前にいた。
手に握られた思いは、冷たくなったぬいぐるみの分、暖かかった。
〈ネエ、ヨカッタノカイ?
アレクライノ愛情ノ思イガアレバ、2週間ハ飢エル事無イト思ウヨ?〉
『別に、いいのよ。喜の思いがなくても、今の所負の思いが沢山あるから飢えることはないわ』
〈デモ…商品マデ…〉
『いいって言ってるでしょう…』