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霊能少女は血みどろの召喚士を騙る

「ところで、勇者様はどの様な世界からいらっしゃったのでしょうか」


森の中に足音がサクサクとこだまする。足音は一人分だが、二人の人間らしき姿がそこにはあった。


「うーん、科学が発展していてすごく便利でしたよ。この木より高い建物もあったし、電気っていうものがあって…」



メイエンは全力で会話していた。


この自称勇者から少しでも多くの「設定」を引き出すためである。どうやら、自分の名前を含め生前の記憶はかなり失っている様だった。当然、悪霊になってからのことは何一つ覚えていないようだ。



「なるほど。随分とこちらとは違う世界の様ですね。こちらでは勇者様がいうところのカガクというものは知られていない様に思います。」


「うんうん、やっぱり剣と魔法のファンタジー世界なんですね!いいなぁ。僕も魔法を使えるようになるかなぁ…」


霊能術のカタマリみたいな存在が魔法に憧れるとはこれいかに。魔法なんて使わなくても大概のことができそうな気がする。


「そうですね、可能だと思います。ちなみに勇者様は”魔法”とおっしゃっていますが、この世界では”魔術”と呼ばれているものがそれに近いと思います。」



悪霊がいうところの「ふぁんたじー」という力には、魔術と霊能術が当てはまりそうだ。



魔術はこの悪霊のイメージしている”魔法”にかなり近い。


3000年ほど前に発見されたとされる技術で、現代では生活のためにほぼ全ての人が使用している他、専門の戦闘職である魔術師が使用する。


火や水といった自然現象を魔法陣によって操作する他、魔物と呼ばれる獣は特定の魔術を使うことがある。スズオオカミは炎の魔術を使う魔物だ。



「それじゃ、霊能術ってどんなのですか?」



霊能術は主に軍事技術だ。


封印や結界、遠距離通信といった、現実を改変する力を持っている。魔術と違い、特別な才能を持った人間だけが使用できる。


わたしも霊能術師として活躍しているが…これは言えない。なぜならわたしは「勇者様を呼び寄せた”召喚士”だからだ。」



「なるほど。霊能術は陰陽道みたいなやつなのかな。和風ファンタジーだなぁ。」


わふうふぁんたじーとはなんなのか。


「じゃあ召喚術は?」


ついに来た。


いや、わたしが聞きたいよそれは。なんだよ「勇者を呼び寄せる」って。拉致じゃん。犯罪じゃん。外道の術じゃん。


「え、えっと。そうですね。勇者様もご存知の通り、あなたを呼び寄せたのが召喚術ですね!」


「はい!それは知ってます。でも例えば、戦闘の時とかってどうするのかなって。あの紫色の狼を倒したのも召喚術なんですよね?」


狼倒したの、お前だから!あんなこと人間にできる訳ないから!!!


大前提としてわたしは召喚士ではない。しかし召喚士として名乗ってしまった以上、矛盾のない設定を話さなければならない。


異世界から人間、しかも超強い勇者を呼び寄せる?そんな化け物じみたことができる時点で勇者いらないだろ!と思いつつ、納得してもらえる説明を考える。


ポイントは、わたしが霊能術で再現できる必要がある、ということだ。



「そ、そうですね…やはり召喚士の名の通り、あらゆるものを呼び寄せて戦います。」


「すごい!何を呼ぶんですか?」


「…その、わたしは雷ですとか、麻痺の効果のある霧を呼ぶのが得意ですね」


霊能術で出せる。これなら見せろと言われても誤魔化せる。


「生き物じゃないんですね。ちょっと意外かも…」


「…っ!!し、式神!式神という生き物を呼ぶことも得意ですね!メインはこちらでした!」


「なるほど!それは召喚っぽいですね。でも、さっきの”霊能術師”の話を聞いた後だと、なんだか式神って霊能術師さんの方が使いそうなイメージもありますね。」


「…は、はは。勇者様の世界のイメージ的にはそうなのでしょうか!私は霊能術は才能がなくて…もう生まれた時から召喚士一本!まごうことなき召喚士ですよ!」


「なるほど…異世界から勇者を呼び出すくらいですもんね。国でも最高峰なんだろうな…すごい。」


ええ、最高峰ですよ…最高峰の霊能術師です…


「ちなみに、スズオオカミは心の臓付近に式神を召喚することで殺しました」


「ええええっ?!あれそんな攻撃だったんですか?!召喚士ってそういう感じなんです?!」


な、なんで…?異次元から生き物を呼び寄せられるのに、相手の体内に出現させるような使い方しないの?


「じゃ、じゃあ召喚士さんが魔物の体内に召喚した式神さんってどうなるんでしょうか…」


なぜそのような表情を...??


先ほどは何か間違えたみたいだ。次こそは召喚士のイメージを崩さず、かつ現実的な説明をしないと。


この世界に疑問を持たれては、記憶が戻ってしまうかもしれない。


「えっと…そうですね。もちろんそこで式神は絶命します。ただ、強い敵には耐性があって体内に召喚はできないんですよー!いやあ、もうお見せすることはできないかもしれないですね!」


「ぜ、絶命…式神さん…」



メイエンはあくまで魔術と霊能術の世界で生きている。そんな彼女の合理性は、「ふぁんたじー」の設定を創作する上では非常に相性が悪かった。


こうして、「自爆召喚によって相手の内臓を破壊する」召喚士という、えげつない戦いをメイン戦法とする女として最凶の悪霊からは恐れられることになったが、彼女がその事実を知ることはなかった。

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