セキュリティ強化計画
祖母と孫の2人暮らしのお宅に往診で訪れている俺はお婆さんのリハビリに対する意欲と何より回復力に驚いていた。さすがに長距離の歩行は付く必要があるが、このお婆さんの部屋の中ならもう十分1人で歩くことができる。
最近まで俺がお婆さんにリハビリをするのを見守っていた孫のユーリ君は近くのパン屋で雇ってもらい、今は働きに出ている。
そして俺はお婆さんの状態を見て1つの判断をする。
「あの、ここまで歩行の状態が回復していますので明日からはもう少し距離を伸ばすメニューに移行しましょう」
「はい、ありがとうございます」
「それじゃあ、そろそろ診療所に戻るのでこれで失礼します」
そう言って俺はこの家をあとにし、まず詰所に戻ってアレフさんの作成した紹介状を受け取りに行った。
往診に同行してくれた兵士の人が一緒なのですんなり詰所に入り、アレフさんのいる執務室へと向かい、兵士の人が扉を開け、部屋に入るとアレフさんが俺に声をかける。
「ミヤシタ殿、これが紹介状だ。失くさぬよう気をつけるのだぞ」
「ありがとうございます、これで俺もボッズの街に行けるんですね」
「うむ」
アレフさんの言葉を聞いて、俺は詰所から診療所に戻る。ミミが留守番をしているから大丈夫だとは思うが心配だな。
とりあえず外観から荒らされた様子は見られないな。扉の鍵が壊されてもいない。
それでも俺は恐る恐る扉を開け診察室へと向かうとそこにはミミがいた。
思わず、俺はミミに駆け寄りミミの手を握って大声で声をかける。
「ミミ!無事か!ケガはないか⁉」
「ユ、ユーイチ様……、わ、私は大丈夫です……、っていうか近いですよ……、いきなりそう来られたら恥ずかしいです……」
「ああ、悪い……」
ミミが照れている顔をしていたので、俺はそのまま手を離した。あぶねえーーー、これでミミが俺との活動辞めますって言いだしたら、もう俺診療所どころじゃないぞ。
とにかく話題を変えないと、っていうか大事な話だし、ミミにもしておかないとな。
「そ、そうだミミ、実は今日アレフさんからこれをもらったんだ」
「これはボッズの街に入る為の紹介状?確かボッズって傭兵ギルドで有名な……まさか!」
「そうだ、そこで傭兵を雇う事を勧められた。今日は計算が終わった診療報酬ももらったし、相場は相談しないとだが傭兵も雇えそうだ」
アレフさんの紹介状のおかげで少しづつだがなんとか、診療所セキュリティ強化計画は進んでいる。さあ、まずは午後の診察を終えないとな。




