出会い頭に告白
「好き…なんですけど」
思わずこぼれた言葉に自分でも驚いて慌てて片手で口を塞いだけど、一度飛び出した言葉は戻る訳もなく。
うわ、やらかした。
言うつもりじゃなかったのに。
あ、でも、あんまり大きい声じゃなかったし、聞こえてなかったかもっ!
先輩、背高いし、わたしはちびっ子だし。
なんて微かな希望も、茶色がかった切れ長の綺麗な目が見開かれる様子にあっさり潰える。
ああ、終わった。
終わってしまった。
ひっそりと遠くから姿を見ているだけで大満足だった片思い(…というより、ただのファン心理)も、出会い頭に目が合ったパニックで突発的に口から飛び出た告白によって、強制終了することになった。
顔は熱いのに背中は妙に冷えていて、手足はブルブル震えている。もう、自分の顔が今何色になっているのかもわからない。
何か誤魔化すような気の利いた冗談とか…元々要領も悪く、普段思っている事さえ上手く言葉にできないわたしが思いつく訳もなく。
そう、普段あがり症で口下手なくせに。
ナンデ コウナッタ。
「 」
恥ずかしくて消えてしまいたくて、ギュッと両目をつぶって俯いた頭上から、少し掠れた柔らかな声が聞こえた。ような気がしたけど夢かもしれない。
だって、そんなのありえないもん。
恐る恐る顔を上げると、楽しそうに細められた瞳がこちらを見ていた。
ああ、やっぱりかっこいい。
「…あれ。聞こえなかった?いいよ、って言ったんだけど。付き合う?」
よく小説なんかで恥ずか死ぬとか言うけれど、たった今恥ずか死んだのかもしれない、わたし。