79.祭りと錬金術
本日よりとなりのヤングジャンプ様にて新連載開始です!
『十三番目の転生者~俺だけ見捨てた女神をぶっ飛ばす!~』
となジャン
https://tonarinoyj.jp/episode/316112896809499272
ニコニコ
https://seiga.nicovideo.jp/comic/60285?track=official_trial_l2
ぜひ読んでみてください!
「毎年のことだからわかってると思うが、四風祭はただの商売じゃねぇ! 祭りだ! 利益も大事だが、一番はお客さんに楽しんでもらうことだからな!」
ファスルさんが全員に語り掛ける。
みんな、そんなことわかっていると言いたげに頷く。
ニヤリと笑みを浮かべたファスルさんが、チラッと私に視線を向けた。
「まっ、改めていうことじゃねーが、今回が初参加の奴もいる。いつも以上に張り切っていけよお前ら!」
私のために、と言ってくれている気がして、心が温かくなる。
会議は当日の段取りを決めるところから始まった。
四風祭は街の中心部にある広間を貸し切って行われる。
街への許可はもちろん、他の同業者たちへの対応も必要になってくる。
準備、設営、実行。
工程は変わらないけど、中身の密度が普段と大違いだ。
「当日は同業者も参加する。そっちの手配と調整は、イヴェールに任せる」
「例年通りですね。承りましょう」
イヴェールさんが淡々と返事をした。
各業者への対応は彼の仕事になっているみたいだ。
旅団の人たち以外をまとめるなんて、私からすれば何より大変な役割な気がするけど。
それを簡単に引き受けたり、ファスルさんから毎年任されているのは、きっと相当な信頼をされている証拠なのだと思う。
イヴェールさんのことはあまり知らないけど、いつかちゃんと話をしてみたいな。
ちょっと怖そうだけどね。
「材料やらの手配はリエータ、ヘルフスト、お前らで頼むぜ」
「わかってるよ」
「了解しました。僕は食材関連を手配しますね」
「頼むよ。それ以外は全部あたしのほうでやっておく」
二人はすでに各々の役割を理解している様子だった。
ヘルフストさんの秋風は食品を強く売り出しているし、食材の調達はどの旅団より慣れているのだろう。
リエータさん海を渡って様々な場所を訪れている。
その関係で旅団で一番顔が広く、珍しい品も集められる。
この二人なら適任だ。
と、残るは私たち春風だけになった。
ファスルさんがエアル君に視線を向ける。
「エアル、お前んとこは当日の設営と警備の指揮を頼むぜ。各団員の若い奴ら中心に集めておくから、お前が指示を出して進めるんだ」
「わかりました。先に段取りだけ決めて、終わったらリエータさんたちの手伝い、でいいですよね?」
「おう、それで頼む」
私たちの役目は露店を立てたり、当日の見回りなど現場でのお仕事だ。
春風は他の旅団より若い団員が多い。
体力も溢れているからピッタリだろう。
私は体力も人並みだし、力も全然自信はないけど……。
「ユリアちゃん」
「は、はい!」
突然ファスルさんに名前を呼ばれた。
背筋をピンと伸ばし、ファスルさんと目を合わせる。
「当日は結構人が溢れるんだ。毎年少なからずケガ人とか、体調が悪くなる奴が出てくる。それ用に売り物とは別でポーションを用意してもらえるか?」
「はい。まかせてください」
「助かるぜ。みんな羽目外しまくりだからなぁ。ユリアちゃんがいてくれると安心だ」
そう言ってもらえる喜びを胸に、期待に応えようと思う。
私は錬金術師だ。
力仕事は苦手だけど、そういうところで役に立てる。
頼ってもらえることは光栄だ。
その後は、細かい段取りを決めていく。
みんな慣れた調子で話は進み、すっかり日が暮れた。
会議二日目が終わり、私たちはレストランを出て宿へと戻った。
◇◇◇
「さて、じゃあ当日の露店について考えるか」
「うん!」
「えっと、私たちだけで?」
宿屋の一室に三人で集まっている。
私とエアル君は椅子に座り、レンテちゃんは足をバタバタさせながらベッドに腰を下ろす。
「他のみんなはいいの?」
「ああ。三年くらい前から、四風祭の出し物は俺とレンテで考えていたんだ」
「みんなが私たちの決めたものがやりたい! って言ってくれたんだよ!」
「出し物と言っても、大半は普段やってる露店をそのまま使うだけだからな。俺たちが決めるのは、祭りだからこそできる、普段やらない露店のことだ」
ファスルさんも言っていたけど、四風祭はただの商売ではなく、楽しむためのお祭りだ。
露店もそれに合わせて、お客さんが楽しめるお祭りならではのものが必要になる。
一言で表現するなら、お祭屋台だ。
「去年まではどうしてたの?」
「そうだな。去年までは、その年に一番流行ったものを中心に売り出してたな。基本は各団の特色にあった露店を出すんだ」
四つの団には特徴がある。
例えばリエータさんの夏風は、船で海を渡り港を行き来している。
だから遠い土地の品を集められたり、海の素材は豊富に集まる。
ヘルフストさんの秋風は料理だ。
システィーナさんを始めとして、たくさんの料理人が在籍している。
四風祭でも、秋風の食べ物を目当てに訪れる人も多いらしい。
そして私たち、春風の特徴は豊富な品揃えにある。
各団の中で断トツな品揃えは、ここに来ればそろわない物はないと言えるほど。
夏風や秋風のようにとがった特徴はないけれど、商売としては一番安定している。
「今年は何が流行ったかな~」
「そんなの決まってるよ! ね、お姉ちゃん」
「え、なんだろう」
「ああ、やっぱりそうか。今年一番の変化は……」
二人の視線が私に向けられる。
キョトンとする私に、エアル君がクスリと笑う。
「な、なに?」
「ユリアだよ。今年、一番俺たちにとって大きな……いい変化は」
「間違いないです! お姉ちゃんが入ってくれて、うちの売り上げもぐーんと伸びたんだよ!」
「そ、そうかな? なんだか照れる」
面と向かって、改めて言われると。
赤面する顔を隠すように、私は視線を横に向ける。
「なぁユリア、君ならどうする? 錬金術師として、祭りに参加するなら」
「うーん……そうだね」
錬金術師の私にできること。
祭りと錬金術……。