表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/108

79.祭りと錬金術

本日よりとなりのヤングジャンプ様にて新連載開始です!


『十三番目の転生者~俺だけ見捨てた女神をぶっ飛ばす!~』


となジャン

https://tonarinoyj.jp/episode/316112896809499272


ニコニコ

https://seiga.nicovideo.jp/comic/60285?track=official_trial_l2


ぜひ読んでみてください!

「毎年のことだからわかってると思うが、四風祭はただの商売じゃねぇ! 祭りだ! 利益も大事だが、一番はお客さんに楽しんでもらうことだからな!」


 ファスルさんが全員に語り掛ける。

 みんな、そんなことわかっていると言いたげに頷く。

 ニヤリと笑みを浮かべたファスルさんが、チラッと私に視線を向けた。


「まっ、改めていうことじゃねーが、今回が初参加の奴もいる。いつも以上に張り切っていけよお前ら!」


 私のために、と言ってくれている気がして、心が温かくなる。

 会議は当日の段取りを決めるところから始まった。

 四風祭は街の中心部にある広間を貸し切って行われる。

 街への許可はもちろん、他の同業者たちへの対応も必要になってくる。

 準備、設営、実行。

 工程は変わらないけど、中身の密度が普段と大違いだ。


「当日は同業者も参加する。そっちの手配と調整は、イヴェールに任せる」

「例年通りですね。承りましょう」


 イヴェールさんが淡々と返事をした。

 各業者への対応は彼の仕事になっているみたいだ。

 旅団の人たち以外をまとめるなんて、私からすれば何より大変な役割な気がするけど。

 それを簡単に引き受けたり、ファスルさんから毎年任されているのは、きっと相当な信頼をされている証拠なのだと思う。

 イヴェールさんのことはあまり知らないけど、いつかちゃんと話をしてみたいな。

 ちょっと怖そうだけどね。


「材料やらの手配はリエータ、ヘルフスト、お前らで頼むぜ」

「わかってるよ」

「了解しました。僕は食材関連を手配しますね」

「頼むよ。それ以外は全部あたしのほうでやっておく」


 二人はすでに各々の役割を理解している様子だった。

 ヘルフストさんの秋風は食品を強く売り出しているし、食材の調達はどの旅団より慣れているのだろう。

 リエータさん海を渡って様々な場所を訪れている。

 その関係で旅団で一番顔が広く、珍しい品も集められる。

 この二人なら適任だ。

 と、残るは私たち春風だけになった。

 ファスルさんがエアル君に視線を向ける。


「エアル、お前んとこは当日の設営と警備の指揮を頼むぜ。各団員の若い奴ら中心に集めておくから、お前が指示を出して進めるんだ」

「わかりました。先に段取りだけ決めて、終わったらリエータさんたちの手伝い、でいいですよね?」

「おう、それで頼む」


 私たちの役目は露店を立てたり、当日の見回りなど現場でのお仕事だ。

 春風は他の旅団より若い団員が多い。

 体力も溢れているからピッタリだろう。

 私は体力も人並みだし、力も全然自信はないけど……。


「ユリアちゃん」

「は、はい!」


 突然ファスルさんに名前を呼ばれた。

 背筋をピンと伸ばし、ファスルさんと目を合わせる。


「当日は結構人が溢れるんだ。毎年少なからずケガ人とか、体調が悪くなる奴が出てくる。それ用に売り物とは別でポーションを用意してもらえるか?」

「はい。まかせてください」

「助かるぜ。みんな羽目外しまくりだからなぁ。ユリアちゃんがいてくれると安心だ」


 そう言ってもらえる喜びを胸に、期待に応えようと思う。

 私は錬金術師だ。

 力仕事は苦手だけど、そういうところで役に立てる。

 頼ってもらえることは光栄だ。

 その後は、細かい段取りを決めていく。

 みんな慣れた調子で話は進み、すっかり日が暮れた。

 会議二日目が終わり、私たちはレストランを出て宿へと戻った。


  ◇◇◇


「さて、じゃあ当日の露店について考えるか」

「うん!」

「えっと、私たちだけで?」


 宿屋の一室に三人で集まっている。

 私とエアル君は椅子に座り、レンテちゃんは足をバタバタさせながらベッドに腰を下ろす。


「他のみんなはいいの?」

「ああ。三年くらい前から、四風祭の出し物は俺とレンテで考えていたんだ」

「みんなが私たちの決めたものがやりたい! って言ってくれたんだよ!」

「出し物と言っても、大半は普段やってる露店をそのまま使うだけだからな。俺たちが決めるのは、祭りだからこそできる、普段やらない露店のことだ」


 ファスルさんも言っていたけど、四風祭はただの商売ではなく、楽しむためのお祭りだ。

 露店もそれに合わせて、お客さんが楽しめるお祭りならではのものが必要になる。

 一言で表現するなら、お祭屋台だ。


「去年まではどうしてたの?」

「そうだな。去年までは、その年に一番流行ったものを中心に売り出してたな。基本は各団の特色にあった露店を出すんだ」


 四つの団には特徴がある。

 例えばリエータさんの夏風は、船で海を渡り港を行き来している。

 だから遠い土地の品を集められたり、海の素材は豊富に集まる。

 ヘルフストさんの秋風は料理だ。

 システィーナさんを始めとして、たくさんの料理人が在籍している。

 四風祭でも、秋風の食べ物を目当てに訪れる人も多いらしい。

 そして私たち、春風の特徴は豊富な品揃えにある。

 各団の中で断トツな品揃えは、ここに来ればそろわない物はないと言えるほど。

 夏風や秋風のようにとがった特徴はないけれど、商売としては一番安定している。


「今年は何が流行ったかな~」

「そんなの決まってるよ! ね、お姉ちゃん」

「え、なんだろう」

「ああ、やっぱりそうか。今年一番の変化は……」


 二人の視線が私に向けられる。

 キョトンとする私に、エアル君がクスリと笑う。


「な、なに?」

「ユリアだよ。今年、一番俺たちにとって大きな……いい変化は」

「間違いないです! お姉ちゃんが入ってくれて、うちの売り上げもぐーんと伸びたんだよ!」

「そ、そうかな? なんだか照れる」


 面と向かって、改めて言われると。

 赤面する顔を隠すように、私は視線を横に向ける。


「なぁユリア、君ならどうする? 錬金術師として、祭りに参加するなら」

「うーん……そうだね」


 錬金術師の私にできること。

 祭りと錬金術……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新連載開始!! URLをクリックすると見られます!

『通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~』

https://ncode.syosetu.com/n9843iq/

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻1/10発売!!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000

【㊗】大物YouTuber二名とコラボした新作ラブコメ12/1発売!

詳細は画像をクリック!
https://d2l33iqw5tfm1m.cloudfront.net/book_image/97845752462850000000/ISBN978-4-575-24628-5-main02.jpg?w=1000
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ