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【7/25コミック1巻発売】国渡りの錬金術師 ~王子に騙され王宮を追い出された私は、ある旅の一団と出会いました~【コミカライズ】  作者: 日之影ソラ
第三章『秋風』

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69.追憶のポーション

 宿屋の一室に二人。

 ヘルフストとシスティーナがベッドの端に腰を下ろす。


「思い出深い料理か。システィーはパッと思いつく料理ってなにかあるかい?」

「そうですね。思い出深い……うーん」


 システィーナは頭を悩ませる。

 天井を見上げ、続けてヘルフストの顔を見る。


「作るのが大変だった料理ならありますけど、私だけ印象深い料理じゃないですもんね」

「そうだね。あくまで僕たちにとって思い出深い……か」


 二人で揃って考え込む。

 うーんと唸りながら互いを見たり、目を瞑ったりしながら思い返す。


「ヘルフ君が今まで食べた中で一番美味しかった料理はなんですか?」

「一番……一番……どれも美味しかったから、一番って言われると難しいな」

「じゃあヘルフ君が一番好きな料理は?」

「うーん……システィーが作ってくれた料理なら全部好きだよ」


 料理の話とは言え、直球に好意を伝える彼に赤面するシスティー。

 気弱だと誤解されやすいヘルフストだが、好意を伝えることを恥ずかしいとは思っていない。

 いつだって真っすぐ好きなことに向き合う彼の姿勢は、秋風の団員たちも尊敬している。


「ヘルフ君は変わらないですね……出会った時から」

「そうか? 多少は成長したと思うんだが……」

「ふふっ」


 この時、彼女は作る料理を決めたようだ。

 自分たちにとって思い出深い一品を。


  ◇◇◇


「お帰りなさい!」

「ただいま」

「ただいまレンテちゃん」


 私たちが宿屋に戻ると、レンテちゃんが元気いっぱいに出迎えてくれた。

 彼女の背のテーブルには、彼女が買い揃えた素材が置かれている。

 それに気づいたエアル君が尋ねる。


「ちゃんと全部買えたか?」

「うん! ばっちりだよ!」


 自信満々のレンテちゃん。

 可愛い笑顔が示す通り、ちゃんとお願いした素材が揃っているみたいだ。


「ねね? ちゃんと全部ありますよね?」

「うん。さすがレンテちゃん」

「わーい! お姉ちゃんに褒めてもらえたー!」


 嬉しそうに両手を挙げてぴょんぴょん跳ね回る。

 一つ一つのしぐさが可愛すぎて、思わず抱きしめたくなるよ。

 

 エアル君が左右を見渡し、レンテちゃんに問いかける。


「二人は?」

「向こうの宿屋にいるよ!」

「じゃあ作る料理を考えてるのか」

「そうだと思う!」

 

 だったら邪魔をしても悪いし、先にポーションを完成させよう。

 そう提案してさっそく作成に移る。

 今回は一本しか作らないし、錬成陣も小さくて良い。

 広い場所は必要なくて、素材も一本分だ。

 レンテちゃんが用意してくれた素材に、エアル君のお陰で採取できたリコレテンダケを加える。


「わぁ~ 気持ち悪い色してる」

「毒があるんだよな? そのまま使うのか?」

「ううん。毒のある紫色の部分だけ取り除くよ」


 派手な見た目なリコレテンダケは、紫色の濃い部分に強力な毒を持つ。

 人間が食べれば死んでしまうほど強力な毒だ。

 このまま使うとポーションもただの毒になってしまうから、その部分は取り除いて使う。

 ナイフを使い、果物の皮をむくように切り取っていく。

 簡単そうに見えるけど、意外と難しい。

 何しろ毒だから、触り続けているだけで一時的に手がしびれてくるんだ。


「大丈夫かユリア」

「平気だよ。ちょっとしびれてるだけ。口にしない限り幻覚を見ることもないから」

「そうか。なら良いけど」


 心配してくれるエアル君。

 本当のことを言えば痛かったりするんだ。

 痺れはそのまま痛みでもあるから。

 我慢できる痛みだから我慢して、最後まで処理を進める。

 これさえ終わってしまえば後は錬成するだけだ。

 錬成陣を書こうと白いチョークを握る。


「あっ」


 握ったつもりが落としてしまう。

 長い時間触れていたから、痺れで感覚がマヒしているんだ。

 上手く力が入らない。

 先に書いておけばよかったな。


「貸してくれ」

「エアル君」

「俺が代わりに描くよ。だから描き方教えてくれるか?」

「うん」


 私の代わりにエアル君が錬成陣を描いていく。

 普段は自分が描いている物を、他の人にお願いするのは初めてで、説明の仕方に戸惑った。

 上手く説明できない部分もあったのに、エアル君は意図を読み取ってスイスイと書いてしまう。

 それになんだか楽しそうだ。


「出来たぞ」

「ありがとう! あとは素材を全部横一列に乗せて……」


 錬成陣を発動させる。

 手のしびれは残っているけど、錬成には影響しない。

 あっという間に光に包まれ、治まる頃には一本のポーションが完成していた。

 透明なガラス瓶の中に薄黄色の液体が詰まっている。


「追憶のポーション完成だ!」


 過去を思い返すポーション。

 これで後は、鍵になる料理さえ揃えば完璧だ。


「じゃあ二人の所に行――ひぇ!」

「お姉ちゃん変な声!」

「エアル君が急に握ってくるから」


 痺れた手を彼が握っていた。

 それに驚いて変な声が出てしまったよ。


「行くのは、この痺れが治ってからな? じゃないと道端で今の声を出すかもしれないぞ?」

「そ、それは恥ずかしいね」


 それからしばらく休憩して、私たちはポーションを手に二人の元へ足を運ぶ。

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