閑話 救われた日
第二章補完のお話です。
「ねぇエアル君、聞いても良いかな?」
「ん? 何をだ?」
「大団長さんたちのこと。エアル君も助けてもらったって話してたでしょ?」
「ああ、その話か」
夏風と別れた後、次の街に向けて移動中。
揺れる荷車に乗りながら、私はエアル君に質問した。
せっかく会えた大団長さんとも軽い挨拶しか出来なくて、聞きたい話を聞けなかったから。
思い返すと気になってしまったんだ。
「嫌ならその、聞かなかったことにして」
「全然嫌じゃないよ。まぁでも、そうだな。もうずいぶん昔の話だ」
そう言って語り出す。
エアル君とレンテちゃん、二人の始まりを。
◇◇◇
エアルとレンテ。
二人が生まれたのはとある国の辺境にある小さな村だった。
決して豊かではない土地、環境に生まれた二人だったが、母親の頑張りのお陰ですくすくと成長した。
「お母さん! 今日はいつ帰ってくるの?」
「ごめんねエアル。お母さんお仕事で忙しいから明日まで帰れないの」
「そっか……」
「本当にごめんね。それからレンテのことをお願いね? お兄ちゃん」
「うん!」
当時まだ五歳だったエアルと、生まれて間もない妹のレンテ。
二人の生活を支えるため、母親は身を粉にして働いた。
父親はレンテが生まれる前に行方不明になり、それからずっと母親が一人で彼らを育てていた。
女手一つで二人の子供を育てることは、恵まれた環境でも大変だ。
辺境で、地位もお金も不足している彼らにとっては、より一層過酷だったと言えるだろう。
それでも二人が元気に大きくなれたのは、母親の努力のお陰だった。
だが、頑張り過ぎた。
無理をしてしまっていた。
子供たちに不自由をさせないため、自らの自由を対価に働き、身体どころか命まで削っていた。
過労によって身体が弱り、そこを流行病にやられてしまう。
母親は帰らぬ人になった。
「お母さん……目を……目を開けてよぉ」
母親に支えられていた生活は一変する。
村の人たちも、自分たちが生きるだけで精いっぱい。
子供を養えるほどの余裕はなかった。
お金がないから、食べ物は自分で探すしかない。
エアルは幼いレンテを背負って、食べ物探して森へ出ていた。
そんな時、モンスターに襲われてしまう。
絶体絶命の窮地を救ったのは、大剣を担いだ男と、銃でモンスターを撃ち抜いた女性だった。
「おうおう、こんな所にガキが来ちゃあぶねーぞ」
「まったくだよ。あたしらが来なかったら今頃……なぁあんた、この子たちなんじゃない?」
「ん?」
「あんたが言ってた困ってる人ってやつ」
二人の会話が理解できないエアルは、怯えながら後ずさる。
「怖がらなくて良い。オレはファスル」
「あたしはリエータだよ。あんた名前は?」
「エ、エアル。後ろは妹レンテ」
「そうかそうか。ところでよ? なんでこんな危ない所にいたんだ?」
エアルは質問に答えた。
拙い言葉で、気持ちを込めて。
「なるほど。どうやらこいつらみてーだな」
「そうね」
当時から彼は、助けを求める声を聞きつける不思議な感覚を持っていた。
彼の感覚は、エアルたちの小さな声を聞いていた。
助けを求める者の元へ現れ、優しく手を差し伸べる。
彼らは――
「よう坊主、行く当てがないんならうちの旅団に来ないか?」
四風の旅団。
お人好しの商人たちに、二人は出会った。
次の更新から第三章になります!
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