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23.再会

 夜目のポーション。

 名前のままだけど、暗い場所でも視界が明瞭になる。

 冒険者の中には夜に稼働する人や、洞窟とか暗い場所に行く人も多いらしいから役立つと思う。

 

 痛覚遮断ポーション。

 痛みは身体の不調を知らせる重要な感覚だけど、それが邪魔になる時がある。

 戦闘を主にする冒険者なら、痛みで動けなければ死ぬだけ。

 そういうピンチには役立ちそう。


 反射速度向上ポーション。

 目で見て考えてから動いては間に合わない。

 これ一本で通常の倍の反射速度に到達できる。

 ただし身体への負担は大きいので、絶対に筋力増強ポーションと併用するように。


「このくらいでいいかな?」

「十分だろ。お試しにしては多いくらいだ」

「そうかな? 種類は多くてもいいのかと思ってた」

「多いに越したことはないか。じゃあ他にも作れそうだったら頼むよ。単価は安いし、これくらいなら挑戦しても悪くない」


 一本当たりの単価は治癒ポーションと同じ。

 中にはちょっと高いのもあるけど誤差の範囲だ。

 お試しなんだから、どれが売れやすいのか確認する機会を作らなきゃ。


「ちょっと素材が足りないかな?」

「何がいる? 明日も森に入るから必要ならとってくるぞ。それともまた一緒にいくか?」

「うーん、一緒に行くのも楽しいけど効率よくないし……今回はお願いしようかな。ほしい物を紙に書いてまとめておくね」

「おう」


 森で手に入りそうな素材はエアル君にお願いするとして、他にもいろいろ集めないと。

 

「明日は街のお店をまわってみようかな」

「一人でか?」

「うん。お店の場所は教えてもらったし、もう一人でもわかるよ」

「私も一緒に行きます! といいたいところですが、明日は予定があっていけないですね……」


 しょんぼりするレンテちゃんはせつな気だ。

 一緒にお買い物できないのは寂しいな。

 レンテちゃんとのお買い物は宝石みたいにキラキラ輝いていて楽しいから。


「二人で買い物ならまた今度行けばいいさ。明日のはお仕事の買い出し、仕入れみたいものだからな」

「そうですね。頑張ってきてください!」

「うん」


 レンテちゃんは元気よく手を振って応援してくれた。

 そうは言っても普通に買い物だし。

 頑張るほど特別になにかするわじゃないけどね。


  ◇◇◇


 そんなわけで翌日。

 私は一人、街を散策していた。


「次は薬屋さんに行こうかな。たしかこっちだったはず」


 すでに素材を売っているお店を二軒ほど回った後だ。

 そこまで大きい街じゃないから、お店の数も限られている。

 昨日の内にどこへ行くかは決めておいて、近い順番に入っていく。


 街の薬屋さんは一軒だけ。

 前の街でもそうだったけど、薬屋さんも多いわけじゃない。

 私は薬屋さんの戸を潜る。


「いらっしゃい……ませ」

「――?」


 お店に入って挨拶をされた時、微妙に表情が濁ったように見えた。

 どうしてだろう?

 このお店に入るのは初めてだし、この人のことを私は知らないはずだけど。


「何をお探しですか?」

「え、あ、ここに置いてある薬品とハーブの一覧ってありますか?」

「はい。お持ちしますので少々お待ちください」

「お願いします」


 店員さんが奥へと消えていく。

 接客は普通だし、話し方も変な所はない。

 気のせいだったのかな?


 しばらく待つ。

 すると、甘い香りが店内に漂う。


「なんだろう? この香り……ハーブ?」


 裏で薬を調合しているのかな?

 それにしても甘い香りだ。

 香りだけで酔ってしまいそうなくらい……酔う?


「な……に、これ……」


 異変に気付いた時にもう、身体から力が抜け始めていた。

 視界もぐらぐらしている。

 脱力感と喪失感に襲われ、立っているのか倒れているのかの感覚もわからない。

 意識が薄れていって……


「ごめんなさい。こうするしかない――」


 最後に聞こえたのは、店員さんの苦しそうな声。

 謝罪の言葉がすべて聞こえるより前に、私の意識は闇に堕ちた。


  ◇◇◇


 暗い、冷たい。

 孤独が押し寄せる。

 暗がりで一人……あの頃を思い出す。

 嫌な感じだ。

 眠っているのかな?

 だったら早く目を開けて、明るい日を浴びたい。

 元気な声を、頼りになる背中を見たい。


「……ぅ、ここは……」


 どこ?

 見知らぬ天井だ。

 私はベッドの上に寝転がっていた。

 古い建物の埃がかった天井に、空気もあまり綺麗じゃない。

 そして暗い。

 窓が閉められ、カーテンも閉じている。

 ほんのり明かりが見えるから、まだ昼間で合っていると思うけど。

 

 とりあえず起きよう。

 

 ジャラン。


「え?」


 起き上がれなかった。

 手足が錠と鎖でつながれて、ベッドに磔にされている。

 

「な、なにこれ」

「ようやく目覚めたようだね」

「――!」


 暗がりに声が響く。

 その声は、忘れたい人物と似ていた。

 いや、本人だ。

 なぜならもう、視界にくっきりと映っているのだから。


「ゼノン……王子?」

「やぁ、久しぶりだねユリア。元気にしていたかい?」


 殿下の笑顔。

 あの頃は向けられることが嬉しかったのに、今はどうしようもなく恐ろしい。

 気持ちが悪い。

 どうして、という気持ち以上に、再会してしまったショックが大きい。

 上手く言葉が出ない。

 

ついにクズな王子と再会してしまったユリア!

果たしてどうなってしまうのか?

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