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22.いろいろ試そう

「うーん……」


 テーブルの上に並んだ素材と睨めっこ中。

 何を悩んでいるのかというと。

 いや別に悩みというほどのことじゃないのだけど。


「何を作ろうかな」


 単に何を錬成するか考えていただけだ。

 ここ数日でエアル君たちに同行したり、街にあるお店を周ったりして、ポーションづくりに必要な素材は粗方集められた。

 治癒系のポーション以外も作れるように素材は選んでいる。

 

「何をそんなに悩んでるんだ?」

「あ、エアル君」

「ただいまです! お姉ちゃん!」

「レンテちゃんもお帰りなさい」


 部屋の扉がパタリと開いて、買い物を終えた二人が帰ってきた。

 二人は連日の森探索で消費した装備品を買い揃えに行っていたそうだ。

 エアル君が両手に抱えている包袋がそれだろう。


「買い物はもういいの?」

「ああ、ちゃんと買えたよ」


 エアル君が包袋を床に置く。

 疲れた肩をぐるぐる回しながら、私の隣まで歩み寄ってくる。


「で? 何を悩んでるんだ?」

「今から錬金術の時間ですか?」


 いつの間にかエアル君とは反対側にレンテちゃんが迫っていた。

 この二人はいつも私を挟んで立つよね。

 嫌じゃないけど。


「お店に出せるポーションを考えてたんだけど、何が売れるのかなーって」

「新商品ですか!」

「治癒系以外も作るって話してたもんな」

「うん。買ってくれる人は冒険者さんが多いから、そういう人向けに色々と用意したいと思ってるんだ。でも実際に売れるのかわからなくて。売れないなら治癒系のほうが安定するだろうし」


 前の街でも治癒ポーションの売れ行きは良かった。

 他に種類がないという点を鑑みなくても、瞬時に傷を癒すポーションは優秀だ。

 危険な場所に飛び込む冒険者には必須のアイテムだからね。

 最初こそ疑われたけど、あれは仕入れ品と見た目の差があったからで、今回はそこまで苦労しないと思っている。

 だからこそ新しい商品にもチャレンジしたい。

 そんな欲から始めて悩み中だ。


「エアル君なら何がほしいかな? 冒険者じゃないけど、危険場所もよく行くでしょ?」

「俺か? 俺の場合は参考にしないほうが良いと思うぞ?」

「なんで?」

「だってほら、俺って半分は魔法使いだから」


 そう言われて得心した。

 魔法が使える人は少ない。

 彼の場合、ほしいポーションは何かと問われたらこう答えるだろう。


「魔力回復のポーションがほしいよね」

「そう! 魔力はそのまま体力に直結するからさ。魔力切れを起こすと身体が重くて動かせなくなる。だから常に魔力は満タンにしておきたい。でも魔力ってすぐ回復しないんだよ。そんな時にポーションがあると便利だな」

「なるほど~ じゃあエアル君のために何本か作っておくよ」

「本当か?」


 エアル君が目を輝かせる。

 レンテちゃんみたいに。


「エアル君にはお世話になってるから。それともいらない?」

「いるいる! すっごい助かるよ! ありがとう!」

「ど、どういたしまして」


 まだ作ってないけどね?

 そんなに喜ばれるとか思わなかったな。


「えー、お兄ちゃんだけずるいです! 私にはないんですか?」

「え? レンテちゃんも魔法が使えるの?」

「使えませんけど、他にないのかな~」


 そう言いながらレンテちゃんは子犬みたいな目で私を見てくる。

 愛くるしい表情も相まって、保護欲が刺激された。

 なにかプレゼントしたい気持ちが膨れ上がる。


「じゃ、じゃあ飲んでから眠ると疲れが取れるポーションとか?」

「そういうのもあるんですか!」

「うん。ぐっすりも眠れるしいいかなって」


 ほとんど飲み薬と変わらないポーションだけどね。

 薬と違って苦くないし、水の味だから子供でも飲みやすい。


「それがいいです!」

「わかったよ。どっちも作るとして、元の悩みなんだけど」

「あーそれなら力が強くなるポーションが良いと思います!」

「筋力増強系とかかな?」

「はい! お店に来てくれる冒険者さんって、みーんな身体も大きくてがっちりしてるんです。剣と矢槍とか、大きな盾とかも持っているし、力が強くなれば楽そうだなって」


 確かにそうかもしれない。

 レンテちゃんはお客さんのことをよく観察しているな。

 私も見習わないと。


「あ、そうだあれ! 一時的に特別な力が使えるポーションもあったよな? あれも作れるのか?」

「うん。今ある素材的に簡単なものなら」

「なら危険感知系はあると便利だと思うぞ。感覚が研ぎ澄まされる系とか、動体視力を上げるのもほしいかも」

「なるほど、そういうのだね」


 だったら筋力増強とは別に、反射神経を上げるポーションと、痛覚以外の五感を強化するポーションも作ろうかな。

 

「さっそく作ってみるね」


 素材は揃っている。

 治癒ポーションが主で、今回のはオマケでお試しだから十本くらいでいいかな。


 大きめの板を用意する。

 白いチョークで錬成陣を書いたら、素材を載せて錬成開始だ。

 材料はイグサ草、キンカの実、薬草一種、ハーブ三種、それと水。


 完成したのは筋力増強ポーション。

 強化系のポーションは色が赤いのが特徴だ。

 

「簡単に作るよな」

「簡単だよ?」

「いやユリアだからだよ。本当に簡単なら、ポーションが高値で売られるわけない」

「そ、それもそうか」


 私ってそんなにおかしいのかな?


 


 

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