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16.努力の成果

 早朝、屋台の組み立てが終わりお店が開店する。

 お昼が本番という店舗が多い中、朝が特に賑わう店舗が一つ。


「例のポーションってまだある?」

「はい、ありますよ」

「この金で買えるだけほしい!」

「かしこまりました」


 朝のなるべく早い時間帯にポーションは売れやすい。

 購入層が比較的若く、冒険者や肉体労働に向かう人たちにとってポーションは強い味方だからだ。

 特に冒険者は多少高価でも買っていく。

 ちょっとした傷が命の危機に繋がる環境に行くのだから、少しでも安心したいのだろう。

 そういうわけでポーション類は午前中に売れやすくなっている。

 のだが、それにしても凄い売れ行きだ。


「次こっち! 五セットください!」

「はーい!」

「まだ残ってるよね? なくなったら困るんだけど」

「ご心配なく! たくさん入荷しましたから!」


 私たちの店舗だけ人がごった返している。

 服装的にみんな冒険者さんたちだと思うけど、彼らの目的は言わずもがなポーション。

 それも仕入れ品じゃなくて、私が作ったほうのポーションだ。

 あの日、初めて自分のポーションが売れた。

 変化が見られたのは翌日からだ。

 明らかにお客さんが増えていた。

 しかも口を揃えて、色の薄いポーションがほしいと言う。

 次の日、その次の日とお客さんは増え続けて、最終日の現在は大賑わいだ。


「このポーションすっごく効くんだって?」

「はい! 効果は折り紙付きです」

「しかも一個あたりの値段が安いってのも聞いたんだけど、なんでなの? ポーションって高い感じがしてたんだけどさ」

「それはですね~ うちの錬金術師さんがとーっても優秀だからです!」


 レンテちゃんはことあるごとに私を褒める。

 お手伝いをしているとお客さんから色々と質問されて、それに答えていたら自然と私が錬金術師だと伝わったらしい。

 作り方、秘訣、色々質問されるのは大変だけど、求められているのは悪い気分じゃなかった。

 何より自分のポーションが目の前で、ポンポンと売れていく。

 その様を見ていると気分爽快だ。


「はーい! 今のが最後の一つです! ポーション完売です!」

「おっしギリギリ買えた!」

「ちっくしょう間に合わなかった……なぁ譲ってくれないそれ?」

「お前は昨日の分あるだろ!」

 

 お店の前でワイワイがやがやと騒ぎ出す。

 

「はいはい。他のお客さんに迷惑がかかるので、用事が済んだ方から移動してくださいねー」


 そこへエアル君がやってきて、手を叩きながら誘導する。

 買えた人がご満悦な表情で、買えなかった人はしょんぼりと落ち込んで。

 エアル君のお陰で人混みが解消される。


「お疲れ様、二人とも」

「はい!」

「ありがとうエアル君。お客さんに声かけてくれて」

「良いってことだよ。人気の店舗には多少の贔屓も許されるからな」


 そう言って彼は笑顔を見せる。

 楽しそうに、悪戯を仕掛ける子供みたいな笑顔だ。


「大人気になったよな、うちのポーション店舗」

「お姉ちゃんのお陰ですよ!」

「間違いないな。これは最終日の売り上げ結果が楽しみだ」

「ねー! 今までトップには縁がなかったけど、今回は狙えるかも!」


 旅団では最終日、十五日間の売り上げ結果が順位で発表される。

 それで良い所が贔屓されたり、悪い所がお叱りを受ける。

 とか言うのではなく、単に意識づけが目的だ。

 販売する商品や形式が異なる以上、売れやすい物とそうでない物が存在する。

 同じ土俵で競えというのが無理な話だ。

 特にポーションは高価なだけあって売れにくい。

 いつも下から数えたほうが早いそうだ。


「わくわくしちゃうな~ ね、お姉ちゃん!」

「う、うん。私はその、無事に売れてくれただけで満足してるけど」

「売れるのは当たり前だよ! お姉ちゃんのポーションは最高だもん! 最初に飲ませてもらえた私が良く知ってる!」

「ううん、レンテちゃんが頑張ってくれたのも大きいと思うな」


 どれだけ良い商品でも、売り方次第では全く売れない。

 特に今回のポーションだって、最初は難色を示されていたし。

 彼女の機転と声掛けがあったから、ちゃんと使える商品だと広まったんだ。


「商売の質は、商品のだけで決まるわけじゃない。売り込み方も立派な武器だ。レンテはその辺りぴか一だろ?」

「うん。さすがだと思う」

「えへへ~ そんなに褒められると照れちゃいますよ」


 照れている顔も可愛い。

 こういう何気ないしぐさも、彼女の人気を底上げしているのだろう。

 彼女の顔を見るために、お店に通っている人とかもいそうだ。

 立場が違ったら私がそうなっていたかも。


  ◇◇◇


 時間は過ぎ、夕刻の片付けも終わる。

 最終日だけは普段よりも営業時間が短い。

 夕日が沈み出す前に片づけを始めて、夜になる頃には完全撤収。

 貸し切り状態のお店に入って、グラスを片手に待機している。


「えー、十五日間お疲れさま! みんなよく頑張ってくれた!」


 みんなの視線がエアル君に集中する。


「さっそく乾杯したい所だが、その前に定期の売り上げ発表だ! 今回もみんなの頑張りが出ているよ! 特に……もう最初に言っちゃうけど、今回の二位はポーション店舗だ!」


 エアル君が私とレンテちゃんを指さす。

 一斉に視線が向き、おーという声で部屋中が満たされる。


「後半からの怒涛の追い上げ! 最初からだったら間違いなくトップだったよ」

「やりましたよお姉ちゃん! 二位なんて初めてです!」

「う、うん!」


 周りから拍手が湧く。

 凄いなとか、どうやったんだとか。

 いろんな声が飛び交っている。

 拍手の音と賛辞の声。

 とても気持ちが良い。

 頑張りが認められるって、本当に幸せなことなんだな。


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