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13.夕、仕事終わり?

 お昼は特に忙しい。

 エアル君が言っていた通り、露店はどこも大忙しだった。

 人を呼び込み、商品を売りさばく。

 やっていることは単純でも、流れと精度はそう簡単には真似できないと思うほど。

 

「一人一人に役割があって、それを熟していく。ちゃんとできれば乗れない波はない。っていうのがうちらの持論だ」

「一人が役割を……私も明日から加わるんだね」

「そういうこと。まっ、作成部門の場合、忙しいのは販売時じゃなくてその前後だけどな」

「ああ、そっか。商品を準備することが仕事だもんね」


 私の場合、ポーションを準備することが仕事。

 売るのは販売のレンテちゃんだ。

 つまりは、いきなり今みたいな大騒ぎに入り込まなくても良いってことになる。

 そう思うとホッとする。

 大きな声を出したり、知らない人に声をかけるのは苦手だから。

 怪我をしている人だったら身体が勝手に動くかもしれないけど。


 それからしばらく、みんなの仕事ぶりを見学していた。

 レンテちゃんのことが気になって意識的に目で追っていたけど、心配する必要なんてなかったみたいだ。

 元気いっぱいに接客する姿は健気で可愛らしい。

 お客さんにも人気みたいで、昨日の野蛮な人たちも来なかった。

 平和が一番だ。


 さらに時間は過ぎて、西の空に日が落ち始める。

 

「そろそろ撤収だ! みんな片付けに入ってくれ!」


 エアル君の一声を合図に、一斉に片付けが始まった。

 昨日も見た光景だ。

 組み立てられたテントや屋台を、今度は丁寧に素早く解体していく。

 

「私も手伝って良いかな?」 

「いいけどやれるの?」

「昨日も見てるし大丈夫。重い物は持てないからちょっとだけど」

「十分だよ。だったらレンテのところを手伝ってやってくれ」

「うん」


 男の子なエアル君は、話しながら重そうな荷物を軽々と運んでいた。

 彼の後ろを通ってレンテちゃんの手伝いに向かう。

 小さい身体でせっせと小物を運んだり、テーブルに敷いてあった布や敷居代わりのカーテンを畳んでいる。


「レンテちゃん、私にも手伝わせてくれないかな?」

「お姉ちゃん! もうお兄ちゃんとのお話は終わったんですか?」

「うん。手が空いてるし、エアル君にも手伝って来てって言われてるんだ」

「わかりました! じゃあお手伝いお願いします!」


 レンテちゃんのお手伝いに参加する。

 見ているだけじゃ申し訳なかった分、少しでも役に立ちたかった。

 簡単なことしか出来ないけど、頑張っている彼女の手助けができたから満足だ。

 でも、これくらいじゃ足りない気もする。

 私は彼女の手伝いをしながら、何か出来ることがないか考えていた。


「――あ」


 ふと、目に入ったのはポーション瓶だ。

 売れ残った分の在庫が箱にしまわれている。

 ポーションは高価で、使いどころも限られるから売れ行きも良くはない。

 レンテちゃんが頑張って声掛けをして売っている姿を見ていた。


「ねぇレンテちゃん、ポーションのことで聞きたいんだけど」

「なんですか?」

「あれって元はいくらで仕入れたの? 一本当たり」

「えっと、一本五百ユロです」


 五百ユロ……仕入れ時点でそれだけ高かったんだ。

 効果は中軽傷の即時回復。

 薬なら半額以下で買えるけど、ポーションは即時効果の分だけ高値だ。

 それにしても高い。

 あのくらいの効果だし、元になっている素材を考えたら四分の一以下で売れるはずなのに。

 五百ユロあれば立派な宿に一泊できる。

 利益を出すためにプラスした値段で売ってたら、いくら呼びかけても売れ行きは悪くなる。

 

「だったら……」


 手伝いを終えた直後に、私はエアル君に元へ駆け寄る。


「よーし撤収終わったな! それじゃ順次移動始めるぞ」

「エアル君、ちょっといいかな?」

「ん、どうした?」

「実はちょっとお願い……というか、やってみたいことがあって」


  ◇◇◇


 エアル君に事情を説明して、片付けもひと段落した後。

 街頭の明かりに照らされた夜道を歩く。

 私とエアル君の二人で。


「もう少し歩けば到着だ」

「うん。案内してくれてありがとう」

「別にいいさ。むしろ良かったのか? 仕事は明日からでよかったのに」

「ううん、今からやっておきたいんだ」


 頑張っているレンテちゃんを見ていたら、助けになりたいと思ったんだ。

 出来ることが見つかったら身体が勝手に動いて、気づけばエアル君の元に駆け寄っていたし。

 エアル君は私の唐突のお願いにも文句を言わず、こうして付き合ってくれている。


「頑張ってる人見てると、私も頑張らなきゃって思うんだね」

「そうだな。そういうものだよ、人間って」

「……うん。初めて知ったかも」

「はははっ、王宮じゃユリア以上に頑張ってる人なんていなかったか? そんな気がする」


 エアル君は笑いながら楽しそうに話す。

 そんなことないよ、と否定してもいい話だったけど。

 王宮時代を思い出すと、ついでにあの人たちの顔が頭に浮かぶからやめた。

 せっかくいい気分なのに、わざわざ嫌なことまで思い出さなくて良い。


「さぁ着いたぞ。ここが薬屋だ」


 いろいろ考えていたら到着していたらしい。

 夜の街を照らすくらい明るいお店の看板が目印だ。


「もうすぐ閉店だと思うから、手早く済ませよう」

「うん」

  

総合1位ありがとうございます!

たくさんの方に読んで頂けてとても嬉しいです。


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