転生したらおにぎりでした。森の忍者の暇つぶし確定。
何を書いてしまったんだらう。
これは「なろうラジオ大賞2」応募作品です。参加規定上、1000文字以下になっています。
家紋武範さまご主催、「あの一作企画」に参加させていただきます。
最近、ホラーや推理を書いていたので、違った趣のものを。
ぬちょ、べちゃ。
不本意な音が響く。
「転生したらスライムなんじゃないの! なんで俺、お・に・ぎ・り?」
ぽよん、ぽよよん、ふるふる、からの~、俺TUEEE―が理想だろっ!
必殺技が「飯粒飛ばし」って~、何その汚い感じ。
ぶつぶつ云う間にも、俺の体からひとつ、ふたつと飯粒が外れていく。
金太郎の腹掛けのように四角くあてがわれた自慢の有明産海苔も、ふやけて今にも破けそうだ。
振り返ると、俺の後にはヘンゼルとグレーテルのパン屑よろしくご飯が散らばっている。
そこに群がる雀たち。俺が最後の一粒となるのを虎視眈々と狙っているのだ。
「伝説の白い部屋に居た綺麗なお姉さんは、偽物聖女だったのか。俺って生きても死んでも、ついてねぇよな……」
スライムと違って、「おむすびころりんすっとんとん」と回転移動しなくてはならないのも苦しい。間抜けな音楽が付くのが輪をかけて腹立たしい。
森の下り坂に差し掛かかって、コントロールを失い俺の思考は停止した。
「ああ、次こそまともな転生を……」
白い池にはまっていた。
「え、うそ、やめて、溶ける~」
口に入る飛沫は甘ったるい牛乳。美味しいと思う前に、俺の海苔は跡形もなくなった。
下半身部分(ってどこ?)が崩れ、腹がほろほろと牛乳に浮きだした。
「待て、俺はおにぎり、主食なんだ! ご飯が甘いって許せないだろ? 甘くていいのはもち米、おはぎ、ぼたもちの類だあ!」
騒げば騒ぐほど、体が解ける。
気付けば、桃色短丈忍者服の女が池の畔の木立に腕を組んでいた。
「ライス・プディングなるものを知らぬのか? 乳粥じゃ。うちのドラゴンの好物でな」
「俺ドラゴンに食べられるのー?!」
「情けない声を出すな。この程度の池、ずずずぃーと吸い込んですぐ済む」
いや、済みたくないから、おにぎりでいいからもっと生かして?
「云い残すことがあれば聞いてやる」
「どうせなら、おにぎりとしてお前に食われたかった……」
女忍者は真っ赤になって池に飛び込んできた。
「バカ、それを早く云え!」
もう頭しか残ってない俺を女は豊満な胸に抱き締め、唇を寄せた。
体温、鼓動は急上昇、粥を煮込んだ攪拌状態に等しい。
快感にどろりと身を任せると、体は伸び、薄青色に輝いた。
俺、スライムだよ!
「触手の使い方はわかるか?」
小声で聞かれたから頷くと、忍者は嬉々として俺を家に連れて帰った。




