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魔法の力で本気を出す件

 5対25の変則マッチが開始されてから10分程度が過ぎただろうか?


 こちらは7機を撃墜し、5対18にまで持ち込んだ。

 アサヒとマイは目的であるビーコンを探して前線を走り回っている。最速まで加速した2人を捉えることは並の生徒には難しい。恐らく撃墜される心配は無いだろう。

 問題は俺とゴウ、アオイの3人で守る自陣ビーコンである。こちらのビーコンの位置は敵にバレバレである為、どんな襲撃を受けるか分からない。


 2班と4班の第1波は俺とアサヒが壊滅させ、5班はマイが足を止めてくれた。

 その為まず、迫り来るのは3班と6班の3機づつである。

 先ずは6班のバースト2機とスパークの組み合わせである。


 2つのバーストが前に出て、両肩ミサイルランチャーを射出する。

 俺が前に出て、レーザーマシンガンでミサイルを撃ち落とす。

 すると2体のバーストが左右に展開して間から狙撃体制のスパークがビーコンをダイレクトに狙う。


 間違いない、あのスパークはトーマだ。


 ロングレンジレーザーライフルを放つがアオイがフォローに入る。俺はそこにレーザーシールドを投げ込みバーストの対レーザーフィールドとレーザーシールドの2枚で防いだ。


(思い切って狙ってくるか……悪くない)

(相手はビーコンだ思いっきりやらせて貰うよ)


 反撃でトーマ機に対して、レーザーマシンガンを打ち込むが左右に展開したバーストが中央に戻り、マシンガンを対レーザーフィールドブロックする。


「援護します」


 アオイが後からミサイルポットを射出し2体のバーストを囲む様に爆撃する。

 固まった2機に対して俺は接近してレーザーソードで胴体を切りつける、しかし間髪置かずに後方のトーマの射撃が狙っていた為、回避行動を取らされた。その為、レーザーソードは浅くバーストを撃墜には至らなかった。


「絶妙なタイミングで、フレドリ-ファイヤも怖く無いのか自信があるのか」


 俺は即座に【フィールド・トレース】から【イーグルアイ】に切り替えた。防衛戦域の情報が更に詳細に脳裏に入ってくる。


 俺に対して、追撃を狙うもう1機のバーストをアオイがレーザーライフルで牽制すると間合いが取れた。レーザーマシンガンを恒例の如く足元に打ち込み姿勢を崩すと元気な方のバーストに対して【コンプレッション】を用いて角度を変えながら迫り四肢を切り裂いた。

 変則的な動きにトーマも狙撃のタイミングを見つけられなかった。


「なんだ、あの動きは?空中で姿勢を変えた?」


 俺は一連の流れで、撃墜寸前のバーストを狙う。

 しかしトーマの狙いを感じ取り、アオイの前にバーストを蹴り飛ばした反動でトーマの狙撃を回避する。

 アオイが確実にバーストを撃墜に追い込むと俺はトーマに迫ろうとするが、レーザーマシンガンによる妨害が入る。

 3班がゴウの防衛を迂回してトーマに合流した。


「スパーク、被弾は?」

「当機は損傷軽微、前線での孤立の為、共闘を願う」

「了解した。当軍の最後尾からの援護射撃を、隙あらばビーコンを狙え」

「了解……ってこの声は」


 トーマは直ぐに3班と共同戦線に加わって態勢を建て直した。


「ユーゴくん、村上くん、もう少しです」

「油断するなアオイ、あのアサルトは動きが違うぞ」


 敵の編成は隊長っぽいアサルトは無被弾、若干被弾しているバーストとスラッシュがいる。ゴウが3対1だったとはいえ、完全に攻撃を掻い潜った様だ。


「バランスよく、集合か……」

「スパークは狙いが良いから気をつけて」

「スパークはトーマだ、油断したら直ぐに撃ち抜かれる、どういう訳か今の彼は狙いがこの前よりも冴えている」


 どうやらこの前の発破が効いている様だが、効きすぎだ。冗談抜きで一流スナイパーのレベルにある。


 そして1番厄介なのが、やはりアサルトだろう。

 だいたい想像はできるが仕掛けて見るのが1番だろう


「アオイ、どう出る?」

「スパークとバーストは私が抑えます。村上くんはミサイル類を全弾発射して、弾幕と煙幕を張って下さい」

「おお、本気モードか?」

「はい。その後は武装をパージして、ユーゴくんのレーザーシールドを装備、フィールドをオフにすれば、扱えるから、そのままスラッシュを抑えて」

「成程、大将はユーゴに任せるか」

「了解した、トーマもスラッシュも抑えて貰えたら張り合えるかも知れない」

「謙遜するなよ、ユーゴに勝てる奴はいねーよ」

「いや、恐らく数分粘れたら良い方だ長くは持たない」

「どちらかと言うとユーゴ君にアサルトを落として貰ってから攻め入りたいのだけど」

「俺より先にゴウがスラッシュを落として、トーマ、バーストの順が良いと思う」

「おっしゃ、んじゃ俺が頑張るぜ」


 掛け声と共にゴウはその名の通り、豪快に全ての弾を打ち尽くす、被弾による武装破壊と違い、任意の武装解除はブレインアシストのラグも少ない。

 そのままシールドを構えスラッシュに突進する。


「流石のやんちゃ坊主だな、やらせんっと見せかけて」

「あなたの相手は俺だ」

「当然そう来るよな」

「どうして貴方がそこに」

「やっぱバレちゃう?」

「誤魔化せると思う方が不思議です」


 そう、アサルトのパイロットは青島スミトである。

 軍のスーパーエースが数的有利の生徒側にいるとはどんな状況なのかと。


「正体を看板したって事で本気で相手をしてもいいかな?」

「本気を出されたら、数秒で消されそうですけど」


 その瞬間にスミトはレーザーマシンガンにて俺を狙う打つ。

 軌道は読めていたので回避するが、回避先にマシンガンは向いていた。

 先日開発したアサヒ曰く堕天月光斬にて残る斬撃を形成してやり過ごすと次は後ろに迫ってくる。

 俺はスミト大尉に蹴り飛ばされるが【ディストーション】を活用して衝撃を逃がして強引に姿勢制御をした。


「これがミラージュの領域の反応」

「君にも見えているはずだが」

「仮に見えたとしても場数が違い過ぎませんか?力の差が有り過ぎる位は分かりますが」

「君が俺とやり合うにはミラージュを用いる他のないと思うが……まだ自在には難しいかな」


 確かにスミト大尉とやり合うには予測ではダメだ。予知が出来なければ勝ち目がない。

 だが、俺はミラージュの果てを知っている。


 今ここでそれを使うか……まだ時期ではない気がする。


「どうやら君は本気を出す事を躊躇うタイプの様だな」

「あくまで味方ですからね、本気の消耗戦をした所でと言う気持ちが無いかと言えば嘘になります」

「ならばこれでどうだ」


 するとスミト大尉はアオイ機を瞬時に狙撃。機体は転倒してその場に倒れる。

 スミトは詰め寄り、アオイ機のコクピットにソードを突き立てた。


「演習機体の防御フィールドは長くは持たない」

「何をしているのですか?」

「このままコクピットを潰す」

「馬鹿なアオイはまだ脱出していない、そんなことをしたら演習に」


「「ふざけるな」」


 スミト大尉の声が物凄い気迫と共に伝わってきた。


「甘ったれるなよ。戦場で命なんてあっさりと散るんだぞ」

「……」

「お前がやらないなら、俺はこのまま彼女を潰す。止めれるものなら止めてみろ」


 思わず怯んでしまった。実年齢で言ったら俺よりもかなり若い相手に。

 スミトの宣言通り、アオイのフィールドは次第に小さくなり、ソードがボディに届き始める。


 ダメだ、この人は本気だ。

 またあの時の様に俺は人を目の前で見捨てるのか……いや……違う。


「やるしかない」


 俺は【ミラージュ・トレース】を発動した。

【イーグルアイ】で拡張された視野がより鮮明になる。


 膨大な情報が脳裏に焼き付いていく。

 アオイの恐怖、ゴウの焦り、トーマが先に動く……だが、読まれてきり払われる。

 トーマが反撃を受ける前にスミト大尉のマシンガンを切り払わなければ。


 幾つか予知の中で1番好みの未来を選ぶ。ミラージュが見せる未来を後は実行するだけだ。


 トーマがスミト大尉を狙撃するがスミト大尉には読まれており、予知した通りに切り払われる。


「遅い」

「無理か……でも、そんな卑劣な手を許す訳には行かない」


 トーマも諦めずに食らいつくが、そこを読まれて反撃が構えられていた。


「刺し違えてでも」

「友軍に訓練で撃たれるとは斬新だな、実戦なら処刑物だ……筋が良いがまだ甘い」


 俺の一撃は予知通り、スミト大尉の機体のマシンガンを切り裂いた。


「俺のミラージュを超えた……これが君の本当の力か」

「あなたが何をしたいのかは知らないが、仲間はやらせない」


 気分が高揚するのも若返った反動かも知れないが、恐らく魔術師時代のままでも今の行為は俺にとって許し難い光景だった。

 過去に姉を目の前で殺された怒り。その怒りで俺は歴代最高とも称される魔法力が覚醒した。引き金は怒りだった。あの時……魔法力に覚醒していたら姉を守る事ができた。


 だが今は違う。既に力はある。使わないだけだ。


 この先、魔法がバレてこれまで通りの生活は出来ないかも知れない。だけど、それ以上に目の前で味方がやられるのを見過ごす事の方が後悔すると思った。


「ミラージュ同士では行き着く先は分かっているな」

「無限回廊の後の虚無、それがミラージュの終着点」


 俺とスミト大尉の撃ち合いが始まる。

 両者共に先の先を見据えた攻撃に出るが、お互い寸止めで終わる。先に出た方がやられるからである。


「あなたは何がしたいんですか」

「少し学園で力が有るくらいで図に乗ってるガキ共にお灸を添えに来た……とでも言えば納得するか?」

「だったら相手を間違えたな」


 俺は既に虚無の先を知っている。虚無の先には創造する事、つまり実現したいと強く思う心である。ミラージュに見せられているうちは辿り着けない世界である。


膠着気味な状況に【コンプレッション】を用いて近づく。


「連続跳躍か、速いな」

「見え透いた茶番を」


 スミト大尉が振り回されているフリをしているのは分かっていた。

 反撃を貰う前に、レーザーマシンガンを投げつける。

 マシンガンは切り払われるが、爆発に合わせて更なる魔法を重ねる【ソニック・ウェーブ】普通は聞き取れない超音波を発生させる。魔術師戦では三半規管に対するダメージにて遠隔魔法の座標を狂わせる魔法であるが対センスティブには更に目眩を発生させる。


「なんだと」


センスティブは感覚が過敏とも言える状況であり、この超音波を受け流すことは出来ない。


 スミト大尉の三半規管へのダメージはそのまま機体のバランスを奪い、無防備にする。

 更に【ディストーション】を加えて動きを封じると二刀流のレーザーソードで四肢を破壊した。


「これが彼の本気か……想像以上だ……間違いなくミラージュの領域をコントロールしている」


 スミト機との戦闘に周りも見入っていた。

 その間にどうやらマイが敵ビーコンを破壊した様だ。

 勝利を確認した後にアオイ機に俺は機体を寄せた。

コクピットを開けてアオイの安否を確認する。

すると無事にコクピットを開けて出てきた。


「大丈夫か?」

「うん、ありがとう」


 すると近くで爆撃が起こった。

 俺はアオイを自機のコクピットに乗せて直ぐに姿勢を立て直した。


「なんだと演習は終わった筈だが」

「ちょっと借りるね」


 アオイは端末をチェックするが特別な指示はない。

 トーマ機に回収されたスミト大尉から連絡が入った。


「聞こえるかユーゴくん」

「大尉、これ以上の悪ふざけは」

「さっきはすまなかった、君の本気を見る為とは言えやり過ぎだった事は認める」

「ユーゴくん、スミトさんは本気で私を殺す気はなかったんだよ」

「なんだと」


 アオイの説明によると、俺が飛び出してから機体を接触させた回線でコクピットを潰す事は無く、あくまで俺の本気を引き出す為の行為である事を伝えられていた事を知った。

 そうなると本気で怒っていた俺が1人で恥ずかしい気持ちになった。


「本題はこれからだ、ここからは俺の悪ふざけではない。そして軍からの通達だが演習戦域近くの海岸から所属不明の戦艦から複数の機動兵器の上陸を許したらしい」

「ここは実戦の戦場になると?」

「そう言う事だ、残存している生徒は撃破された生徒を回収後に戦域を離脱する様に指示が入った。悪いが俺が指揮を執るから従ってくれ」

「了解」


 スミト大尉の指示で無事全ての生徒を集める事が出来たが、避難の方法が確立されていない。演習合流地点まで固まって動く。そこに明らかに動きの速い一機の機動兵器が迫る。


「訓練兵と思われる部隊を確認」

「偵察機でこちらも確認した、中に蒼い雷がいる様だ」

「蒼い雷……青島スミトか」

「いくら奴でも、訓練機体ではどうにもなるまいここで叩け」

「了解」


 トーマ機に狙いを絞り、レーザーライフルを撃つ敵機。

 1機のバーストがフィールドで防御に入るがフィールドが貫通され、コックピットまで軽々と貫通され爆散した。

 恐らくパイロットは即死だろう。


「散開、急げ」


 スミト大尉の号令で広がったが敵機は一目散にトーマ機に迫る。


「いるのだろ青島スミト」

「やはり貴様かアヴュー・ウィン」


 謎の敵機の襲撃で俺達の演習は瞬時に戦場と変わった。

 奴らの正体をスミトは知っている様だが……そんな事よりも狭いコクピットでアオイと二人っきりと言うのはまた後日親衛隊に狙われないか心配になるそんな状況であった。


 スミト大尉の悪ふざけは思わぬ混乱に繋がった。果たして俺達は無事に脱出出来るのか


とうとう自国最強も倒したユーゴくん。次回はいよいよ訓練ではなく、実戦です。

ちなみに「くん」は意図的に「君」ではなく、「くん」を用いています。特に意味は無いのですが自分が14歳当時に書いた文がその様に表現していたので子供らしいかなぁと思ってます。

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