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魔法の力でエリート相手に無双する件

 アオイ信者達から売られた喧嘩を買ったのは、単純にAクラスの生徒の力量を見る他に、自分の魔法を試すチャンスと考えていたからだ。

 実践で魔法を使うには周囲の目を欺きながら使う必要がある為、その練習も兼ねている。


「【イーグルアイ】」


 先日、如月マイ戦で使った【フィールド・トレース】と【マインド・トレース】の重ねがけをひとつの魔法として繰り出す。情報取得魔法を1回の魔法力消費で展開できた。

 これで敵の手の内とトーマの動きは手に取るように分かる。

 それだけでなく、【フィールド・トレース】の影響で周囲のギャラリーの様子まで情報が入ってくる。どこで噂を聞きつけたのだろうか。四天王組も固まって見ている様だ。

 こうなるとあまり派手な魔法の練習は難しくなったかもしれない。


 演習デュエル開始のカウントが始まり、ゼロになってスタートする。


 敵はスラッシュスレイブが2機、マシンガン装備のアサルト、爆撃装備のバースト、トーマと同じくスナイパー仕様のスパークの構成だ。俺もデータはざっくりと目を通して居るので大体の特性は把握している。


 まずは2機のスラッシュスレイブが前に出てくる。俺は向かって右から倒そうとすると雰囲気を察したのかトーマがレーザーロングライフルで左の機体を射抜いた。俺もスラッシュスレイブの胴体部ギリギリまで展開を遅らせたレーザーソードで切り裂く。


 この安易な飛び込みはよもや先日の演習の2番機ではなかろうな。いや、アオイ信者ならアオイの命令を聞かずして飛び出したりはしていないか。


「スラッシュは1枚裏から出てこないと驚異にはならないな」

「基本を忘れて倒せると思われていたのは流石に心外だね」

「しかし、開幕で即撃墜とはかなりの腕前だな」

「スナイパーからすれば寧ろ基本通り。敵の油断のお陰だね。それよりも開幕の狙撃と変わらないタイミングでインファイトで敵を倒す方が凄いと思うよ」

「来るぞ」


 余韻に浸っていると、バーストが両肩部に追加装備されたミサイルウェポンを一斉発射する。だが、一足遅い。前線が切り込む前の弾幕ならいざ知らず、向き合った相手に当てれる弾速ではない。俺達を侮った故の行動だろう。

 俺達に届きそうなミサイルを予測して先にそれだけを撃ち落とす。

 そして余波の爆発に対しても魔法で対処する。


「【ディストーション】」


 上級空間魔法で任意に空間を歪ませる魔法。爆発によって起こる爆風を空間を歪ませて方向を制御する事で自機への被害を軽減する事ができた。他にも意図的に外したレーザーを曲げる事も可能だが、誤魔化し方が思いつかないので現在の所は封印しておく。


 爆発の中からレーザーマシンガンを連射するアサルトスレイブが迫ってくる。せっかく視覚を制限出来たのにわざわざ音を立てながら接近するとは……これでは【イーグルアイ】がなくとも位置が分かる。


「この動きからスラッシュが飛び出してこれば難しい所だが」


 高機動で前線を引っ張り、ラインを押し上げるのがアサルトの特徴だが、肝心の続く機体が無ければ驚異にはならない。


 アサルトのレーザーマシンガンを回避し、レーザーライフルで牽制を入れて間合いをとる。

 間髪入れずにトーマの通常出力のレーザーライフルがアサルトを襲うがブラストがフォローに入り、対レーザーフィールドを展開してトーマの攻撃を無効化し、アサルトを守った。


 ブラストは実弾兵器が主体である為、エネルギーの余裕を活用した防御フィールドを広域に展開出来るのだ。


 俺はレーザーライフルを敵機の足元に連射して体制を崩させてトーマの後退を援護する。


 フォワードは敵の注意を引くのが役割であるが、後衛アタッカーが攻撃しやすい様にフォローを入れる事も重要な仕事である。


 そこに後方から敵スパークのロングレーザーライフルが俺の機体を狙う。


 タイミングは悪くないが【イーグルアイ】を発動した俺には敵意が読み取れる。あえて隙を晒した方が裏切らない攻撃が来るだけでなく、狙い通りで外した時の心理的ダメージも狙えるメリットがある。


「流石にAクラスだな、しっかりとフォローを入れてくる」

「教科書通りだね。ただ、僕をフォローしながら完璧な回避ができる君なら余裕で対応できるよ」

「流石に余裕では無いが……正確故に読みやすい」


 俺がブラストのミサイルを撃ち落とすと、再び視界が奪われ、アサルトが前に出てくる。

 これは敵のトーマを狙ったコンビネーションアタックだった。


 トーマがアサルトにしゃがみ撃ちを構えると後方の敵スパークはトーマ機に対して銃口を向けていた。


「しまった、乗せられたか」


 トーマも恐らく優秀なセンスティブなのだろう。スナイパーに反応している。しかし、スパークの狙撃を回避すれば、アサルトに張り付かれる。高機動のアサルトに対してスナイパーでは対処が難しい。


(心配するな、アサルトを撃ち抜け)

(了解)


 その瞬間、俺とトーマの心がリンクしたようだった。


 トーマがアサルトを撃ち抜くと同時に俺は敵機スパークの射線に飛び出した。狙撃に対して俺は2本のレーザーソードを地面に突き刺し、【デストーション】を併用して高エネルギーライフルを2つに割って狙撃を防いだ。


「逃がさない」


 レーザーソードを前宙させながら抜き、急加速した。スパークの懐に飛び込み、右のレーザーソードでライフルを切り、左のソードで胴体部を切りつけ撃墜した。


 狙撃機体には張り付いた攻撃。基本通りだ。


「なんだ今のは?」

「レーザーを切ったのか?そんな事出来るわけない」

「いや不可能ではない」


 驚きを隠せないギャラリーに対して、アサヒが答え、解説を続ける。


「レーザーストライクと呼ばれるテクニックだ。通常のレーザー兵器に対してレーザーソードの刀身固定のフィールドで方向を逸らす事は不可能ではない」

「そう言えば氷川くんもマイちゃんと対戦した時にやってたね」


 アオイも過去にアサヒがやっていた技術として見た事がある様だ。


「あぁ、そもそもレーザーソード同士の鍔迫り合いが生じるのだから理解は出来るだろ。だがスパークの高出力のロングレーザーライフルに対して2本分のレーザーソードで切り裂けるとは思えないが」

「タイミング的なものかな」


 アオイも、特殊な技術への関心は高く、気になる様子である。


「正直そこは分からない。だが、事実として奴はそれをやってのけた」

「技術だけでなく、連携攻撃に対する読み、反応速度、土壇場で成功させる精神力、ユーゴくんにはそれがある」

「あの場合、味方機を犠牲にしてでもスナイパーを落とすだけでも十分だよな、マイはどう見る」


 ゴウはじっとモニターを見つめるマイに対して声をかけた。


「なんと言うか異質なテクニックよね、彼からすれば味方さえも自分の武装の一部として扱っている様にも見えるわ」

「俺達には無い戦い方をする奴だな。もう既に百戦錬磨みたいだな」


【ディストーション】は攻防に使える万能魔法だが、これ以上の使用は控えた方が良いだろう。幸いやり過ぎと思ったが理論上は可能な技術だった事が救いだ。身体が少年に戻ったせいで熱くなりやすくなっているのかもしれない。


 残るバーストが俺に近接攻撃を仕掛けるが重装備のバーストでは俺のアームズを捉えることは出来ない。


 新型で高性能化していても、特化型の苦手分野では旧型に対しても苦しい展開となる。


 トーマがバーストの肩に装備されたミサイルウェポンを破壊すると機体は大きくバランスを崩した。

 バーストの防御フィールドはエネルギー効率が良いとは言えず常時展開されている訳では無い。攻撃にエネルギーを割くとフィールドは維持出来ないのだ。その隙をトーマは逃がさなかった。


 機動兵器はブレインアシストの都合上、機体の重量が予期せぬ形で変わると適応にラグが生じる。特に重量が重たい機体程、ラグが大きくバランスを崩しやすくなる。バーストは、被弾によるバランス管理が難しい事が欠点として挙げられるだろう。


(後は任せたよ)

(了解した)


 俺はその隙を逃さず、バーストに対して飛び蹴りで転倒させる。そのままレーザーライフルを密着させ、機体の四肢を撃ち抜き戦闘不能に追い込んだ。


「すげぇな、あの二人」

「あのCクラス、旧型でスレイブ相手に数的不利でも無被弾で勝ちやがった」

「アイツ実は大学生なんじゃないか?」


 色んな言葉が飛び交うが、俺達の耳に直接入ることは無い。


「やったねユーゴ」

「君のお陰だ、本当に感謝する」

「ルームメイトだから当然の行いをしただけだよ」

「本当に良い奴なんだな、君は」


 機体を降りるとそこには四天王が待ち構えていた。


「やったねユーゴくん」

「見苦しい争いを見られてしまったな」


 真っ先に声を掛けてきたのはマイであった。

 後方から機体を降りたトーマも寄ってくる。


「四天王のみんなだね、ユーゴは本当に凄いメンバーに囲まれているね」

「いや、囲まれたのは今日が初めてだ」

「小川トーマだよな、お前もこんなに強かったんだな」

「村上くん、ありがとう。でも僕はユーゴのアシストに回っただけで、ユーゴが居ないと何も出来なかったよ」

「謙遜することは無い、お前もスナイパーとしては恐らくアオイと同クラスの能力、いやポジショニング、狙撃のタイミングに関してはアオイよりも上かもしれない」

「そうですよ小川くん。私もとても参考になりました」

「水無月さん、水無月さんと僕では比較するのも恐れ多い」


 何故ここまで謙遜する。仮にも数的不利のデュエルでスナイパーと言う自衛能力の低い機体で最後まで生き残り勝利を得たのだから満点で良いはずだ。


「僕は、センスティブの適正が高いだけのAランクで、成績は最下位だからね。でも今日はとても自信に繋がったよ」

「今日の動きを見れば、彼らの方が心配だと思うが」


 俺はウィンドウ越しに反対側の部屋で悔しがるアオイ信者に目をやる。


「彼らは水無月さんへの気持ちが暴走して心に隙があっただけで、僕なんかじゃ足元にも及ばないよ」

「謙遜もここまで来ると嫌味になるぞ。お前達は奴らに勝った。油断で敗れたのも実力だ」

「アサヒの言う通りだぜ、自信を持てよトーマ」


 ゴウは元気づける様にトーマの背中を叩いた。

 これまでは優しい性格が裏目に出て成績が伸ばせなかったのだろう。

 他人を蹴落としてまで成績を取ろうとしなかった事が成績として残らない要因と予測される。

 今回は俺が不当な圧力に晒されていた為、持っている力を発揮して俺をアシストしてくれたのだろう。

 彼には本気で背中を預けられると俺は思った。


「しっかしユーゴくん」

「なんだ?マイ」

「早速信者に絡まれたのね、私というものが有りながら」

「後半の意味は分からないが、俺から何かを吹っ掛けたつもりは無い」

「私のせい?」

「気にする事は無い、どうやらCランクの俺が、学園のアイドル水無月アオイと親しげに話していた事に対しての陰性感情であったようだ」

「ユーゴくんまで、そんな事を言うの?」

「掴めない奴だな、まるで自分の強さを隠す様にふざけた発言を真顔で放つ」

「いや、真面目な顔して面白い事を言うのならアサヒも同クラスだぜ」

「なんだと?俺は至って真面目だが…」

「だから余計に笑えるんだよ」


 今回の戦闘では【ディストーション】の運用に成功した事と新型の特性を把握出来た貴重な体験であった。

 また、こちらの世界でも魔法のセンスのある者と出会った等、とても有意義な戦闘であったと言える。


 だがその中で別の男の闘志に火をつけてしまった様だ。


「ユーゴ、俺とデュエルをしてくれないか?」

「アサヒ……しかしお前は怪我を」

「操縦は可能だ。やはりお前はただものでは無い。その力の全力が見たい」

「かーやっぱそうなるよな、俺もアサヒとユーゴの戦いが見てみたいぜ」

「ユーゴくんも大変だね、でも私も見てみたいな」

「あら、アオイの方も満更でないのね、美少女学年首席と奇跡の天才編入生の大恋愛、如月マイちゃんに入り込む隙はあるのか?次回、アサヒ秒殺されるにご期待下さい」

「なんだその次回予告は、少なくとも俺は秒殺などされん」

「それよりも大恋愛ってなによ」

「アオイは滅多に下の名前で男子を呼ばないよね、それなのにもうユーゴくん呼ばわり。不思議でしょうがないわ〜」

「そう言えば…」


 よく分からんがどんどん注目の的となってしまっている。だが、堕天騎士アサヒ……真面目に言うと笑えるが、強さは本物だろう。こうなれば乗りかかった船だやってみるか


ただ明日で良いだろうか?まだ部屋の片付けが終わっていないのだ。

やっとメインタイトル通りに無双するシーンをかけました。中々状況を説明しながら話を進めるのって大変ですね。

出したかったメインキャラを大体の登場させましたが、複数人を表現するのは大変極まりないですね。

魔法も極力魔法のみで敵を殲滅するのではなく、機動兵器の操縦をアシストする事をメインにして行きたいと思います。

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