ユーシャとルルッカ、夢の中
私たちはひた歩いた。途中の木陰で干し肉とドライフルーツの昼食をとり、道中二人でしりとりなど嗜みながら、なんとか日暮れ前に初日の目的地であるオルセー泉に到着することができた。
テントを張り、湧き水を使ってごはんを炊き、野菜炒めを作って二人で食べた。後片付けを終えて焚火のところへ戻ってくると、ユーシャさんがじっと闇夜に目をこらしているのに気付いた。
「どうしました?」
ユーシャさんは荒野を指さすと、ひそひそ声で言った。
「あそこ、何かいる」
途端に空気がピリついた。すわレムルスか? しかし、ユーシャさんが指さした方向に目をこらしてみても、私には何も見えない。
「獣ですか? レムルスですか?」
「獣なのかなあ? でもあんな獣いるかな。レムルス見たことないからよくわかんないな」
「ど、どんな雰囲気ですか?」
「うん、なんか、グゴッ! ギューン! スヴァーッ! ヴィシャーッ! って感じ」
まるで伝わってこない……。
「あ、動いた……遠ざかってく。なんか大丈夫そうだよ」
どうやら危険は去ったらしい。私はホッと胸を撫でおろした。
「それにしても、すごいですねユーシャさん。私もかなり夜目は効くほうなんですけど……。全然見えませんでしたよ。あの辺ですよね?」
私はユーシャさんが指で示していた方向を指さして聞いた。
「うん。その方角。五キロくらい先」
夜目とか関係なく見えるわけない……。
「……ユーシャさん、視力っていくつですか?」
「はかったことないからわかんないなあ。なんで?」
「いや、なんでもないです……。とりあえず明日もまた歩かなきゃだし、今日はもう寝ましょうか」
「わかった」
私たちはテントに入り、下にマントを敷いて、そこに横になった。
「それじゃ、ランプ消しますね。おやす……」
「すぴー、すぴー」
早い。もう眠ってる。寝つきいいなあ。
私はユーシャさんに毛布をかけて、ランプを吹き消した。それから自分も毛布にくるまり、目を閉じた。
「ううーん。むにゃ、むにゃ……」
まどろんでいると、ユーシャさんの寝言が聞こえてきた。
「ねえ、見てルルッカ。大きい鼻くそがとれたよ、むにゃ……」
夢の中で私に何見せてんの……。
「ほら、虎くらいある」
大きすぎるわ。