表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

サムライカッティングと胃薬の頭

 さて、今回はキャベツの話ですね。

 今回もレタスの時と同じかそれ以上に話すので覚悟してください。


 キャベツ。日本語では甘藍とか玉菜とか言ったりもする植物で、煮物やサラダ、炒め物を中心に食用として利用することの多い子ですね!

 英語で書くとcabbageですが、これはフランス語のcabocheという言葉から来ており、さらに遡るとラテン語のcaputという言葉まで戻れます。

 caputは「頭」という意味があり、capとかcaptainとかcapitalとかと同じ語源ですね。

 おそらくキャベツの玉みたいな葉が頭っぽいので名付けられたのでしょう。


 オランダ語ではkoolコールと呼び、キャベツを使ったサラダの一種である「コールスロー」は、koolのsaladを略したものが語源となっています。


 さらにフランス語ではchouシューと呼び、形が似ていることからシュークリームの語源となっていることで有名ですが、かわいいものや愛らしいものを表す言葉としても使われます。

 例えば「mon chou」と言ったら、直訳すると「私のキャベツ」という意味ですが、意味合いとしては「私のかわいこちゃん」くらいの感じでしょうか。

 もっと言えば、アクセサリーの「シュシュ」はフランス語で書くと「chouchou」であり、これも「chou」という言葉の「かわいい」という意味からつけられたという説があります。

 ちなみに英語でシュシュはスクランチーって言います。

 そこのキャベツ、頭にキャベツついてるぞ。ってことになりますね。



 そんなキャベツたんはバラ類アブラナ目アブラナ科アブラナ属の植物です。

 ……おや?


 前回紹介したレタスはキク類キク目キク科アキノノゲシ属でしたね?

 そう、キャベツとレタスは科どころか類から違うんです。

 ちなみに、キク科の他の植物としてはタンポポやヒマワリ、ゴボウなどがあり、アブラナ科で有名どころと言えばコマツナやワサビ、ブロッコリーなんかがいます。


 つまり、分類的にはレタスはキャベツよりもゴボウの方がよっぽど近いし、キャベツはレタスよりもむしろワサビに似てるんです。


 では、どうしてあんなにも見た目が似ているのでしょう?


 普段よく見るレタスとキャベツは、どちらも葉が玉のように丸くなっています。

 あれは結球という現象で、葉の表と裏で成長の仕方が違うことであのようになります。ハクサイとかも同じですね。

 彼らは特定の条件下においては、葉の裏側(玉になった時に外に来る方)の方が表側(内に来る方)よりも速く成長するようになるため、葉がだんだん立ち始め、最終的には丸くなっていくようです。


 その条件には栄養分や植物ホルモン、日照条件や温度など様々な要因が関係すると考えられていますが、少なくともしっかりとした玉を作るためには、外側の葉が内側の葉に当たる日光をしっかり遮ってやることが必要だとされています。


 では何故彼らは結球するのかという点ですが、これは非常に難しい質問です。

 少なくとも現在の時点では、おそらくあの部分が栄養を貯蔵する器官なのであろうと考えられており、結球するまでに光合成などで蓄えた栄養が詰まっているとされています。

 ですが、だからと言ってどうして結球するのかは、キャベツに聞いてみないと分かりません。

 何ならレタスに関しては、サニーレタスやサンチュのような結球しない品種も多く存在します。


 おそらくは、キャベツとレタスに共通する何か問題点があり、それを解決するために同じ答えに行き着いたのだろうと個人的には思っています。


 ちなみに、玉になっているキャベツを半分に割った時、芯と呼ばれる部分は茎です。

 新しい葉は玉の内側にある小さくて黄色い葉なので、しっかり成長しているキャベツほど中身がぎっしり詰まっているということになります。

 キャベツを買う時に、ずっしりと重たいものを買うと良いと言われるのはそのためですね。



 さてと、まあ結球に関してはこんなものですかね。キャベツの話に戻りましょう。


 キャベツはアブラナ科の植物だと言いましたが、アブラナ科の植物は硫黄を含む成分たちをたくさん作ります。

 硫黄を含む成分たちっていうのは結構珍しくて、植物の中でも特にアブラナ科とユリ科(中でも特にネギ属)の子たちがよく作ることで有名です。


 硫黄を含む成分たちは特に辛味や風味に影響するものが多いです。大根おろしやワサビ、カラシ、マスタードはアブラナ科の子たちですし、ニンニクやタマネギ、ネギなんかはネギ属の子たちなので、納得ですよね……。

 ちなみにトウガラシはナス科で、辛味成分のカプサイシンは硫黄を含まない成分です。個人的には味も少し毛色が違うように思いますが、皆さんはどう思いますか?


 で、キャベツちゃんも硫黄を含む成分を作るわけなのですが、中でも特に有名なのは医薬品としても使われるあの成分ですね。


 キャベジン、です。


 キャベツから見つかったのでキャベジンと名前をつけられました。別名ビタミンUとも呼ばれる成分ですが、正式にはビタミンではありません。

 胃酸の分泌を抑え、胃を保護してくれる働きがあるので胃腸薬によく入ってますが、熱に弱く水に溶けやすい成分ですので、生食で摂取するのが良いでしょう。

 とんかつにキャベツの千切りが添えられているのも、キャベジンで胃を守ることができるため理にかなっているのだとか。


 ちなみに、一説によるとキャベツの千切りは海外では「サムライカッティング」とも呼ばれ、珍しがられているとか?

 ちょっと私は聞いたことがないのであやしい情報ですが、もし何かご存知の方がいたら情報提供お待ちしてます!


 他にもキャベツにはイソチオシアネートという硫黄を含む成分が含まれておりまして、この成分には抗がん作用があると言われております。

 アメリカ国立がん研究所のデザイナーズフード計画においては、がん予防の可能性が高い食材として最上位のにんにくに次いで名前を挙げられています。

 だからと言って食べたら必ずがんが治るとかそういう話ではありませんが、少なくとも興味深い研究対象として注目されている植物なんですね。



 今更ですが、学名はBrassica oleracea ver. capitata といいます。


 いやなんか多い!?

 と思った方もいるでしょう。解説します!


 Brassica oleraceaだけだと、実はヤセイカンランという別の植物のことを指します。

 地中海沿岸の西ヨーロッパやイギリスの辺りによくいる子なのですが、このヤセイカンランは葉の大きさや形が変わりやすい性質があります。

 人間がこの植物に目をつけ、栽培を始めると、このヤセイカンランは色々な形に変わっていきました。キャベツはその一種というわけです。


 キャベツのようにvar. のついた学名は、つまり元の植物が変化して生まれた変種だよという意味になります。

 ちなみに、同じくヤセイカンランから生まれた変種としては、ケールやブロッコリー、ロマネスコなんかが挙げられます。


 ブロッコリーはキャベツの兄弟分だったんですね!


 Brassicaは「煮る」、oleraceaは「畑の、菜園の」、capitataは「頭状の」みたいな意味があるようです。

 学名はラテン語なので当然ではあるのですが、ここでもやはりcapi- ですね!




 えーと……まだまだ話し足りないのですが、気づいたら字数が大変なことになってるので、今回はこの辺で……。


 次回は「じゃあハクサイはどっちなん?」をテーマにお送りします!

 それではみなさんまた次回!

 良い植物ライフを!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ