入学式
王都フォースピア。今日この国においての一大イベントと言っても過言ではない貴族院ファスピアで新入生の入学式が行われる。
国の一大イベントとは言っても平民には全く関係はないのだが、そこは王都だな。半強制的にお祭り状態になってる。
俺はそれを馬車の中からチラチラと見るが可哀想などという感情は出てこない。むしろこの日は大手を振るって遊ぶことができるので馬車の中で「いいなぁ」と指をくわえて見ているしかない。
俺の父様がおさめてる領都にもこういうのが欲しいと思うのは贅沢だろうか。
まぁそんな事は今は関係ない。
今日は貴族院ファスピアで入学式がある。
一応俺は入試で特待生枠に割り込んだみたいだから入学式に行かなくても良かったんだが、そこは元日本の学生を経験したこともあって式を重んじていたから遅刻せずにフォースピアへと到着して出席するつもりだ。
そうこうやってるうちに大きな門が目の前にあった。
「入試の時も思いましたがデカイですね、父様!」
「そうだね。貴族院のこの門は【一の槍】の勇者様が生涯をかけて作った学校だからね。しかもここは有事の際には軍の作戦司令部にもなるから他の建物よりも一際大きく作ってあるんだ。」
「ほぇ〜そんなんですね!」
この国フォースピア王国は4人の槍の勇者様と呼ばれる過去の偉人達が魔王を打ち滅ぼして作ったかななんだそうだ。4人も槍の勇者がいても意味ないんじゃないかと俺は今も思ってるんだが、この国の人たちはそこに疑問を抱かないから不思議だな。一回それを父様に聞いた時も「何を言ってるんだこいつ」みたいな憐れみの顔で見られてからはそのことには触れない様にしてる。
そうして父様と貴族院の建物の話や歴史、授業の話をしているうちに貴族院の学生用入り口に到着した。ここからは父様と別れて俺だけで教室まで行かなくてはならない。
俺は父様に後で会いましょうと言い、学生用入り口に向かうと各教室名とその下にズラーッと色々な名前がツラツラと書かれていた。
「まぁ僕のは簡単に見つかったな」
俺は特待生なので簡単に見つかった。
特待生は一学年に15人と決まっている。そのため他のクラスと比べると圧倒的に人数が少ないため、名前の書いてある掲示板を見れば一目瞭然で自分のクラスがわかるというもんだ。
「3回の端か…」
特待生っていつの時代、どこの世界でも隔離されるんだなぁ、と独りごちり俺は教室へと向かった。その途中何人かにごしょごしょと陰口みたいなものを言われたが、その全てを俺のイケメンスマイルで返したら一瞬驚いて「なんだよ!」と怒りながらどっかいった。
数分歩くと前世の学校の教室みたいに何年何組みたいな出っ張ったクラス表示板が見えてきた。
「1年特待生とかそのまんまかよ…」
これまで歩いてきた時にはクラス表示板にはファスピア組とか、トゥワイスピア組とか格好いいの書いてあったのに特待生だけそのまんまとかひどくない?と心の中で思いながら俺は教室のドアをガララっと音を立てて開いた。
「おっ!君が2番目みたいだね!」
ドアを開閉1番声をかけてきたのは何故か窓際に腰掛けた金髪イケメンのTHEナルシストっぽいやつだった。
「あ、あぁこれからよろしく。僕の名前はマンダリン・ドラキアラだよ。」
少し戸惑ったがなんとか自己紹介ができた。
ナルシストの方は俺の名前を聞いた直後少し睨んで俺の方を見ながら投げやりに挨拶をしてきた。
「ドラキアラって……なんだよ、おれの名前はグエン・ギュリアスだ。」
その簡単な自己紹介でもう終わりだとでも言いたげに話をぶった切り、ブスっとした表情を貼り付けて窓際に座り直した。
おれは不快な気持ちになったが、元からこのナルシストとは友達にはなれそうにないと思ったからその後こいつと話すことはなかった。
その後続々と生徒が入ってきておれも自己紹介をするが、何故か名前を言うとみんな不機嫌になり俺以外でコミュニティが出来上がってしまい完全にぼっちになってしまった。
そうして俺とそれ以外というクラス内の状態になっている中に先生らしき大人が入ってきてみんなを外に出すと入学式会場へと案内してくれた。
俺は何が何だか分からないがどうやら嫌われてるらしいというのをヒシヒシと感じながら会場へと足を進めるのだった。