クズの儀式
俺の転生初夜はなぜか盛大に祝われた。
正確な理由は不明だがどうやら俺は雷に打たれたのに生きていたから、という事らしい。
俺としては、俺が空から降って来てマンダリンに激突したから開いたからできた天井の穴で決して雷ではなかったと思うのだが、はたから見ればそれは雷のようだったのかもしれないと納得することにした。
「いやぁ、それにしてもよくマンディーは生きていたな!さすが私の息子だ!」
「ええ、そうね!やっぱりマンディーは神に愛された私の息子ね」
両親共にお互いで『私の息子』を強調して、視線をバチっと交わしたところを見ると意外と仲は良くないのではないかとさえ思ってしまう。
それでも親がいて、金持ちで、2人とも美形だとマンディーも助長しちゃうのは分からんでもないなと思う。
「僕は何があったか分からなかったんですが生きててよかったです。」
この発言を聞いていたこの部屋にいる全員が一瞬誰だこいつ?とばかりに疑問符を浮かべて首をかしげた。
流石に猫かぶりしすぎたか?と焦ったが追求された場合の言い訳も考えてるから大丈夫!
「そ、は。本当に生きててよかったなぁ!まあ今日はお祝いだから美味しいもの食べて明日に備えなさい!」
「明日?なんかあるんですか?」
そりゃ激甘両親だから追求なんかはしてこないよな。
それにしても明日なんかあったっけか?記憶を辿ってると
「明日はマンディーのスロット解放の日じゃないか。いつも楽しみにしてただろ?」
【スロット解放】という言葉を聞いて少しだけ頭痛がしたがすぐに収まった。治ると同時にスロット解放日についての情報が俺の頭の中に昔からあった事を思い出した。
てか何か思い出すたびに頭痛がするのは勘弁してほしい。
スロット解放とは生物が成長する度に増える能力の枠のことである。
その能力の枠には個人差が有り人族で平均を出すと生涯で大体4回の能力枠が増える日がある。数回あるスロット解放日に幾多のスロットが埋まると生物としての格が上がるらしい。
要は枠が多く、能力がたくさんある人ほど生物としての格が高いということだ。
そのスロット解放日が俺は明日だということだ。
1階の枠解放で何個の能力が得られるかとても楽しみだ。因みに父様の時は2回目の枠解放で2個の能力を得ることができたらしい。
「そういえばそうでした!忘れてました!きっと雷のせいでしょう」
なんか齟齬が起きたら全部雷のせいにしてしまおう。そう決めて俺は返答をする。
そうして両親と話をしながらその日の祝いは終わり、次の日【スロット解放日】を待つことになった。
♢
「わぁ〜父様、凄いですねー!なんかもう凄いですねー!!」
自分で言っててなんだが、この景色を口に出すのに語彙力が足りなくて頭の悪い奴の発言になってしまったことは謝る。だけど凄いしか口から出てこないんだからしょうがない。
マンディーの記憶では知ってたけど、実際に見て見るのでは違うのだとはっきりわかる。
今僕はウチの馬車に両親と共に乗って教会に向かってる道中だ。
教会までの道のりは家を出て街中を突っ切り街の中央へと向かうというものだ。家は街の南側貴族街の中心にあるから教会まで片道で20分くらいかかる。
僕は馬車の窓から身を乗り出して街中の風景をみている。
「マンディー、はしたないからやめなさい」
母様にそう言われて僕は慌てて馬車内部に設置さらてるフカフカの椅子に座り身嗜みを整えて母様に向き直った。
「はーい、母様!」
やっぱり外面だけはいい様に見られたいからな。
たとえそれが普段のマンディーからしたら以上だとしてもな。
やっぱり母様も父様も誰だこいつ?と思ってるんだろな。口には出さないけどそんな顔してるわ
移りゆく街並みを馬車の中からジッと見てるとやっと馬車が止まった。
「着きましたか?」
「あぁ着いたぞ、」
僕の問いかけに父様が答えてくれた。
父様が先に行者に降ろさせてもらうと続いて母様、僕の順に馬車を降りる。
この世界に来て初めての異世界地面に降り立った。
モワッとした街中の空気、人々の喧騒、照りつける日差し、そして確かな地面の感触。馬車から降り立っただけで一度にたくさんの情報が入って来た。
その情報に……いや、というよりは外の暑さにクラッと来たが、なんとかこらえて教会を見る。
教会は三角帽子の屋根に十字架みたいなものがついたこじんまりとしたサクラタ○○ァミリアみたいな建物だった。
中に入ると外観とは違って黄金の内装で、クリスタルがちりばめられた謎のオブジェが部屋の中央に立っていた。
「わぁスゲー」
と思うと同時になんて趣味の悪い金持ち趣向の内装なんだろうかと思う自分もいた。盗まれたらいいのに…
「これはこれは、領主様。お待ちしておりました。」
「あぁ教会長、今日は倅を頼む」
教会長と父様が挨拶を交わすと父様に背中を押され前に出された。
「お話しはかねがね伺っております、マンダリン様。本日はよろしくお願いしますね。」
「はい。頼みます。」
どんな話を聞いたんだろうな…
両親の激甘話か?使用人達の劇渋話か?
まあいいや。
教会長に連れられてクリスタルがちりばめられたオブジェの方まで連れられて行った。
「マンダリン様、これからあなたにはスロットの儀式を行ってもらいます。これを行うことであなたに最低0個能力が与えられます。この儀式はアレに手をついて《我能力を欲する》と唱えてください。すると力が貰えますからね。」
「うん、わかった。」
説明を聞きながらオブジェの前へと進むと、オブジェの5m以内には入ることが教会長は入らなくなった。
「ここから先はあなただけの様です」と言い背中を押され、僕は1人で進む。
進んでオブジェに手をつく。
ズワッと体から力が抜けオブジェから手を離せなくなる。
光が俺の周囲に迸ると力の抜ける感覚はなくなりオブジェから手を離すことができた。
「なんだったんだ!?」
後ろに控えていた教会長が俺の横に歩み寄って来て「これで終了となります」と言えば両親の元へとって行って貰えた。
俺はそこからの記憶が少しあやふやになってるからあまり覚えていないが、スッキリした時にはベッドの上で寝転がっていた。