残朱(ざんしゅ)
もう
これで終いだ。
私にできることなど既になく。
仲間はみんな倒れてしまった。
最期まで、それぞれ与えられた刀を捨てる奴なんていなかった。
それ故に。
敵は薄ら笑いを浮かべて
軽くその得物を振るっただけで
草でも刈るように
仲間の命を刈り取った。
…同じ人間でありながら
守るものが違えば
従うものが異なれば
こんなにも
無慈悲になれるものなのか。
赤い袴の女が2人
小さな人影を両側から抱え
屋敷から姿を現す。
姫…
声を失ったこの喉から
擦れた息だけが抜けてゆく。
地面に投げ出された華奢な体躯は
もう動かない。
絹糸のようだったその髪を
和紙のように清く繊細なその肌を
忌々しい朱とまがまがしい裂傷が汚す。
その亡骸を目前に
己の刀を地に突き立てる。
側へ行きたい
命を賭しても守ると誓った貴女の側へ。
私が動き出したのをみとめた赤色は
手も出さず
冷えた眼光をたたえたまま。
朱に染まった刀を握りなおす気配だけを感じた。
感覚の弱った脚を叱咤して
ふらふらと歩み出す。
左肩に貫く衝撃を。
これは矢か
だが構うものか。
痛みよりも先行するのは
ただ前進する思考。
膝を落として
刀はこの手を滑り落ちる。
貴女を守れなかったものなど
もう必要ない。
私が残る
意味などない。
殺せ
この息が
僅かに吐き捨てる
朱に濡れた銀色が
ゆらりと上がるその気配に
私はそっと目を閉じて。
夢で見た一場面。
貴方への忠誠心はいつまでも…




