4話
四話
『はるかちゃん…。はるかちゃん。起きて。もう、朝よ』
いつもなら、目覚ましで必ず起きる晴香だが、なぜか起きれなかった。それは、もう読者の皆さんなら察しがついていると思いますが、まだそれは伏せておきましょう。
『んんー…。』
大きく伸びをしながら、起きる晴香。
普通の小説ならば、ここで《晴香は目覚めの良い朝を迎え、小鳥のさえずりが聞こえる。気分は軽く鼻唄まで自然と出てしまう。》なんて、書きたいところだが、実際は(たまに使っていた紙おむつではなく)昨日買った布おむつを身につけていた。
しかも、おねしょシーツまでひいてあり、おねしょすることが当たり前のようなそんな状態を晴香は思い出し、恥ずかしさがこみ上げます。さらに追い討ちをかけるように、“びちょっ”と、肌に張り付く濡れた布の感触…。
そう、晴香はおねしょしています。それは、いつもの紙おむつにするときのおねしょに比べ、圧倒的に湿気が多いため、余計におねしょを強調されているみたいで、晴香は顔を真っ赤に染めます。
『あら、はるかちゃん。早速汚しちゃったみたいね。大丈夫。もう、私ははるかちゃんのママだからね?それに昨日もお医者さんが言ってたように、ストレスのせいなのよ。だから、気にしないでね。』
優しく微笑む三戸の笑顔は、朝日を受けてより一層優しい雰囲気で包み込むようなものであった。それは、並大抵の女性には出せないものであって、“母”になってから子供へ向ける“愛”がなくては絶対に出し得ないものである。三戸はあの日以来、どんな形であれ“晴香を愛すること”以外にあの事故の傷を癒せなくなっていた。それが、反動となってこのような、表情を見せることができるのかもしれない。
そんな、優しさに包まれた晴香は恥ずかしさのせいと、“寝起き”という、頭の回転が鈍くなった状態で段々と、晴香自身の時の歯車が逆回転し始めようとしていた。もちろん、それは三戸の笑顔だけでなく、昨日貰った薬のせいであり、三戸の笑顔は単なる引き金であった。つまり、晴香は恥ずかしさの極限で、愛を受けたせいと、これから起こることのせいによって、“赤ちゃん返り”を始めてしまうということであった。
その後、おむつを外して普段通りの格好になった晴香は三戸と家で過ごしていた。
言い忘れたが、今日は休日である為晴香の学校は休みだ。今までは家族の死のせいで、学校には公欠をさせて貰っていたが、明日からは学校に行かなければならない。
『晴香ちゃん、ママのお料理手伝ってくれるかな?』
こんなにフレンドリーに話せるのは、ここ数日間の三戸の頑張りのおかげである。特に今日の朝のあの笑顔は、晴香と三戸が打ち解けれる一番の手助けとなった。そのため、晴香も三戸と親子のような…いや、すでに親子だが、そんな会話もしばしば耳にするようになった。
『もちろん。何もすることないから、ママの料理手伝う。お昼ご飯早く食べたいし…』と、既に12:20を回っていて丁度お昼時であった。
『はるかちゃんは、いい子ね。じゃあ、はるかちゃんは、お皿並べてちょうだい。』
と、簡単な仕事を任せる。
などと、晴香は簡単ながらもお昼まではなにしていたため、下半身は全く意識していなかった。そのため、朝から一度もトイレに行ってないことにも気付かなかった。
『さて、できたわ。はるかちゃんが手伝ってくれたおかげで早くできわね。さ、食べましょ。』
と、晴香が箸を並べてるうちに料理が並ばられあとは座るだけになる。
『いただきます。』
声をそろえて、そう言うと晴香はスープから口をつける。すると、一気に自分がトイレに行きたいことに気づく。しかし、いつもならこの程度の尿意なら、食べ終わった後でも十分間に合う程度だった。そのため、気にせず食べていたが、普段に比べ圧倒的に尿意の高まり方が違った。勿論、普段より我慢できないのは言うまでもない。
『ちょっと、トイレ…』
そう言って、立ち上がってトイレの前まで行くと、晴香の動きが止まる。そして、両足からは、黄色い筋が流れ始めた瞬間には既に足と足の間からも一本の筋となって、足元の水溜りを作る液体が流れ始めた。
そう、つまりトイレの前でお漏らししてしまったのだった。おねしょは意識がないからまだしも、お漏らしは精神的に晴香にダメージを与えた。
そのまま、晴香は何も言えず足を震わせながら固まってしまう。
『あらあら。はるかちゃん。おもらししちゃったのね?でも、いいのよ。ママははるかちゃんのことが大好きだから、お漏らししたって怒らないし始末もしてあげるからね。さ、スカートの端を持っててね。今濡れたパンツ脱がせてあげるわね。』
そう言って、晴香のお漏らしの後始末はおねしょの時より更に屈辱的なものであり、とても幼児めいていた。
その日はもうお漏らしをすることはなかった。しかし、一度お漏らししてしまった不安はぬぐえないだろう。
明日の学校は普段とは違うことになることは間違いない。