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2話

二話


次の日の朝。昨夜は遅くまで話していて、しかも久々に長く話したので疲れていた晴香は遅くまで寝ていた。そのため、履いていたおむつ(水戸はこの時点ではまだ知らない)もパンパンに膨れ上がっていて、一目でおねしょしたことがわかる。


『晴香ちゃん。もう、朝早いわよ。そろそろ起きましょ。』

といって、ドアをノックすると静かに入ってきて、晴香の布団をまくる。


その時、丁度晴香も目を覚まし捲れた寝巻きのスカートから見える黄色く染まって膨らんでるものがあらわになる。この、普通ではあり得ない状況に、一瞬時が止まったかのようにお互い固まる。


『ぁの…。違くてこれはその。だから…。ぇーと…。』と、まだ起きたばかりの頭で必死に言い訳を考えるが、頭が真っ白になって何も出てこずに戸惑っていると

『ふふふ。いいのよ。晴香ちゃん、後で…この事も教えてほしいな。昨日の夜話した時は言ってなかったもの。でも、こんなこと恥ずかしくて初対面の人には言えないわよね。でも、私は晴香ちゃんのママだから。ね?』

と、うまく晴香を傷つけない言葉を選びながらおむつを替えるように促す。

『晴香ちゃん。おむつは昼間もしてるの?』

なるべく優しく話しているが、“おむつ”という単語が晴香のような年頃の女の子にとってはとてもはずかしい。

『昼間はしてない…。』

『そう。じゃあ、早く着替えちゃいなさい。私は…うんん、ママはリビングで待ってるからシャワーも浴びておいで。』

この時、水戸の心にはじわじわと上がってくるものがあった。それが何なのかは水戸自身にもわかっていないが、それは亡くした子供に向けるべき愛であった。


お互いに敬語をやめて、早くも慣れてきたこの時期におねしょをばれてしまったことは、晴香にとってはたまらなく恥ずかしいことである。しかし、晴香にとってはこの時期こそがバレるには最適であったのかもしれない。


♢♦︎♢

シャワーを浴びて、すっかり昨夜のような晴香にもどると、朝食を取り始めていた。それを、さも幸せそうに水戸は眺めている。水戸にとっても朝食を誰かと済ませるなんていうのは何ヶ月ぶりかであったためである。しかし、そんな朝食も水戸の一言でまた朝の空気が蘇る。


『あのさ、晴香ちゃん。あのー、朝のこと私なりに考えてたんだけど、ちょっと詳しく教えてくれないかしら?』

と優しい声で聞く。

恥ずかしそうにしながらも、コクンと頷いて喋り出す晴香。

『実は…あの事故で家族を失ってから続いてて…。だから、毎日布団干すのも大変だから…買って、履いてたの。』

という。実は昔から体調が悪い時にはおねしょをしていた晴香なので、“部屋にはもともとおむつがあった”ということは言わずにそう答える。

『そうなんだ…。うーん。悪い病気だったりすると怖いわね。ちょっと、病院に行ってみましょ?』

『え、でも…。その恥ずかしぃ…。』

病院に相談するのは恥ずかしいというのは晴香の心情としては普通だ。しかし、水戸にとっては、万が一晴香になにかあったらと考えると、事故のせいでどうしても慎重になってしまう。そんな、水戸の心を察したのか晴香は間をおかず答える。

『でも…治したいから…いく。』

『よかったわ。晴香ちゃんはやっぱりいい子ね。わかってくれて嬉しいわ。』

そう言って晴香の頭を撫でる。


その光景だけ見ると、小学生くらいの女の子がママに頭を撫でられているようだ。晴香は、それがとても恥ずかしいので、頬をぽっと赤にそめて恥ずかしがる。そんな光景はやっと、あの事故から立ち直ろうとして、それが少し形になったものかもそれない。なぜなら、その光景はとても幸せそうだからである。

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