15話
十五話
平日の朝6:30頃の事である。
『はるかちゃん、そろそろ起きないと学校間に合わなくなっちゃうわよ〜』
と、水戸の声がすると足音が次第に近づいてくる。
『さーて、今日もいっぱい出ちゃったかな?…。あー、いっぱいちっちでちゃってるわねぇ〜。おむつの中気持ち悪いねぇ〜。今キレイキレイしてあげまちゅからね〜。』
と、水戸が声をいつものようにかけながらオムツ替えを始める。
普段通り、顔を真っ赤にしながら恥ずかしそうにおむつを交換されるはるかだが、今日は恥ずかしさで顔を赤くしているだけではなかった。
『あら…?はるかちゃん、お顔が火照ってるわね…。…。あら、お熱があるじゃない。風邪かしら…?とにかく、今日は学校はお休みしましょうね。』
と、そういうと一旦他の部屋に行って学校へ連絡しようとして立った。
『この前のプールとか、シルバーウィークで疲れちゃったのかしら…』
などと、独り言を言って部屋を出て行った。
ー数分後ー
『はるかちゃん、調子はどう?お薬持ってきてたから、このお水でごっくんしましょうね〜。粉薬…高校生のはるかちゃんになら上手に飲めるわよね?』
そう言って、晴香に薬と水を渡してベッドの端に腰掛ける。
『うん…。』
重い体を持ち上げて上半身だけ起こすとはるかは薬を飲んだ。
『偉いわね、はるかちゃんは。ちゃんとお薬も飲めるし、本当にいい子なんだからっ。』
と言って、はるかの頭を撫でる。
撫でられて嬉しそうにした後はるかはまた布団をかぶって横になった。
暫く、となりで水戸が晴香の頭を撫でていたが、数分経つと薬の副作用が効いてきたのか、晴香は眠りについた。
それを見た水戸は優しく微笑んで、そっと立ち上がると音を立てないように部屋を出て行った。
♢♦︎♢
一方、学校の方では、真澄が晴香の空いた席を見つめながら待っていた。
『はるかちゃんこないなぁ…。いつもならもう着いてるんだけど…寝坊しちゃったのかな。』と、独り言をつぶやいて時計を見ると、HR
ホームルーム
まで残り10分だと告げられる。
しかし、はるかが学校に来ることはなく担任から“風邪でお休み”という言葉を聞いて知ることになった。
それを聞いてから真澄は1日をつまらなく過ごしていた。ただ、昼休みにトイレに向かって走ってから、様子が変わったようで遂に5時間目に教室に来ることもなく、保健室にいたと思えば早退してしまったようだ。
♢♦︎♢
夕方になり熱の引いた晴香は、体調が良くなったことを体の軽さが物語っていた。
そして、起きようとするとある異変に気がついた。おむつが気持ち悪いのである。しかし、今まで感じた気持ち悪さとは少し違う。もっと、肌に張り付くような、水分の多さが感じられる。しかし、これは以前感じたことがある。
そして、恐る恐る布団の中を確認してみるとなんといつもの何倍もおむつが大きかったのである。一体どうしてしまったのかと、確認しようとした時にちょうど水戸が現れた。
『あら、晴香はちゃん起きたのね。ん?キョトンとしてどうしたのかしら?あぁ、布オムツだから戸惑っていたのね。前に病院に行った時の日も布おむつつけてあげたじゃない。まあいいわ、おねしょしちゃってるでしょう?そこにコロンしててね。今替えてあげるから。』
そう言ってはるかを寝かせると、手際良く布おむつを変えていた。
『これはね、この前のお買い物の時はるかちゃんと別行動取った時に買ったのよ。布おむつだと、使い捨てじゃないからお財布に優しいのよ。病院で買ったやつよりも可愛い絵柄のがたくさんあるでしょう?』
そう言って、おむつ交換を終わらせるとバケツに今さっきまではるかが身につけていた汚した布おむつを入れた。
『はるかちゃん。いつものテーブルにおかゆがあるから、もしお腹減ってたら食べていいわよ。ママは、お洗濯するから一人で食べるのよ。』といって部屋を出て行った。
部屋を出て、リビングに向かった。
リビングには、おかゆが置いてあって程よい温度にさまされていて、とても食べやすそうである。しかし、窓の外に見える沢山の布がはるかの関心を奪って、目を離すことをさせないで凝視してしまう。
“あの布はなんだろう…。”と、心の中でつぶやくが、すぐにわかった。それは、ぬのおむつである。さっき取り替えた時にもみた、小さい子が好むアニメのキャラの模様が描かれたその長方形の布と似ているものがいくつも干されて、風を受けている。
そして、気づいてしまった。それは、すべてはるかが汚してしまったものだということに。
はるかはとても恥ずかしく思うと、顔を真っ赤にしてしまった。そして、それを隠そうとして、そそくさとおかゆを食べ始めたのである。
明日には、はるかの熱も収まり学校に行けることだろう。