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1話

一話


【次のニュースをお伝えします。本日○○:○○に××市で、歩いていた歩行者一人の男性と、そこ男性に抱かれていた赤ちゃんに大型トラックが衝突ししました。なお、その後また車道に戻り反対側の道を走っていた乗用車に衝突しました。なお、歩行者二人と乗っていた夫婦二人とその子供1人は病院に搬送されましたが間も無くが死亡が確認されました。その他にも20名が軽傷を負いました。】


朝から、物騒なニュースが流れている。そして、1人の少女と一人の妻がそれぞれ違う病室の前で、同じ心境に立たされていた。そう。この二人は、事件の被害者である。

1人は、家族が出かけている最中に家で勉強をしている最中に家族が不幸にあった、晴香だ。晴香はまだ高校生という若さで家族一人残されてしまった。

1人は、夫に赤ちゃんと散歩に行かせている間に家で家事をしているときに家族が不幸にあった、三戸だ。三戸はまだ新婚夫婦の妻で、人生の一番楽しい場所に差しかかろうとしていたときであった。

こんな、二人はもちろんこれまで接点は無かったが、これからこの二人は複雑に絡み合い、そして第二の人生を二人で歩むことになるだろう。それが、どんな光をおびているかはまだ誰も知らない。


あの事故から数ヶ月。晴香は家族の死とどう向き合えば良いのか途方にくれていた。そして、家族を失ったショックで晴香はあの日からずっとおねしょを繰り返していた。

そしてしばらくの間は、親戚が晴香の家まできて面倒をみてくれてたがそれもかなわなくなってきて親戚の間で晴香の事を養子に出して育ててもらおうとしていた。


RRRRRR…

『はい。もしもしーー』

『あぁ。晴香ちゃん。えーと、晴香ちゃんの新しいママさんが決まったから明日にはそっちにつくと思うよ。勝手に決めてごめんね。でも、親戚の人は晴香ちゃんを育てられないし。何より晴香ちゃんには今の暮らしがあるから引っ越しはできないし…。だから、こっちで晴香ちゃんの事を養子にしてもらえるようにしてもらったよ。晴香ちゃんの家はそのままで新しいママさんが晴香ちゃんの家に行くだけだからそんなに生活に負担はかけないと思うからよろしくね。新しいママさんは親戚みんなと数日かけて話し込んであるよ。すっごくいい人だから心配しないでね。それじゃあね。』がちゃん。

叔父さんからの電話だった。


♢♦︎♢


次の日、午前10時頃。

“ピンポーン”

淀んだ空気の中、静寂を破って一人の女性が現れた。

『こんにちは。晴香ちゃん。私の名前は三戸です。慣れるまでは三戸さんってよんでださいね。そのうちはママって呼んで欲しいけど…それはまた今度の話ね。今日は、挨拶しに来たの。あ、言い忘れたけど私がこれから晴香ちゃんの新しいママです。よろしくね。』

と、いきなり現れた三戸。

『あ、よろしくお願いします。えと…その、晴香です…。あ、いまお茶いれます…。』

『いいわよ。私がやるわ。晴香ちゃんは座ってて。私が新しいママだから…ね?あ、でもまだこの家に慣れてるわけじゃないし、晴香ちゃんに教えてもらいながらやりましょうか。そしたら、お茶飲みながら今日は沢山お話しましょ。そのために来たんだから。』


この女性、気づいた人もいるかもしれないが、実は晴香と同じ時期に家族を亡くした女性だ。そして、同じように心にはぽっかりと穴が空いたような、悲しみを知っている。しかし、同じ悲しみを持つもの同士、彼女なりに晴香を理解しているのだろう。そして自分よりも幼い晴香に対して自然と“優しくしてあげなければ”と思っていたに違いない。それは、晴香と同じ悲しみをもつ三戸でなければわからない“優しさ”なのだろう。


この日、三戸は晴香の家(養子にとったのだから、既に三戸の家でもあるのだが)に泊まっていった。そして、次の日は晴香の事を起こしに行くときに見てしまうものがあるが、それによって呼び起こされる三戸の心は…それはまた次の話でじっくりと。


こうして、三戸と晴香の第二の人生の歯車がゆっくりと、しかし確実に音を立てて回り始めようとしていたのであった。

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