01-21(旧) 八つ当たり
18/01/08 サブタイトルの変更(旧の追加)
***** 三日目(2) *****
中央通りに出現したきらきらと光を乱反射する竜巻を見つめる。なるべく街に被害を与えないためか、大きさはシェイムの森で見かけたときよりも小さめだけれど威力はあまり変わらないみたいだ。魔物が次々と飲み込まれ、綺麗だった竜巻がどす黒く染まっていく。
( 氷乱舞 ってことは中央にはユッカちゃんが居るのかな)
この世界にきて初めて見た大規模な魔術。あの圧倒的な光景は脳裏に焼き付いてしまっている。そのおかげで 氷乱舞 イコールユッカちゃんの図式が成り立っていることに苦笑する。
(あの強化っぷりなら間違いないと思うよ。通常の 氷乱舞 はあんなに強力ではないし、竜巻が移動するなんてこともないし)
どう見ても乱舞じゃなくて 竜巻 なのに煌びやかな名前がついている理由が判明する。そういえば教えてもらった二種類の 風刃 の呪文も、同じ魔術なのに威力が全然違ったっけ。
ともかく、ユッカちゃんがいるっぽい中央大通りはしっかりと押さえ込めれてるので大丈夫そうだ。加勢に行くとすれば右側か左側の大通りだろう。
俺は目をこらして知っている人を探す。距離がある上に視界は家に邪魔され、後姿しか確認できず、さらに混戦気味となれば容易ではない。
結局知っている人は見つからなかったが、各大通りの大まかな戦況はつかめた。
(右の大通りは……リビングアーマーを瞬殺してる人がいるので大丈夫。となると一番崩れる可能性があるのは左の大通りか)
右大通りにいたカイさん以上に非常識な存在からそっと目を逸らす。
左大通りではリビングアーマー一体を数人で囲んで着実に数を減らしているようだが、見た感じでは殲滅速度が足りていない。そしてその数人分の抜けた穴を他の人で補強しているのだろう。守りの人数の足りていない防衛線はだんだんと押し込まれている。
(わたしは反対って言ってるからね。行くのならせめて誰かから精神保護をかけてもらってからにして)
(分かってるってば。ほいほいと動く気もないし、闇魔術がどんなのかも想像つくから)
未だ完全に解けていない闇魔法による呪い。戦闘中にあんな風に精神に介入を受けたら致命的だろう。悪魔から逃げられたのもただただ運が良かったからとしか思えない。
見通しの甘すぎた過去の自分にため息をつきながら、戦局をじっと観察する。あれから沢山の人がバリケード内に逃げ込んできており、見える範囲では撤退する人はもう殆ど残っていないようにみえる。
そこでどん、という音と共に視界がうっすらと赤く染まった。何事かと上を見上げると、信号弾のような赤く光を発するものが打ち上げられていた。それを合図にしていたのか、魔物と交戦している人たちがじわじわと後退していく。
(撤退の合図かな。左が崩れる前になんとか撤収を終えたみたいだな)
(リョウが飛び出す前に終わってよかったよ)
(そんなに信用ないの俺!?)
ちくちくと痛いところをティアに突かれていると、「あら、もしかしてアヤさん?」と声をかけられる。辺りを見回すと、バリケードの付近に見覚えのある翠色の瞳でこちらを見上げるエルフさんがいた。
「アルシェさん、昨日は本当にありがとうございました」
一昨日も昨日もどたばたとしていたため、改めてお礼を言う。アルシェさんは相変わらずの破壊力の笑顔ね、とでも言うように少し頬を緩めた。
「そんな高い所で何をしているの?」
「状況が分からなかったので、ひとまず危なそうだった北側の状況を見てるんです」
その言葉に納得するアルシェさん。戦争中でなくとも屋根の上に人が居たら普通気になるよね。アルシェさん以外にもちらちらと見られてるし。
「中央はここから見えるから状況がわかるんだけれど、他の場所はどうなっているか分かるかしら?」
「右の大通り付近は問題なく後退してますね。リビングアーマーを瞬殺している人がいたので。左の大通りも苦戦はしていたものの、大きな問題はなさそうです」
アルシェさんは安堵の息をこぼす。そういえばアルシェさんは北の治癒班に居るって言ってたっけ。なら怪我人の情報はちゃんと教えてあげた方がいいかな。
「ただ、左の大通りでは怪我人がたくさんいますね」
その言葉にぴくりと反応したアルシェさんは「ありがとう、大急ぎで準備しないとね」と踵を返した。そして数歩進んだところで、再びこちらを向いた。
「これはお礼代わり。……光の精霊よ、集え、集え。汝、アヤ・ヒシタニの心に何人たりとも通さぬ守護と折れることのなき意志を」
呪文が紡がれると共に身体が淡い光の粒子に包まれ、心がなんだか暖かくなる。思わぬお礼に目をぱちくりさせているとアルシェさんは微笑みを浮かべ、再び踵を返してそのまま早歩きで離れていった。相変わらずせわしないというか何というか。
(……ティア、今のは?)
(高位の精霊魔術なんだけれど、この魔術はわたしも初めて見た。あの呪文に術式……獅子の心みたいなものっぽい? だとすると法術と精霊魔術には何らかの関連性が……?)
ティアの興奮を抑えるように考察する様子に苦笑しながら、ぼそりと精霊さんありがとうねと呟く。その言葉に反応したかのように、薄れていく光が一瞬だけ強さを増したように感じた。もしかして伝わったのかな、なんて少しだけ嬉しさを感じていると、考察を終えたのかティアがせっつくように言葉を捲し立てる。
(さあリョウ、今なら闇魔術でも闇魔法でもどんとこいだ! ほらほら、ここの中央通りにユッカちゃんが居るんでしょ? 援護に行った行った!)
途端に調子づいたティアに少しだけ冷ややかな感情を向け、左大通りへと視線を向ける。そして援護がなくても問題のなさそうなことを確認すると、屋根の上からバリケードのを経由して大通りへと飛び降りる。
そして視界に映った光景にぽろっと言葉が洩れた。
(……氷乱舞使ったのなら援護する必要ないよな?)
(……あっ)
通りの向こうからは防衛にあたっていた人たちが一斉にこちらに向けて駆けてきていた。それを追う魔物の軍勢との距離は十分開いており、時折飛んできている真っ黒い矢は誰も振り返らずとも風の魔術によって全て叩き落されている。
(な、なら殲滅だよ、リョウ! 大丈夫、今のキミならエウムルの木を折るくらい容易いはずさ!)
全く援護の必要なさそうな光景を前に混乱したのか、意味の分からない言葉で捲し立てるティア。残念な方面以外でここまでティアの興奮を煽っていることに少し興味を引かれたが、殲滅なんていう物騒な言葉を前に簡単に霧散した。しかもここで防衛戦に参加する予定だから戦闘の機会はあるだろうし。
俺は再び屋根の上に飛び乗ると、脳内に響く声を無視しながら駆けてくる人たちを眺める。てっきりユッカちゃんだけかと思ったけどトライラントの三人も防衛に駆り出されていたみたいだ。
真っ先にこちらに気づいたのはイルミナさんで、目を丸く見開くと持っていた長杖のようなものをこちらに突き出すように向け「アヤちゃん、アヤちゃんがいる!」と大声を上げた。走りながらの行動だったのでイルミナさんが転ばないか心配しながら、それに応えるように軽く手を振った。
イルミナさんに続くようにカイさん、ハイエムさんがこちらに目を向け、目を見開く。ユッカちゃんだけは相変わらずほぼ無表情のままだけれど、ほんの少しだけ口元を緩めてる。
そしてその他の人たちからも一斉に視線を注がれる。その鋭い視線にちょっとびびったけどそれでようやく分かった。冒険者の人たちが防衛に駆り出されていたのか。
冒険者たちがバリケードの中に駆け込んだ後、イルミナさんがぴょんぴょんと跳ねながら「アヤちゃーん! 具合はもう大丈夫なのー?」と声を上げる。そんなイルミナさんの様子を見て温かい気持ちになりながら、ひょいとローブの裾を翻しながらイルミナさんの傍へと飛び降りた。
「はい、この通りかなり楽になりました」
屋根から飛び降りる様子を見て固まってしまったイルミナさんに対し、俺は両手を広げてぴょんぴょんと跳ねて存在をアピールする。
そのアピールで解凍されたのかイルミナさんは「アヤちゃんだ! アヤちゃんが戻ってきてる! ひゃほー!」と声を上げると思い切り抱きしめられた。顔がお腹に押し付けられて呼吸が苦しいけれど、この時ばかりは背の低いこの身に感謝する。イルミナさんのアレ、意外と大きいんだよね。
幸いイルミナさんはあまり長い時間かけることなく抱擁を解くと、まるでスイッチが切り替わったように男性陣へと冷たい視線を向けた。
「で、あんたたち、見たね?」
呼吸を整えながら周りを見渡せば、女性陣みんながイルミナさんと同様に男性陣へと冷ややかな視線を向けている。
冷たい視線を向ける女性陣と縮こまる男性陣の図。一体何が起こっているのかと首をかしげていると、すすっと傍に寄ってきたユッカちゃんがそっと耳元でつぶやいた。
「アヤさん、屋根から飛び降りたとき、下着見えてた」
ぴきり、と思考が固まる。そういえばいつもより大きく飛び降りたせいでローブの裾がかなり捲れ上がっていたよう、な。
……うあああ、見られた!? 沸騰する頭で今更ながらローブの裾を押さえつける。落ち着け私、ひっひっふー。
恐る恐る男性陣へと視線を向けると、申し合わせたかのように一斉に目線を逸らされる。自然と男性どもに向ける視線がジト目になる。元男の身としては分からないまでもないんだけど、なんだか無性に腹が立ってきた。
「そっかそっか、私の不注意もあったとはいえ……見たんですね?」
「俺は見ていない、見ていないぞ!」
「お、俺は視界に入ってすぐ目を逸らした!」
「おい馬鹿、こういう場合素直に謝っておくと被害が最小限で済むんだ!」
「純白の可愛らしいドロワーズ…その天使のようなお姿と併せて、美の女神様が降臨なされたのかと思うほど素晴しゅうございました」
「変態は黙ってろ!」
ある男冒険者の言葉を皮切りに、次々と言葉が発せられる。その様子を受けて私も自然と視線が冷たくなるのを感じると、感情に任せるまま魔鋼の剣を抜き放った。私に続くように女性陣も各々の得物を準備する。
そして、波が引くように静かになった男どもへ制裁という名の暴力が解き放たれた。
報告に行っていたらしいカイさんが戻ってきた時には、地面に転がって悶絶するゴミの山に困惑していた。
―――――
「アヤさん、どんまい」
壁を背にぐんにょり三角座り。どよんとした気分に包まれて動く気力が起きない。
バリケードの築かれた防衛線では既に魔物と冒険者との攻防が繰り広げられているけど、私の視線は石畳に向いていて、石の隙間を指でなぞっている。
先程まで傍にいたイルミナさんは弓を抱えて防衛戦へと参加しており、魔力残量が乏しいユッカちゃんが休息がてら頭を撫でてくれている。うう……優しさが心に染みるよぅ。
それにしてもこういう時に為のドロワーズでもあったはずなのに、見られただけでこんな顔から火が出るような思いをするなんて。
制裁で多少は気はまぎれたけれど気分はぐんにょり。
(ねえねえ、男共の士気がものすごいことになってるよ)
どんよりとした空気を全く読まずに、ティアがからかうような声音で私に防衛線へと意識を向けさせようとする。
「うおおおおおおおお! 殺せェェェ!」
「トロル共をアヤちゃんに近づけさせるなァァァ! ウォォォォォ!」
「俺達の純白の天使を守れェェェェ!」
「この程度の実力でここを抜こうなど百年早いわぁ!」
暴走する男冒険者どもの叫び声でさらに私の精神ががりがり削られていく。ぶっ飛ばしたはずなのにどうしてこうなった。
「ああもう、訳が分からない」
思わず洩れた心の底から思いに反応したのか、ユッカちゃんから生暖かい視線を向けられる。
「大丈夫、アヤさんの為に皆張り切ってるだけ」
全然大丈夫じゃない。張り切ってる理由が容易に想像がついてさっきから鳥肌まで立ってる。うええ、男の精神でこれに耐えろってのは無理がある。
魂の抜けた声でユッカちゃんに返事をしていると、ティアから燃料が追加投入される。
(有り余る魅力で男を手玉に取るのも、女の子するのにいい練習になってるね。ふふふふ)
(いやいや、そんな練習してないからね?)
楽しそうな様子の吸血鬼に色々な意味でため息が零れる。しかもこの言葉、女の子の前に魔性の二文字がつくだろ。ただでさえ精神まで女の子にしようと画策されているだけでお腹いっぱいなのに、さらに余計なものをつけないでほしい。
(え、リョウってば何言ってるの。だんだんと女の子っぽくなってきてるでしょ?)
何を今更というように言葉を向けてくるティア。言動はこの見た目だし仕方ない部分があるから気を付けるようにはしているけれど、それはあくまで言動だけ。私の精神面は依然として男のものだ。
(……まあ、振る舞いだけはね。さすがにこの見た目で男言葉ってのはけっこう気が引けるから)
数秒の沈黙の後、ティアが堪えきれない様子で笑い声を上げる。何のことか分からないけどロクでもない事のような気がして、じとっとした感情を言葉の代わりに流す。それを受けてさらに声を大きくするティア。
「……? アヤさん?」
すっと立ち上がった私に、ユッカちゃんからどうしたのかと声をかけられる。私は相変わらず暴走する男冒険者へと目を向け、そして未だ笑い転げているティアへと意識を向ける。
「ちょっと、八つ当たりにね」
どんよりとしていた様子から一転、笑顔と共に不機嫌そうな声音で言葉を発した私にユッカちゃんは目をぱちくりさせた。無表情のイメージが強いユッカちゃんの様子に少しだけ頬を緩めながらお礼の言葉を付け加えると、ローブの裾を押さえながら直接屋根へと跳躍し、魔鋼の剣を抜き放つ。
「やってられないからね、うん、仕方ない仕方ない」
言い訳じみたことを呟きながら、防衛の様子を見渡す。バリケード越しに長槍や魔術などでトロルを押し留めているのかと思いきや、バリケードの端を開放して近接で戦闘に当たっている冒険者もいた。
制裁の影響か少しふらつきながらも叫び声を上げて応戦する男冒険者にふんと息を鳴らすと、強く身体加速と念じる。
いつもよりもゆっくりと感じる時間の中、不思議と高揚感に包まれる。屋根から落ちるように体を傾けると壁を思い切り蹴り、その勢いのまま剣を振るい壁際近くのトロルの首を刎ねた。残った慣性でさらにもう一体のトロルの首を斬り裂くと、その胴体を蹴り飛ばして方向転換、弧を描くように剣を振るい、ちょうどの位置にいたトロル二体の喉を同時に斬る。それらのトロルをさらに蹴って血を被らない位置へ降り立つと、ふう、と息を吐きだした。
いきなり現れた俺に動揺することなく剣を振り下ろしてくる二体のトロルの攻撃を躱し、体重を乗せた斬り下ろしで片方のトロルの両手首を切断、そのままくるりと回転し剣に遠心力を加えて喉を斬り裂く。
そして剣を振り下ろしたままの態勢のもう一体のトロルへと踏み込むと、そのまま首へと剣閃を走らせた。
その一閃で最初の一撃から感じていた違和感が確実なものになる。前まではトロルの攻撃を躱し、直後に首へと剣を走らせようとすると先にトロルに切り上げられていた。そのため手首を潰すという一工程を挟んでいたのだけれど、今はその必要が全くないように感じる。
(こいつら、動きが鈍くなってる……?)
(わたしにはリョウの動きが速くなってるように見えるけどね)
ティアの言ったように単純に俺の身体加速が速くなった可能性は考えられるし、これだけの大量のトロルを使役している以上何らかの不具合が起きている可能性も考えられる。
(結論を出すには早い気がするんだけど、殺すのが楽になったというのは追い風だなっ!)
殲滅速度が増し、意識を割く必要が減るのは安全性が増し、突発的なことに対応できるということだ。そのアドバンテージは計り知れないだろう。
そのことを強く実感できるまでは割と時間はかからなかった。ひたすらトロルからの一撃を躱し、時折飛んでくる黒い矢を避けるか切り払い、首へ剣閃を走らせ、動きのコツを掴んだのかバランスが崩れなくなってきた頃。感じたのは、強大な悪魔の残滓。
数体のトロルを屠った後、黒い剣身の大剣を持つ黒色の板金鎧が姿を現した。鎧の節々は黒い靄が内部から出てくるように纏わりつき、より禍々しい気配を放っている。
(一応確認するけど、こいつはリビングアーマーで合ってるよね?)
(瘴気を纏ってるし間違いないと思うよ。ほらほら、話した通りに動く動く)
リビングアーマーは悪霊が鎧に憑りついている魔物であり、魔術も近接戦闘もこなす厄介な存在と一般的には認識されているが、その体重はあくまで板金鎧分の数十キロしかない。いわば、今の俺と同等の体重しかないのだ。
振り下ろされる大剣の剣筋上から先に身体を逃がすと、大剣を握っている右手甲へとタイミングを合わせて剣を振り上げる。金属がぶつかり合う甲高い音が鳴り、思った以上の手ごたえを感じて笑みが零れる。
手甲の握りの部分を潰され、大剣を取り落としそうになっているリビングアーマーを横目に斜め後ろへと踏み込むと、右横に構えた魔鋼の剣を遠心力を乗せるように膝の裏へとを叩き込む。その反動に合わせて剣を手元に戻し、そのまま鞘へと納める。
俺の攻撃に対抗するかのように至近距離から黒い矢の魔術が放たれるが、体勢が十分に整っていたこともありぎりぎりのタイミングで躱すことに成功する。そしてバランスを崩しているリビングアーマーの足をおもむろに掴むと、鎧ごとジャイアントスイングの要領で二回転半。吸血鬼の膂力を存分に振るい、タイミングを合わせて手を放す。
「ふっ飛べえええっ!」
リビングアーマーはトロルたちの頭上を飛び越えてすっ飛んで行った。うん、厄介な魔物はまともに相手をしないに限るね。
俺はトロルとリビングアーマーのぶつかる鈍い音を聞きながら魔鋼の剣を抜き放つと、再びトロルを血祭りにあげるべく大きく踏み込んだ。
「ははは、俺、夢でも見てるのかな」
単身トロルの群れに突っ込むと瞬く間に殲滅し、Aランクの魔物であるリビングアーマーを投げ飛ばした幼くも可憐な少女。そんな非現実的な光景を前に、この日中央大通りで防衛に当たっていた冒険者たちは遠い目をしていた。
なお、一部の冒険者はその光景を目にしてますますヒートアップして暴走を繰り広げている。
「これ、半分以上アヤちゃんが殲滅していってるよね。あははははは、これはあたしも負けられないね!」
イルミナは愉しげに口元を歪めながら、尖鋭岩矢で数体のトロルの頭部を串刺しにするかのようにまとめて吹き飛ばしていく。そんな心から殲滅を楽しんでいるイルミナの様子にユッカはやれやれといった様子で辺りを警戒している。
バリケードの先の右側には主に首を斬られたトロルの死体が山のように転がっている。そしてバリケード左側の唯一の直接的な交戦域ではAランク冒険者であるカイがリビングアーマーの相手を受け持ち、その他の冒険者も連携を取りながら確実にトロルを仕留めていく。
道幅が広く、一番の激戦が予想されていた中央大通りの防衛線では大きな犠牲を出すことのないまま時間が過ぎていった。
そんな防衛線近くに設置されている休憩用のテントの中には、憑き物が落ちたようにくつろぐアヤの姿があった。
実は魔鋼の剣の重さ分、リビングアーマーを投げ飛ばすのにアヤちゃんの方が有利でした。
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16/11/27 フォルツが中央通りに配置されていたバグを修正