過去と人、付き合い方 6
「うん? 別になにも?」
なおも訝しむリオの眼差しに、ナギトは笑って返すだけ。
二種族の間にある谷間は、推測とはいえ理解できた。工房長が話していたこともある。魔術に対する特権意識は、世間の二耀族に植え付けられてしまったんだろう。
せめて堂々と、周りなんて気にするな――そう言いたくなるが、ナギトは工房の部外者だ。
対話の扉を用意できても、直に干渉する気はあまりない。少なくとも今の段階では、ナギト自身への危害が確定されたわけでもないのだ。
「まあしかし、私の理論は推測だ。もしかしたら、まったく逆の歴史が潜んでいるかもしれんな」
「例えば?」
「全部嘘、とか。――魔術が神の力というのも、彼らが原住民であるということも、私たちが海の向こうから来たのも、すべて嘘だったら? 長い歴史の間で、歪められた事実だったらどうだ?」
「怖いこと言うなあ……」
もし事実なら、リオの推測は土台から崩れ去ることになる。
そもそも神殿、ヘレネスの信仰に詳しくない自分たちが、彼らの神を語るのは駄目だろう。ナギトの姿勢にも反していることになる。
――にしても。
リオの推測は印象的だった。もし伝わっている情報が、すべて嘘だったら。何かしらによって歪められているとしたら。
父と母が戦った理由が、分かるんだろうか?
「……」




