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皇帝の遺言 9
心底楽しそうに笑うクリティアスへ、ナギトは曖昧な返事しか出来ない。
私の国を滅ぼしてくれ――それは確かに、二人だけが聞いた皇帝の遺言だった。つまりはアルクノメの父親。娘の願いとは正反対の意思を、彼らナギトとクリティアスに託した。
「姫が生きていれば、まだ帝国は滅びることが出来る。革命の中で消化されなかった怒りを起こすことが出来る。くれぐれも、丁重に扱ってくれ」
「……本当にやるんですか? 帝国を滅ぼすなんて」
「ああ、もちろんだ」
クリティアスは笑顔を消して答える。
それは忠臣の一人として、鋼の意思で固まった顔付きだった。
「いつまでも一つの大国が存在するのは、人にとって有害でしかない。陛下もよく口にしていただろう? 国家が終わったところで、ようやく人間が始まると」
「でもアルクノメは、帝国に滅んで欲しいとは思ってませんよ。処刑を受け入れたのも、それが理由で――」
「だから?」
「……」




