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血と人と 9
「なんで今、市民の意見が真っ向から通る前例を作りたいんじゃろう。あるいは、議会のトップをすげ替えるか。テストミアの軍も帝国と同じで、二耀族が中心じゃからな」
「……やりきれないな」
「はは、ちがいない。種族の問題なんぞ、ワシには下らないモノに見えるがのう」
「い、いいのか? そんなことを言って」
「ワシはここの頭じゃからな。……だいたい、お偉いさんは分かってくれとる。種族を理由に争うのが、くだねえってことぐらいな。暴走するのはいつも平凡なやつらじゃ」
「――」
言い返してやりたいのか、納得してしまったのか。
リオはうつむいて動かない。――ナギトと工房長が揃って苦笑を浮かべたことにも、恐らく気付いていないだろう。
「さて、話はここまでじゃ。もしワシが下の連中を説得できた際には、また後で連絡する」
「はい、ありがとうございます」
ナギトの一礼を受けて、工房長はさっさと部屋を出る。
最後に見えた眼差しは、苦悩の色だけを宿していた。




