皇帝の遺言 8
本体が絶命したためか、ナギトを囲んでいた鉄の壁が変化する。サイズの大きすぎる、鳥の羽根に。
無くなった障害。その向こうには。
魔術の用意を整えた帝国兵が、ナギトを完全に包囲していた。
「よし、放――」
て、と言葉は繋がらない。
彼らの背後。帝国兵ではない何者かが、無防備な背中を一閃したのだ。
予期せぬ反撃に抵抗しようとする帝国兵だが、相手の殺意に揺らぎはない。迷いなくトドメの一撃を下していく。
彼らはあっと言う間に全滅した。……きっと最後まで、何故、という疑問が頭の中にはあったろう。ここは帝国の領内で、彼らに敵対する存在はいない筈だからだ。
実際、
「余計なお世話だったかな?」
笑みを零しながら現れた男は、帝国の重鎮である。
背が高く、月夜に似合う銀髪を流した美丈夫だった。いま浮かべている笑みも、女性の好感を誘う気品で満ちている。
周りで人が死んでいる場所では、そこまで絵にもならないが。
「クリティアスさん……」
「お疲れだ、ナギト君。姫は無事かね?」
「ええ、向こうの方にいますよ」
そうか、とクリティアスは呟き、奇襲した部下たちを退かせる。帝国兵の遺体も一緒だ。
「これからも姫を守ってやってくれ。皇帝陛下の遺言のためにもね」
「……」
「くく、やはり複雑かな? 陛下の遺言――帝国を滅ぼしてくれというのは」




