砦の彼ら 3
言葉の勝負になれば、間違いなくこの愚弟は叶わない。感情的に吼えるだけの犬だ。きちんと信念に基づいているイピネゲイア相手には、逆に怒りを煽るだけだろう。
まあ方法があるといえばある。が、クリティアスにとっては最終手段だ。おいそれと使うのは、時期尚早としか判断できない。
「ちっ、貴様の言い分は分かった。下がれ」
「はっ」
医者の心労を察しながら、クリティアスは名残惜しむこともせず立ち去った。
廊下に出ると、直ぐに右手の方へと向かう。角には数名の兵士。先ほどの戦果を見張るための人員で、クリティアスが半ば無理やり配置した者たちだった。
彼らはこちらに気付くと、定型通りに敬礼する。
「ご苦労。皇女と話がしたいのだが、通してもらえるかな?」
「もちろんです閣下。……しかし、問題はないのですか? オレステス皇子は――」
「地下牢に閉じ込めろと言ったことか? 気にする必要はない。奴は貴族向けの看板であり、手の平で踊る人形だ。万が一の際には始末すればいい」
「か、閣下、皇子に聞こえたら――」
「だから言ったろう? 始末すればいいと」
まあさっきも思ったように、最終手段ではあるのだが。
見張りの兵は唖然としたような、納得したような表情のあと、素直に道を譲ってくれた。
中は質素な作りとなっている。客室という名目だが、どちらかというと寝室だろう。使われているベッドも堅そうだ。
「やあ。ご機嫌は如何かね? 皇女殿下」




