砦の彼ら 2
「アンタが居眠りしてる間に、商人たちが取引をボイコットしたよ。それどころか市民側に武器を流したそうだ」
「……なんかもう、いろいろ手遅れですね」
「ああ。だからほら、お友達と話してきなよ?」
「は?」
唐突な単語についていけず、ナギトは首を傾げるばかり。市長の息子であるメルキュリクと、どうして話さねばならないのか。
よっぽど顔に出ていたんだろう。あのね、とイピネゲイアは短い前置きを作る。
「市民ども代表が、あの小僧なのさ」
「――」
驚いたのか、悲しかったのか。
自分でも感情を測れないまま、ナギトは淡々と頷いた。
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「馬鹿がっ! どうして引き上げた、クリティアス!」
帝国とテストミアの国境沿い。最前線ともいえる砦の中で、感情的な怒号が響く。
しかし、それを聞く男はすまし顔。逆に面白がっているような素振りで、隻腕の皇子に事実を告げる。
「敵が敵でしたので。……皇子の敬愛するイピネゲイア皇女を、攻撃するわけにもいきますまい?」
「っ、だからどうして引き上げたと言っている! 姉上を説得することも出来んのか!?」
「お言葉ですが、私はイピネゲイア様とほとんど面識がない。彼女を味方に引き戻すのであれば、皇子の方が適任と考えますが」
「……」
とはいえ、オレステスに出来っこないこともクリティアスは見抜いていた。




